直近のドル円の推移(infoseek)頭を抑えられている
15年ぶりの円高が進んでいます。
スズキの鈴木会長は「政争より「日本沈没」回避を」と
痛烈な政府批判を始めました。(全くその通りです)
様々な解説がなされていますが、
評論家のいい加減な放言も多いので、
東大の伊藤教授の指摘を紹介します。
端的に言えば、これは短期的には金融政策の問題です。
かつて日本経済を世界最速で立ち直らせた高橋是清のように、
「金融緩和、通貨安への誘導」を実施しないから、ということです。
![]() | /br>『大恐慌を駆け抜けた男 高橋是清』(松元崇,中央公論新社)< |
円高は止められるか?=東京大公共政策大学院副院長・伊藤隆敏(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/biz/kansoku/news/20100826ddm008070128000c.html
”今月の中旬以降、円高と日本株安が進行している。特に日銀が8月10日の金融政
策決定会合で金融政策の現状維持を決めたのに対し、米連邦公開市場委員会が同日
(日本時間11日未明)、金融緩和を打ち出したことが、日米長期金利差の縮小と
円高につながった。それが日本の株価押し下げに働いたようだ。
円高による景気悪化を懸念して、政府は追加経済対策を検討、政府・日銀の協調を
呼びかけている。菅直人首相と白川方明日銀総裁が23日に電話協議を行ったが、
面談でなかったことで市場は失望し、電話協議の発表後に円高が進み、株価はさら
に下落した。
1ドル=83~85円はどれほどの円高か? 昨年12月17日の本欄で、日米の
インフレ調整後の実質為替レートでみると、85円は極端な円高水準とはいえない
と書いた。為替介入が大きな効果を持つのは、為替レートが何らかの投機的な動き
で極端な円安や円高になっている場合である。実質レートで見る限り、たとえ日本
が単独で為替介入をしても、円安への反転につながるような極端な状況ではない。
購買力平価によれば、日本のデフレが継続する限り、名目レートは円高になる。
では、介入以外の円高是正の方法はあるだろうか。金融緩和が正攻法だ。ただし、
日本は政策金利がゼロに限りなく近いため、金融緩和の手段が非伝統的なものにな
らざるを得ない。量的緩和(中長期国債を買って中長期金利を引き下げる)や、期
待に働きかける政策(デフレ脱却まではゼロ金利を継続と約束)などが候補である。
欧米の景気が停滞し、さらなる金融緩和が見込まれるなか、日本も欧米と少なくと
も同じペースで金融緩和をしなければ、さらなる円高は必至だ。”
尚、当ウェブログに記録していますが、
アメリカのFRBだけでなく欧州のECBも緩和策を取っています。
為替介入も非伝統的な金融緩和策も行っていない日本は、
事実上の円高容認政策を自ら選択しているのです。
↓ 参考まで、当ウェブログのエントリー
野村證券のジェンズ・ノードビッグ氏「ドルが今後数週間上昇する可能性」
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/2f0c732bf30194ed035f64cc7967cd03
”米連邦公開市場委員会(FOMC)では景気認識を下方修正し、MBSの償還分を米
国債に再投資することを決めたが「これ自体は想定の範囲内」(国内金融機関)。し
かし、円高/ドル安懸念がおさまらないのは「金融政策に打ち止め感がない。景気の
一段の悪化があれば、さらなる景気テコ入れ策を打つ可能性がある。ドル安トレンド
に歯止めはかかっていない」(国内金融機関)ためだ。
今回の決定はFRBのバランスシートの規模維持だったが、市場では、今後は追加的
な証券の買い入れによってバランスシートの拡大に踏み込む可能性を指摘する声も出
ている。
「米景気の異例な不透明な状況が払しょくされるまでには時間を要する。この間、中
国景気が減速傾向となれば、リスクは円高方向になるだろう」日興コーディアル証券
・国際市場分析部・為替ストラテジスト松本圭史氏は指摘し、昨年11月の安値84.
82円を割り込む可能性があると述べた。”
機関投資家が円売りドル買いに転じた?! - 短期筋の円買いを押し戻す
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/21a4c7598f38ecd654ecdef8d0fbc0ff
”欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのウェーバー独連銀総裁は、ECBは銀行
への無制限の流動性供給を来年に入っても続けるべきと発言。これを受けてユーロ
圏の景気見通しに対する警戒感が高まり、ユーロ/ドルは約5週間ぶりの安値をつ
けた。”
先週の段階で、いずれ円高に向かうのは明らかでした。
ロイター報道を見ていれば明らかです。
政争より「日本沈没」回避を=円高放置の民主を批判―スズキ会長
http://www.jiji.com/jc/c%3Fg%3Deco_30%26k%3D2010082600656
”「政争は日本沈没を避ける改革策を立ててからにしてほしい」。スズキの鈴木修会長
兼社長は26日、日本経済をけん引する輸出企業が円高で苦しむのを横目に、民主党
が小沢一郎前幹事長の党代表選出馬表明で浮き足立っている状況を批判した。東京都
内で開いた新型車の発表会見で述べた。
円相場は15年ぶりに1ドル=83円台を付けた後も高止まりが続いている。鈴木会
長は「当社の連結営業利益は1円の円高で年間約40億円目減りする」と説明。金融
危機後にコスト削減策を尽くした後の円高だけに「15年前と異なり、もう一段のコ
スト圧縮とはいかない。自助努力の限界を超えている」と強調した。
その上で、政界の現状について「(民主党代表選といった)目先の重要案件もいろい
ろあるようだが、日本が沈没したらそれもなくなる」と皮肉った。”
鈴木会長の怒りは尤もです。
日本では円高は輸入品の購買力を高めますが
賃金水準の高い輸出産業を苦しめ雇用を悪化させるので
全体で言うと明らかにマイナスとなります。
これから生じる景況悪化によって、
いい加減な円高歓迎論者の嘘が暴かれるでしょう。