ダウンワード・パラダイス

「ニッポンって何?」を隠しテーマに、純文学やら物語やら、色んな本をせっせと読む。

HUGっと!プリキュア 第43話「輝く星の恋心。ほまれのスタート。」感想

2018-12-09 | プリキュア・シリーズ
 


 尺が足りない……。1時間ドラマで観たかったな、今回ばかりは。
 今シリーズ、過去の14作にはなかった新しい試みがいっぱい盛り込まれてるんだけど、正規メンバーのひとりが異性(正体は未来からきたネズミ?ですけどね)に告白をして、しかもフラレる、というのも明らかにそのひとつでしょう。
 いわゆる「妖精ポジション」のキャラがイケメン青年の人間態になって、プリキュアの誰かとイイ感じになる、というパターンはあったし、プリキュアの誰かが男子から告白される、というケースもあった。しかし今回のほまれは、はなたちの後押しで、自分から、結果を承知で打ち明けて、案の定、だめだった。
 「ひとは未来へ向かって進まねばならない。けっして時を止めてはいけない。だからいずれは必ず来るべき別れも、辛いけれども受け容れねばならない」というテーマはすでにえみるとルールーがやっている。だからほまれの恋心は、「ハリーが未来へ帰るから」ではなく「ハリーにはすでに大切なひとがいるから」成就しないわけで、ぼくたちが経験するのと同じ、リアルでシビアな失恋なんですね。
 それでも、思慕をただ胸の内にしまっておくんじゃなくて、はっきりと相手に伝えて真摯な答えを受け取れば、そこから新たに「スタート」することができる。いい話でした。
 現実にはなかなか難しいけどね。とてもデリケートな問題です。第4話から、はなたちと一緒に全員で育んできた絆があればこそだ。人生をかけた大一番の直前にああいうことをするなんて、アニメだからやれたことで、よい子の皆さんは真似をしてはいけません。
 えみルーが出てきてから、とかく影が薄くなりがちだった初期メンバーだけど、久しぶりに3人の友情を堪能しました。ことに、ただひとりほまれの気持に早くから気づいていたさあや。さや×ほまの真っ当な絡みはこれが初めてじゃないかな?
 あと、BGMですね。ほまれが、はなとさあや(とはぐたん)に「フレフレして。」といったときにかかった曲。「エール・フォー・ユー」っていうのかな。バージョンによっていくつか曲名があるようだけど、あれ、しばらく掛かってなかったと思うんだよね。序盤では、泣かせどころで必ず掛かってんだけど。あれが好きだったんで、「中盤からサントラを変えたんだろうか?」とか思ってたんだけど、こういう時のために温存してたわけか。
 ひとつだけ難をいうならば、冒頭でも書いた尺の件かなあ。バトルシーンが負担なんですよ、はっきりいって。ここまで43回みて、やっぱりいちばんの傑作回だったと思うのはほまれが変身に失敗する第4話なんだけど、あの回では、バトルシーンが邪魔どころか、キュアエールの戦闘そのものがほまれへの「応援」になっていた(もちろんBGMは「エール・フォー・ユー」でした)。アクション描写も凄かったし。
 バトルシーンの迫力が本編のエピソードや主題と熱く融け合うのがプリキュアシリーズの醍醐味なわけで、そこだけが今回、惜しかった。まあ、こういうのは「望蜀の嘆」っていうんだろうか、こちらの目が変に肥えちゃって、ぜいたくをいってる気もしますが。
 最後になりましたが、アンリ君のこと、前回「(脚の)感覚がないんだ。」と述べていたので、気にかかってはいたんだけど、車椅子での登場には重いものを覚えましたね……。回復までの過程なのか、あるいはずっとこのままなのか……。もし後者だとすれば、本当に今シリーズは、「児童向けアニメ」の域を超えたところへ踏み込んでいると思います。


 追記) このあとビデオを見返すと、「バトルシーンが負担」というのはいささか言い過ぎに思えてきた。「悲しいのも寂しいのも嫌。ぼくを大切にして永遠に傍にいてくれたら、ハリーの気持なんてどうでもいい。」というビシン君(この子もほんとに拗らせてるなあ……)のストーカー的「執着」と、「私は、自分の大好きな人の幸せを……輝く未来を願ってる。」というほまれの「愛」との対比は、やはりバトルシーンでこそ際立つんだよね。「勇気を出して行動した人を、バカにする権利なんて、誰にもない!」という、はな、さあや、えみルーの「応援」もよかったし……。まあ、それだけ今回は日常パートが充実していて、尺の短さが残念に思えたってことです。