「バイロイト音楽祭」においては通常R.ワーグナー以外の作品は演奏されないが例外的にベートーヴェンの「交響曲第9番」が不定期に演奏されることがる。記憶にまだ新しいところでは2001年に「バイロイト音楽祭150年」・「新バイロイト様式50年」を記念しクリスティアン・ティーレマンが振っている。(写真・下/プログラム)また戦後、音楽祭再開の年1951年、フルトヴェングラーによる演奏は記念碑的演奏として後世に伝えられ「第9」の超名演としても知られるところである。
今日紹介する巨匠カール・ベームが指揮台に立った1963年の「第9番」は「バイロイト音楽祭」演奏史上1954年のフルトヴェングラー(2度目)以来通算6回を数えるものだった。先のティレーマンはベーム以来の38年ぶりの演奏ということになる。写真(上)のLPレコードは今から30年近く前にイタリアのマイナー・レーベルのひとつ「メロドラム(MELODRAM)」からリリースされたそのベーム指揮の「第9」のコンサート・ライヴ盤<2LP/MEL650(2)>である。当時の放送音源から起こされたものと推測されるがモノラルながら音質は大変良好である。音楽祭開幕のファンファーレも収録されている。演奏は1951年の「フルトヴェングラー盤」の緊張感が漂う演奏とは対照的でベームらしいゆったり感ある演奏が興味深い。独唱陣はソプラノ=グンドゥラ・ヤノヴィッツ、メゾ・ソプラノ=グレース・バンブリー、テノール=ジェス・トーマス、バリトン=ジョージ・ロンドンといった面々である。この中ではやはりソプラノのヤノヴィッツの美声がひかる。管弦楽=バイロイト祝祭管弦楽団、合唱=同、合唱団。 LPには記載はないが1963年7月23日のライヴ録音である。ただ2枚組LPで「第2楽章」が二面にまたがるという珍しいカッティングに驚いた。演奏終了後、沸き起こる聴衆の怒涛の拍手はタップリと収録してある。 尚、レコード第4面にはこの「第9」でも歌っている名バスバリトン、ジョージ・ロンドンの1953年・56年・59年のバイロイトでの歌唱を集めている。
このLPを再生しながら思い出したがベームはこの年秋、「ベルリン・ドイツ・オペラ」と来日、「日生劇場」(1963年11月7日)でも「第9」を振っている。この時のライヴも過去にCD化されたことがあり懐かしい。
(2001年バイロイト音楽祭/ティーレマン「第9」プログラム)