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社会保障を食い荒らす人々 - 利権化する生活保護、医療扶助を狙う診療所が増加中

2012-01-10 | いとすぎから見るこの社会-全般
生活保護受給者が過去最高の水準になりつつある現在、
相変わらず問題噴出のこの分野で遂にと言うか
予想通りと言うか、医療扶助の利権化が明るみに出ている。

日本の生活保護が諸外国に比べ余りにも高額過ぎるので
自治体側の負担が重く「水際」での軋轢が生じ易いこと、
自立のインセンティブがなく世代間継承が存在していること、
効果的な就労促進の仕組みが事実上ないこと、
「派遣村」以来、なしくずしに受給者を増やしてしまったこと、
政府も野党も有効な雇用対策を企画提案する能力がないこと。
(「貧困問題への取り組み」など小学生でも唱えられるレベルだ)

中でも深刻なのが生活保護費の5割を占める医療扶助
この比率の高さは誰がどう見てもおかしい。

生活保護受給者の中で頻繁に受診する者が全国で1万8千人、
厚労省はその内の2割超が「過剰受診」であると判断している。

しかし行政指導もさして効果なく、医療費自己負担制度の導入も及び腰。
「取りはぐれのない」医療扶助を狙う診療所が増える始末である。

今すぐに医療扶助額の著しく多い医療機関の実名を公表し、
強制査察を行って牽制しなければ事態は深刻化するしかない。

学習院大学の鈴木亘教授が批判した医療のモラルハザードが
愈々明確になってきた。

▽ 生活保護を食い物にする医療機関の存在を指摘

『社会保障の「不都合な真実」』(鈴木亘,日本経済新聞出版社)


生活保護者、公費負担で高頻度通院…厚労省調査(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111231-OYT1T00024.htm
医療費が全額公費負担される生活保護受給者について、2009年度の受診状況を厚生労働省が調査したところ、2日に1回以上の高頻度で3か月以上続けて通院した「頻回通院者」が全国で1万8217人に上ることがわかった。
 うち3874人については、自治体が必要以上の受診にあたる「過剰受診」と判断。通院頻度を抑えるよう受給者を指導したが、改善はその約3割の1279人にとどまっているという。
 同省によると、全国の一般外来患者の月平均通院日数は約1日で、65歳以上の高齢者でも3日程度にとどまっている
 しかし、同省が同じ傷病名で同一診療科(歯科を除く)を月15日以上、3か月以上連続で受診した人について、09年度分の診療報酬明細書(レセプト)の分析を各自治体に依頼、データを集計したところ、生活保護受給者の多くに整形外科や内科の診療所に頻回通院したケースがあったことが判明。自治体はさらに該当受給者の診療内容などを点検し、全体の約2割の3874人を「過剰」と判定した。都道府県別では、大阪府が6025人(過剰受診者856人)と最多で、以下、東京都が1920人(同478人)、福岡県が1374人(同469人)など。

