もうずいぶん長いことサッカーと関わりを持ているけど、最近になってようやくわかってきたことがある。それは、自分でプレーをするにしても、愛するクラブを応援するにしても、それなりの覚悟が必要であるということ。自分のミスでチームが負けるかも知れない。応援していたチームが負けるかもしれない。もちろん、絶対勝つと信じている。でも、そういう覚悟を持ってピッチに立たなければならないし、声援を送らなければならない。全てを受け入れる覚悟を持っているか?ということ。
1999年11月27日J1最終節。仕事の都合で当時は静岡に住んでいた。部屋のTVでBS放送が受信できなかったため、近所の電気屋さんで見ていた。福田正博の「世界で一番悲しいVゴール」が決まった試合だった。90分での勝利がなくなった時、頭の中が真っ白になって、何が何だかわからなくなった。浦和レッズがJ2に降格した瞬間だった。
2000年11月19日J2最終節。駒場スタジアムの西側コーナー横のスタンドで観戦していた。3位大分との勝点差はわずかに1。引分は許されない緊迫した延長後半、土橋正樹の「世界で一番嬉しいVゴール」が決まった試合だった。ゴールネットへと向かうボールの軌道が、ものすごくゆっくりと見えた。浦和レッズがJ1に復帰した瞬間だった。
このふたつの瞬間は、今でも昨日のことのように思い出すことができる。一生忘れることがない瞬間である。初めてタイトルを獲った時も、Jリーグを制覇した時も、アジア・チャンピオンになった時も、思い出したのはあの瞬間だった。それは、覚悟を決めた瞬間だった。自分もそうだし、選手もサポーターもクラブも、浦和レッズを取り巻く全ての人がそうであったと思う。愛するクラブを応援するというのはこういうことなのか。それがわかったような気がした。おそらく、あの瞬間がなかったら、今でも浦和レッズはタイトルを獲っていなかったかもしれない。
その瞬間の気持ちを忘れなければ、降格は絶対チャンスに変えることができる。もしも、どこかで降格を嘆いている人がいたら、こんな風に考えてほしいと思います。とある浦和レッズ・サポーターの実体験です。