父の住む実家近くのアトリエで仕事。
11時から3時間6ポーズクロッキー。
クロッキーなのだが少し変わっていて、20分のポーズ時間を5分×4に割って、同じポーズのまま90度ずつ方向を変える、というのをやる。彫刻のポーズの場合は体を前後左右から作らなければならないのでそういうふうにするが、クロッキーではあまりやらない。でもひとつポーズを正面だけから捉えるより体の構造理解につながるだろうし、そういう探究心と積極性をもって描こうとする人たちに出会うと、ポーズする方も各方向から描きどころのあるポーズを、多少キープし辛くてもやりたくなる。場に集中力が途切れない良い時間だった。
2時過ぎに終わって、実家に寄ると父は夜勤前で家にいた。
家の中はいつも通り片付いているとも散らかっているとも言えないが、父は台所のシンク周りだけはいつも清潔にしている。
庭はきちんと手入れされていた頃の事を思えば今は草木が茂りすぎている。
かつて鯉が泳いでいた池は、掃除されないので底に落ち葉などが溜まり、どんよりしているが甲羅がまん丸な亀が一匹いる。5~6年前に妹が学校でもらってきたミドリガメの亀藻(かめも)は小さい頃、人の手から餌を食べたりしていたが、今は足音がすると素早く水中に逃げ込む対人恐怖亀になってしまった。
ケーキ買うといで、と2000円もらって、すぐ側のケーキ屋に行く。
父はいちごの乗ったケーキが好きだが季節がらいちごは無く、代わりに桃のショートケーキがあったのでそれにする。父は桃も好きだ。私は抹茶ゼリー、白玉、あんこ、クリームなどがたくさん乗った和風パフェにした。
帰ってコーヒーを入れケーキを食べる。
父は女子ゴルフを見ていた。ここ数年、趣味という範囲を超えてゴルフに熱中している。うちの三姉妹のうち誰かひとりプロゴルファーに育てたらよかったなあ、と言いいながら。優勝賞金の金額を見て、確かにと同意する。
夜勤の前、父は仮眠をとる。夕食はそのまえに済ますので5時頃と早い。
管理職になってから夜勤の回数は減ったようだが、50を過ぎた体には堪えるだろうと思う。18の頃から週に何度か夜勤が入り昼夜逆転する生活で、もう体がそういうリズムに慣れているとは言っていたが。
晩ご飯どうするか、何か作ろうかとふたりでしばらく考えた。父は今日はなんか頼もう寿司とか、と宅配寿司のチラシをひっぱり出した。
二人前の桶とサバ寿司を一本注文する。
時間があったらカレー作っといたけど、2時間かかるから今日は間に合わんと父。
父カレーはまた進化を遂げているらしい。
待っている間に近所のスーパーへおつかい、仏花を買う。
ちょうど5時頃に寿司が届いた。
インスタントの赤出しに湯を注ぎ、やかんで黒烏龍茶を沸かす。いつも飲み物はペットボトルだったのに、お茶の葉と冷蔵庫に入れるお茶のプラスチック容器があったので何故か聞くと、その方が安いから、と言った。お茶ひとつ沸かさなかった父がそういうことも学習していた。
寿司はデリバリーだったが、思ったよりおいしかった。
久しぶりに寿司食うたいう顔してんな、と言われる。実際そうだった。
そういえば小さい頃、私は寿司といえば、まぐろと鉄火をずっと交互に食べるくらいその他のものはダメだった。
回転寿司に行き、父の横に座ると、父の食べた皿が積み重なり塔をつくるのがうらやましかった。せいぜいいつも5、6皿の私は一度懸命にまぐろと鉄火で9皿くらい食べて塔をつくったのを思い出した。
食後お茶を飲んで、いれたてのお茶はおいしいなあと言い、昔からの習慣、食後のチョコを2粒ほど。その後テレビの前で父は寝た。
お茶がおいしい、というような日常の素朴な感想の言葉を父の口から聞く度に、妙な感動を与えられる。
皿を洗いながら、側のゴミ箱に捨ててある冷凍ピザの赤や緑のパッケージや、スーパーで揚げ物をパックに入れて掛ける赤い輪ゴムが引き出しの取っ手にたくさん引っかかっているのが目に入り、そういうものをひとりで買って開けて食べる姿をうっかり引きずり出してしまう。
さみしくないのかと父に聞いた事はまだない。
