『週刊ダイヤモンド』1月6日合併号 －「国内市場の成長期待」がない、だから３％賃上げできない

今週の週刊ダイヤモンドは特集「総予測2018」は悪くない。
そもそも識者も経済界も日本経済を復活させる力量がない、
そうした厳然たる事実を明々白々に証明するものだからだ。
（だからこそ成長率でフランスにすら負けたのだ）

巻頭でイノベーションさえあれば何とかなると
暢気な楽観論をバラ撒く高齢者のビッグマウスが痛々しい。

日本の生産性成長率の推移を見れば、そのような無責任で
能天気な楽観論を語ることなどできない筈だ。

日本の生産性成長率ががくんと下がったのは90年代半ばであり、
日本の生産年齢人口がピークに達して下降し始める時期だ。
それ以降、日本の生産性伸び率は回復していない。
笑止千万なアベノミクスのショボさも生産性伸び率の低迷により証明されている。

人口動態が日本の生産性を強く制約しているのは明らかであり、
人口動態の劣化（老人が守りに入り、目先を誤摩化すことに熱心になる）
こそが低生産性と低成長の根源にあるのだ。
高齢者の言う「イノベーション」は楽観論で自他を騙し、
目先の安楽と怠惰を助長する保守退嬰の方便に過ぎない。

その証拠に、日本より遥かにイノベーションに優れるイスラエルの
1人当たりGDPは日本と同程度に過ぎないのである。
イスラエルの高成長の主因は移民受け入れであり、イノベーションではない。

彼の国ではユダヤ教研究に従事し国から給付を受けるだけの者が多い。
就業率の低い女性や高齢層の多い日本とよく似ており、
少数の者の創り出すイノベーションよりも多数の就労による労働投入の方が
豊かさを生み出す源泉となることを証明している。
（だから日本もイスラエルも1人当たりGDPで北欧に負けるのだ）

▽ 卓越したイノベーション国家イスラエルの、1人当たりGDPの低さに愕然とさせられる

	『知立国家 イスラエル』（米山伸郎，文藝春秋，2017）

「2017年『ベスト経済書』」を見ても、識者の挙げる本では
日本社会や日本経済の未来は暗いと確信させられる。
リストのトップが大学のゼミ程度の内容だからだ。

	『週刊ダイヤモンド』17年12/30・18年1/6 新年合併特大号 (総予測2018)

数少ない見所としては42頁の山田久氏の分析を挙げる。
「３％賃上げ目標」の達成がいかに難しいかを述べるものだ。

かつて賃上げ率が３％を上回っていた時代、
①労働生産性の高い伸び、②労使間での合意、③国内市場への中長期的な期待、
以上の三点があったと山田氏は指摘する。

これはこれで正しいのだが、①〜③は全て現在は失われているから、
合理的に考えれば北欧経済から学んだ積極的労働市場政策が必要な筈だ。

ところが、記事での処方箋は①財源を将来に付け回さない少子化対策、
②外国人受け入れ、③政労使会議の復活などという程度のものしか出ていない。

高出生率でも低成長のフランスや、移民受け入れで生産性改善が停滞したシンガポールを
全く参考にしていない提案と言えるだろう。会議で生産性が上がるというのも論外だ。

高成長のスウェーデンを研究して、女性就業の強要と高負担による育児支援現物給付、
投資庁の設立による対内投資促進の方が確実に効果がある。

謙虚に高成長の国から学ぶことのできない提言ばかりだから
日本経済が低迷しているという現実が、悲しいことだがここでも見えてきた。

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次週はダイヤモンドに注目、ダイヤモンドの医師・栄養士アンケートを見ておきたい。

▽ 太陽光バブルの「爪痕」特集も、メガソーラーを放置した民主党と安倍政権は「共犯」だろう

	『週刊ダイヤモンド』2018年 1/13号 (科学とデータで迫る最強の食事術)

▽ ダイヤモンドと同種の特集だが、東洋経済編集部に対しても「情報を疑え」になるような気も…

	『週刊東洋経済』2018年1月13日号 (間違いだらけの健康常識 健康食品＆情報を疑え)

▽ 「トップインタビュー」は大体、社内政治以外には役に立たないことが多いが？

	『エコノミスト』2018年 1/16号

「危機は再びやってくる」に注目したい。