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労働生産性を理解していない安倍政権が、年功賃金の見直しを求める勘違い - なぜ残業代を引き上げない

2014-10-07 | いとすぎから見るこの社会-雇用と労働
相変わらず労働生産性の概念を理解していない安倍政権が、
年功賃金の見直しによって生産性を引き上げると妄想しているようだ。
流石は「次元の違う」低レヴェルである。

労働生産性は単位時間当たりのアウトプットによって決定される。
だから、よりアウトプットを増加させるか、
より短時間で同様のアウトプットを実現するかしかない。

年功賃金の見直しによって生産性に何らかの好転が生じると考えるのは、
「私は労働生産性の「ろ」の字も知らない馬鹿です」と言っているに等しい。

本当に労働生産性を引き上げたいのなら、
最も簡便で強力な手段は残業割増賃金を大幅に引き上げ、
同時に過労死問題を起こした企業に巨額の懲罰金を課すなど、
短時間で成果を上げるよう強力なインセンティブを設けることだ。

だから安倍政権の「年功賃金見直し」はとんでもない偽物である。
口先で「生産性向上」を騙って実質的には企業の利益率向上を図り、
国民を愚民扱いして「改革派のイメージ」を刷り込む。
そして実際には、癒着している経済団体に利益誘導を行う狙いに過ぎない。

▽ 北欧の労働生産性の高さは、短時間で成果を挙げる効率性の高さによる





『スウェーデン・パラドックス』(湯元健治/佐藤吉宗,日本経済新聞出版社)


卓越した北欧経済と比較すると、安倍政権のリテラシーの低さは明白だ。

「国際競争が激化し、産業・企業の優勝劣敗が急速に生じる現代において、
 産業間・企業間での雇用流動化が進むことが経済パフォーマンスにも影響を与える」

「日本の場合、若者が内向きだったり意欲が低かったりすることではなく、
 成果を上げていない中高年層の人件費が政治的要因で高いのが問題である」

「従って、北欧のような賢い積極的雇用市場政策を行うなら
 所得税の税率を引き上げて就業支援や給付付き税額控除に投入すべきである。
 所得が上がらない層にはNPO等の有償ボランティアを副業として認めるのも良い」

「いずれにせよ、これ以上働かないし給与も上がらない層を優遇してはならない。
 これから日本経済に寄与する新規就業者や起業者を優遇すべきである」

IMFから成長率見通しを大きく引き下げられるような扱いを受けても、
安倍内閣は頭脳停止に陥って己の愚かさに気づかない可能性が高い。

 ↓ 参考

「50代社員の賃金水準が高過ぎ」「解雇規制を緩和しても雇用は増えない」- 考えさせられる企業調査結果
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/c03fbef03c82a38b94b4e3b26a56d4bb

日本企業の強烈な危機感 -「高年齢層の賃金水準が高く、若年層のモチベーション低下を招いている」
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/6689a996150bf42b91745b5a961687e8

▽ 日本は国内企業に甘く、劣等企業でも淘汰されないから経済パフォーマンスが悪い

『北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか』(日本経済新聞出版社)


政労使会議:年功序列賃金見直しの検討、安倍首相求める(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20140930k0000m010063000c.html
”政府は29日、経済界、労働界の代表と賃上げや労働環境などについて協議する「政労使会議」を首相官邸で開いた。安倍晋三首相は「子育て世代の処遇を改善するためにも、年功序列の賃金体系を見直し、労働生産性に見合った賃金体系に移行することが大切だ」と述べ、年功序列による賃金体系の見直しを検討するよう求めた。
 首相は、「賃上げは過去15年で最高水準で、その動きは力強く広がった。労働生産性の向上を図り、企業収益を拡大させ、それを賃金上昇や雇用拡大につなげていくことが重要だ」と強調。年功序列から、労働生産性を重視した賃金体系への見直しに言及した。
 一方、連合の古賀伸明会長は会議で「デフレ脱却には個人消費の喚起が不可欠だ。中小企業や非正規労働者の底上げがカギで、物価上昇に国民所得が追いついていない」と語り、賃上げを優先させるべきだと主張。首相が言及した賃金体系の見直しについては、会合後、記者団に「今の賃金体系は賃金や処遇に関し、労使で議論して決めたものだ。年功序列だけを見て、解消すべきだと言うのはちょっと乱暴だ」と反論した。
 経団連の榊原定征会長は会議で「足元の経済には変調の兆しがあり、注意が必要だ。当面の課題は企業収益の拡大を図り、来春の期末手当を含め賃上げができる環境づくりをすることだ」と指摘。
〔中略〕
 会議では、賃金や労働環境のあり方などに関する合意文書を12月にまとめる方針を確認した。【念佛明奈】”