11時から3時間6ポーズクロッキー。
クロッキーなのだが少し変わっていて、20分のポーズ時間を5分×4に割って、同じポーズのまま90度ずつ方向を変える、というのをやる。彫刻のポーズの場合は体を前後左右から作らなければならないのでそういうふうにするが、クロッキーではあまりやらない。でもひとつポーズを正面だけから捉えるより体の構造理解につながるだろうし、そういう探究心と積極性をもって描こうとする人たちに出会うと、ポーズする方も各方向から描きどころのあるポーズを、多少キープし辛くてもやりたくなる。場に集中力が途切れない良い時間だった。
2時過ぎに終わって、実家に寄ると父は夜勤前で家にいた。
家の中はいつも通り片付いているとも散らかっているとも言えないが、父は台所のシンク周りだけはいつも清潔にしている。
庭はきちんと手入れされていた頃の事を思えば今は草木が茂りすぎている。
かつて鯉が泳いでいた池は、掃除されないので底に落ち葉などが溜まり、どんよりしているが甲羅がまん丸な亀が一匹いる。5~6年前に妹が学校でもらってきたミドリガメの亀藻(かめも)は小さい頃、人の手から餌を食べたりしていたが、今は足音がすると素早く水中に逃げ込む対人恐怖亀になってしまった。
ケーキ買うといで、と2000円もらって、すぐ側のケーキ屋に行く。
父はいちごの乗ったケーキが好きだが季節がらいちごは無く、代わりに桃のショートケーキがあったのでそれにする。父は桃も好きだ。私は抹茶ゼリー、白玉、あんこ、クリームなどがたくさん乗った和風パフェにした。
帰ってコーヒーを入れケーキを食べる。
父は女子ゴルフを見ていた。ここ数年、趣味という範囲を超えてゴルフに熱中している。うちの三姉妹のうち誰かひとりプロゴルファーに育てたらよかったなあ、と言いいながら。優勝賞金の金額を見て、確かにと同意する。
夜勤の前、父は仮眠をとる。夕食はそのまえに済ますので5時頃と早い。
管理職になってから夜勤の回数は減ったようだが、50を過ぎた体には堪えるだろうと思う。18の頃から週に何度か夜勤が入り昼夜逆転する生活で、もう体がそういうリズムに慣れているとは言っていたが。
晩ご飯どうするか、何か作ろうかとふたりでしばらく考えた。父は今日はなんか頼もう寿司とか、と宅配寿司のチラシをひっぱり出した。
二人前の桶とサバ寿司を一本注文する。
時間があったらカレー作っといたけど、2時間かかるから今日は間に合わんと父。
父カレーはまた進化を遂げているらしい。
待っている間に近所のスーパーへおつかい、仏花を買う。
ちょうど5時頃に寿司が届いた。
インスタントの赤出しに湯を注ぎ、やかんで黒烏龍茶を沸かす。いつも飲み物はペットボトルだったのに、お茶の葉と冷蔵庫に入れるお茶のプラスチック容器があったので何故か聞くと、その方が安いから、と言った。お茶ひとつ沸かさなかった父がそういうことも学習していた。
寿司はデリバリーだったが、思ったよりおいしかった。
久しぶりに寿司食うたいう顔してんな、と言われる。実際そうだった。
そういえば小さい頃、私は寿司といえば、まぐろと鉄火をずっと交互に食べるくらいその他のものはダメだった。
回転寿司に行き、父の横に座ると、父の食べた皿が積み重なり塔をつくるのがうらやましかった。せいぜいいつも5、6皿の私は一度懸命にまぐろと鉄火で9皿くらい食べて塔をつくったのを思い出した。
食後お茶を飲んで、いれたてのお茶はおいしいなあと言い、昔からの習慣、食後のチョコを2粒ほど。その後テレビの前で父は寝た。
お茶がおいしい、というような日常の素朴な感想の言葉を父の口から聞く度に、妙な感動を与えられる。
皿を洗いながら、側のゴミ箱に捨ててある冷凍ピザの赤や緑のパッケージや、スーパーで揚げ物をパックに入れて掛ける赤い輪ゴムが引き出しの取っ手にたくさん引っかかっているのが目に入り、そういうものをひとりで買って開けて食べる姿をうっかり引きずり出してしまう。
さみしくないのかと父に聞いた事はまだない。