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流出雑記 

2009年08月27日 | Weblog
先日、私の都合でかなり直前に仕事の日程変更を頼み、別のモデルを急遽手配してくれた若い画家に、お詫びとして何か贈ろうと思い画材屋に行った。
油彩コーナーで、油絵の具を赤系と青系一色ずつ選んだ。
色によってAからFまで、6段階に値段が別れていて、高いものでは1本1800円くらいする。なぜこんなに値段にひらきがあるのか、その色をつくる為の混色加減が難しいのだろうかと思っていた。

今日は午後から天理で仕事。5回固定ポーズの最終回。
100号のキャンバスに背景は青、中央に実寸の1.5倍くらいの大きさの寝っ転がった人体。真っ赤で肉の塊のようだ。
今日、始まりの段階ではそうだったが、終わる頃には赤の上に青が塗り重ねられ立体感が出て、所々下塗りの赤が見えるが今度は真っ青な人体になっていた。
それでこの青と赤、絵の具について質問してみた。
ちなみに最初に書いた若い画家とは別の画家である。
画面に使われている青はコバルトブルーで赤はカドミウムレッドと言い、どちらも鉱物から作られた色だそう。
絵の具の値段は原料によって違い、例えば黄土色系のものは原料が手に入りやすい土なので安価、植物原料のものは比較的安価だが、色として弱く、高価になるが強い色が出るのは鉱物系のも。
コバルトバイオレットという、これも鉱物系の非常にきれいな色があるが、下手に混色すると化学変化を起こし、濁ってしまったりするらしい。

真っ赤な人体はカドミウムレッド。
カドミウムといえばイタイイタイ病。有毒物質だ。そう言えばアクリル絵の具のカドミウムレッドにも後ろに有毒の×マークが付いていた。
それと、カドミウムもコバルトも極微量だが人体の構成物質として含まれているというのも思い出した。
カドミウムの血肉がコバルトブルー(これもまた有毒)に冷やされ画面にジュッと焼き付けられる。その2色は、動脈と静脈のイメージもはり巡らせる。
さらに細かく描き込まれ、複雑に色が重なり、靄がかり、飛沫のようなものが飛び、削り取られながらキャンバスの上で色は新たな物質に変化する。誰も見た事のないものに。
その画家の硬質な作風には鉱物の色彩の要素も加担していたのかと、色の選択に納得しながら話しを聞いた。