大阪の数字は生活保護受給者の多さに原因があるが
地元に医療扶助狙いの医療機関が集中しているためでもある。

橋下市政もいずれこの腐敗構造にメスを入れるだろう。


生活保護受給者囲い込みの病院「彼らは上客」(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111231-OYT1T00140.htm
”全額が公費から支出される生活保護受給者の医療費を巡り、日課のように受診を繰り返す「頻回通院者」の存在が明らかになった。
 「暇だから」「親切にしてもらえる」。病院通いを続ける理由を、彼らはそんな風に漏らす。そして医療機関側も、車での送迎など手厚いサービスで、取りはぐれのない〝上客〟の囲い込みに懸命だ。
  ◆5年前から毎日
 12月中旬の朝、大阪市西成区の診療所。玄関のシャッターが開くと同時に、中年男性たちが次々と吸い込まれていった。診察を終えた十数人に聞くと、全員が受給者。半数以上は週4日以上通っているという。
 「5年前から毎日、点滴とマッサージに来ている」という男性の病名は、「腰痛」。「足の関節が痛む」と連日、電気マッサージに通う別の60歳代の男性は「先生が優しいし、マッサージも気持ちいい。どうせタダやし」と満足そうに言う。
 厚生労働省の調査で判明した同市の頻回通院者は、全国最多の4179人で、全体の2割以上を占める。
 診療所の患者は高齢者が多いが、一見健康そうな働き盛り世代の姿も目立つ。
 40歳代の男性は腰の持病のため連日、「簡単なリハビリ」に通っているという。本来はケースワーカーから働き口を探すよう求められる年齢だが、「医者が書類に『就労不能』と書いてくれるから何も言われない」。男性はそう話し、「元気そうに見えるやろけど病人やで」と付け加えると、自転車で勢いよく走り去った。
〔中略〕
 最近開院した診療所は年中無休の触れ込み。開院当初、「生活保護取扱」と書いたのぼりを立て、芸能人の名を使ったビラやカイロを通行人に配る客引きを展開し、市保健所から注意を受けたという。
 「受給者をターゲットにした診療所が、ここ数年増えている」。同区の医療関係者はそう話す。
 「彼らは主要顧客」。ある診療所を経営する男性医師は、こう言い切った。数年前の開院当初は患者が集まらず、知人のブローカーに受給者の紹介を依頼。以後、頻回通院者が増え、赤字経営を脱却したという。
 「治療より経営優先。はやってナンボ」。医師はそう言う一方、こんな表現で過剰診療を否定した。「患者が自主的に来るから診ているだけ。『毎日来い』とは言っていない」

「開業医は経営努力している」という声があるが
馬鹿を言うのもいい加減にして欲しい。
医療の「経営努力」の中身は極めて不透明で
これまで様々な悪質事件が起きてきたのを決して忘れてはならない。

「殆どの医師は良心的」などという緩い常識論で
誤摩化していると手痛いしっぺ返しを受ける。

▽ このままではまた山本病院のような事件が起きる

『失われた「医療先進国」』(岩本聡,講談社)


生活保護:医療費の自己負担見送りへ…厚労省が中間案(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111210k0000m010095000c.html
”生活保護制度改革に向けた厚生労働省の中間とりまとめ案が9日、明らかになった。保護費の半分を占める医療費(医療扶助)抑制策として検討していた、受給者の医療費への自己負担導入や、安価な後発医薬品(ジェネリック)の使用義務化案は見送る。想定していた来年の通常国会での生活保護法抜本改正は断念し、医療機関への指導強化といった運用面の改善にとどめる。同省は12日の「国と地方の協議」で中間案をとりまとめる。
 生活保護受給者は今年8月時点で過去最多を更新し、約206万人に達した。保護費は今年度予算で3.4兆円。その半分を占める医療扶助には患者の自己負担がなく、過剰診療をする医療機関の存在も指摘されることから、受給者が全国最多の大阪市などが自己負担導入を可能とする制度改革を主張し、厚労省も検討していた。
 医療費の自己負担案は、先月の政府の政策仕分けでも提言された。ただ、憲法が保障する「生存権」の侵害にもつながりかねず、自治体や民主党内にも反対意見がある。同党厚労部門会議の生活保護ワーキングチームは先月末の意見書で「今後更に検討すべき取り組み」としたが、同省の中間案では一切、触れないことになった
 医療扶助抑制策として厚労省は、新薬の特許切れ後に発売される後発薬の使用義務化も検討した。
 だが08年に同じ趣旨の通知を自治体に出し、猛反発を浴びて撤回した経緯があり、最終的に「義務化」の文言を削除した
 こうした結果、中間案は、レセプト(診療報酬明細書)点検や、医療機関への指導を強化するよう自治体に通知するなどの運用改善策にとどまった。このほか、不正受給対策として、就労先、銀行などに対する収入・資産調査の強化、告発基準策定などを挙げている。【石川隆宣】”

以上の状況を理解していれば、この毎日新聞の報道の重要性が分かる。
厚労省は事実上、この問題に対処できなくなっているのだ。

メディアからの医療扶助悪用の報道が相次いで
バッシングを受けてからでないと彼らは動かないだろう。

北欧諸国があれほど不愉快な情報公開制度と
強制就労システムを構築しているのは、
社会保障があっと言う間に利権化し非効率になるのを知っているからだ。
日本の当局者や貧困問題の「活動家」はそれを全く理解していない。

▽ 北欧は楽園ではない。常にモラルハザードと闘ってきた。

『福祉国家の闘い―スウェーデンからの教訓』

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