ダウンワード・パラダイス

「ニッポンって何?」を隠しテーマに、純文学やら物語やら、色んな本をせっせと読む。

菊地成孔さんのコロナ体験記

2022-07-30 | 雑(youtube/パソコン/将棋。ほか)
 敬愛している文筆家/ジャズミュージシャン(本来この順番は逆なんだろうけどぼくにとっては「文筆家」が先)の菊地成孔さんの壮絶(なのに文体は例によってユーモラスかつ軽妙な)コロナ体験記です。むろん、罹患したら全員がこうなるわけではなく、個人差はとうぜんあるはずですが、それでも一定の割合で(厚生労働省がきちんとしたデータを出さない、というか出せないために正確な数値は不明ですが)起こりうる可能性はあるわけです。しかもこれですら統計上は「軽症」に分類されるんですね。「コロナは風邪」だの「心の病気」だのと公の場で犯罪的な与太を飛ばしている輩と、その手の風聞を真に受けて楽観視している方々はぜひお読みください。



ビュロ菊だより コロナ感染記




 症状の描写がとにかく真に迫っておりますが、それとは別に、


「1)国、都、保健所、特設施設は一切役に立たない(ディスリではなく、おそらく機能していない)。
2)知らない医者も役に立たない(市井の町医者内にもコロナノイローゼみたいな状況が定着している)
3)信頼関係のある近所のかかりつけだけが役に立つ(結局、「使えるやつが使える」という原理)
 の3点です。真面目で、1の穴に詰まっちゃって、それこそ死んでしまう方も多いと思います。日本人は、いざという時でさえ、<国がちゃんとやってくれるだろう>という心中の信用を手放せません。なので年がら年中、国にキレざるを得ないのでしょうが(しかも、腰が引けたまま)。治安の悪い国でも、文化的な国家でも、こんなに国体を(口ではどんなふうに言おうと)内心で愛し、信じ、頼りにして、甘えている国はありません。」



 というフレーズが強く印象に残りました。なるほど。ぼくたちは、世界にも類を見ないほど「国を愛し、信じ、頼りにして、甘えている」国民なわけですか。うーむ。これは、「なぜ安倍さんがこんなに慕われてきたのか。そして今なお国葬を支持する人たちがいるのか」を分析するための鍵になるかもしれませんね……。しかし、それにしても、税金や社会保障費を徴収しているのだから、しかるべき仕事はやってもらわねば困ります。昨年の管氏が酷すぎたので、岸田首相にはいくらか期待をしていたのですが、ここまでずっと無為無策、まるっきりのお手上げ状態。いまは国葬の準備で頭が一杯なのではないでしょうか。旧統一教会の問題についてのコメントもなし。お話になりません。



追記)続きが公開されました。
https://ch.nicovideo.jp/bureaukikuchi/blomaga/ar2113179



22.07.23 リンク先紹介・芥川賞について

2022-07-23 | 純文学って何?
 コロナ第7波の到来に元首相暗殺と、とかく落ち着かない日々が続き、「こんなとき(純)文学には何ができるのか?」と疑わしい気持ちにもなるが、そんななか、第167回芥川賞・直木賞が発表された。
 ここ数年、当ブログでは上半期・下半期の選考に合わせて記事を上げてきたけれど、いつも参考にさせて貰っていた西日本新聞さんの「芥川賞予想座談会」が、第165回の分から有料記事になってしまったので(世知辛い世の中である。まあ仕方ないか)、そちらはもう当てにできない。
 今のところ、無料で閲覧できる関連サイトでもっとも充実しているのはREAL SOUNDさんだと思う。
 ここまで飛ばしていた分も併せて、まとめて紹介しておきましょう。




2021(令和3)上半期 発表前
https://realsound.jp/book/2021/07/post-813839.html
2021.07.14 08:00
千葉雅也、李琴峰らがノミネート「第165回 芥川賞」はどうなる? 候補作を徹底解説


2021(令和3)上半期 発表後
https://realsound.jp/book/2021/07/post-813935.html
2021.07.14 20:00
第165回 芥川賞&直木賞、各受賞作の評価のポイントは? 受賞会見レポート


2022(令和4)下半期 発表前
https://realsound.jp/book/2022/01/post-948172.html
2022.01.17 16:00
第166回芥川賞は混戦の予感? ボディビル小説から古書にまつわる物語まで候補5作品を徹底解説


2022(令和4)下半期 発表後
https://realsound.jp/book/2022/02/post-964497.html
2022.02.09 07:00
芥川賞受賞作『ブラックボックス』は日本の暗部を映し出すーースカッとしない勧善懲悪劇


2022(令和4)上半期 発表前
https://realsound.jp/book/2022/07/post-1079977.html
2022.07.19 07:00
第167回芥川賞は女性作家の力作揃い 候補5作品を徹底解説





橋本治×浅田彰対談「日本美術史を読み直す」紹介

2022-07-21 | 歴史・文化
 安倍元首相の政権下で我が世の春を謳歌してきた「自称保守」の面々が、まともな教養もなければニッポンの伝統に対する真の敬意も持たず、やみくもに「日本スゲー」を叫んで周辺国を貶めることで、経済の低迷で自信をなくした日本人のプライドをあおって金儲けをしてきただけのビジネスパーソンでしかなかったことがはっきりしたところで、いったん政治の話題を離れて、教養をブラッシュアップしたいと思います。今朝たまたま見つけたサイトで、3年前(2019/令和1)にアップされたものですが、2007(平成19)年に行われた橋本治・浅田彰両氏による対談(新潮社主催)を、橋本さんの逝去を受けて追悼の意味で転載したそうです。当代屈指の「知識人」ふたりの対談だけに、美術史にとどまらず、「日本」そのものの特性を浮かび上がらせる「作品」に昇華されていると思います。ぜひどうぞ。






対談:橋本 治 × 浅田 彰「日本美術史を読み直す」
https://realkyoto.jp/article/hashimoto-osamu_asada-akira/