労働生産性を理解していない人間が
労働生産性の向上を図っても、成功する筈がない。
この惨状ではもはや常識的知性すら欠けているのかと疑われよう。

実質賃金が低下し続けているのに賃上げが「最高水準」と騒いでいられる神経も大したものだ。
余程の「鈍感力」と思考停止がないとこうはいくまい。
いずれも日本経済にとっては災厄以外の何ものでもないが。

しかし労組側も主張が支離滅裂で、「非正規労働者の底上げ」を求めるなら
税率を上げて再分配に回すか、年功制を廃止して賃金制度をフラットにすべきであろう。
はっきり言ってこの会議は時間の無駄である。


政労使会議:年功賃金見直し 警戒強める労働側(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20140930k0000m010125000c.html
”政府と経済界、労働界の代表者を集めた政労使会議が29日、約9カ月ぶりに再開された。政府は、賃上げ要請を前面に出した昨年の会議での姿勢を改め、今年は賃金体系の見直しなどを通じて生産性の向上を図ることに主眼を置く。まずは企業業績を改善させ、賃上げの余裕を作るというシナリオを描く。ただ、賃金体系の見直しは一部労働者の賃下げや労働環境の悪化につながりかねず、労働側は警戒を強めている。【小倉祥徳、東海林智、川俣友宏】
 「動き始めた経済の好循環を確固たるものにするため、労働生産性の向上など諸課題を議論したい」。甘利明経済再生担当相は冒頭、政労使会議再開の意義を強調した。
 昨年秋に設置された政労使会議は「企業収益の拡大を賃金上昇につなげる」などと明記した文書をまとめ、経営側に賃上げを要請。今年の春闘で、賃金全体を底上げするベースアップなどにつなげた。ただ、2年連続の賃上げに経済界では慎重論も根強く、「賃上げは生産性向上が前提」との声が出ていた。
 これを受け、安倍晋三首相は29日の会議で、年功序列による賃金体系の見直しに言及。年齢や勤続年数と関係なく、職責が重かったり、成果を出したりする人に報いる賃金にすることで、従業員のやる気を引き出して生産性を向上させる。それで業績が良くなれば、賃上げにつながるという論法だ。子育て世代などに手厚く配分できるかも検討課題となる。
〔中略〕
 日本生産性本部によると、1時間の労働でどれぐらいの価値を生むかを示す生産性は、2012年に日本は40.1ドル(約4400円)で、60ドル前後の米国や仏独を下回る。1990年代半ばには上位だったが、エレクトロニクスの不振などで低迷が続く。生産性を改善するには、他社がまねをできない商品を開発するなどして利益率を高める必要があるが、「年功序列では、有能な若手の起用が遅れる」との指摘が根強い。
 「日本は労働市場が硬直的」との指摘もあり、会議では、女性の就労を促したり、成長分野の産業に人材を集めたりする施策などを議題にする方針だ。

◇連合会長、賃金体系見直しの議論に不満
 政労使会議の終了後、連合の古賀伸明会長は記者団に対し、「今の(賃金の増え方を示す)賃金カーブは労使の議論の積み重ねだ」と述べ、賃金体系見直しの議論に不満を漏らした。
 年功序列型の賃金は「若年層の賃金を安く抑えている」との批判がある一方、「年齢とともに賃金が上がるため、マイホームの購入や教育資金など生活設計が立てやすい。人材の定着にもつながる」と評価する声も根強い。
 一方、一部企業に導入された「成果主義」型の賃金に対しては、労働側に「社内の不和や長時間労働を招いた」との不満がある。また、成果に応じた賃金体系は、業績が悪化した時に賃下げを行いやすい
 ある連合幹部は「グローバルな競争にさらされる大企業で必要な部分もあるが、中小企業は年功序列の安定した賃金制度が人材を引き留める役割を果たしている」とし、企業の状況に適した賃金体系を探るべきだと指摘。その上で「(経営側が求める)総額人件費削減のために持ち出した理屈ではないのか」と警戒する。”

まったくもって馬鹿馬鹿しい話で、「子育て世代などに手厚く配分」するのは
賃金体系の見直しによるものではなく再分配政策によって行うものである。

利益率の問題にしても、ドイツ企業と比較すれば
労働者の年功賃金以上に経営の質の問題が大きいことがすぐ分かる。

結局は連合側が懸念しているように賃下げの口実として使われるだろうが、
連合側により優れた代案がある訳ではない(と言うより全くない)ので、
どちらも所詮は自己の利害しか眼中になく、不幸な話である。
そして、不毛な水掛け論の間に日本経済は刻々と沈んでゆくのだ。
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