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(gyaoでの無料配信期間は終了しました。)
原作は雲田はるこ。少女マンガの文法にのっとった筋運びと見世方で、落語という芸道の魅力を存分に伝える。講談社刊。全10巻。
アニメ版の本放送は、第1期が2016年の1~4月。第2期が2017年の1~3月。ぼくはこちらは見逃していて、今回が初視聴でしたが。
たとえば圓生(もしくは文楽)と志ん生……「秀才型」と「天才肌」といったら単純すぎるけど、ともあれ、端正で筋目の通った芸風と、豪快で破天荒な芸風とのライバル関係は誠に興趣の尽きぬものであり、キャラづくりの「王道」といってもいいけれど、まァこれはそのモチーフを使った作品のひとつの完成形でしょうなァ。
アニメ版は、原作の細かいところを思い切って刈り取り、そのぶんメインの落語をたっぷり聴かせる。これが絶品。ジャズを基調にした音楽も凝ってる。音楽担当は澁江夏奈。さらに主題歌の作詞作曲は椎名林檎、歌うは芸妓の「みよ吉」役で出演もしている林原めぐみ。これまた絶品。
端正で筋目の通った(そして陰性の色気の滴る)落語家・八雲のCVは石田彰。
豪快で破天荒な(そして陽性の色気に満ちた)落語家・助六のCVは山寺宏一。
いやァ、おふたりとも滅法うまい。いや声優としてむちゃくちゃ上手いてぇのは何も今更アタシなんぞが云々するこっちゃないんだけども、落語が滅法うまいんだな。ニッポンの声優のレベルの高さにゃいつも脱帽ですよ。
☆☆☆☆☆☆☆
落語ってものは脚本(ほん)を読んでも仕方ないんで、だったらテレビで……ってのもぬるくて、寄席ェ行って生(なま)の噺家の演ってるとこを聴かなきゃしょうがない。だから出不精のうえにカネが入ったらすぐ本につぎ込んじまうぼくなんぞにはなかなか味がわかんないんだけども、それをいったら芝居の舞台も、歌舞伎も能もろくすっぽ観たことないし、踊りや小唄も知らないねえ……こんなんでにっぽんのブンガクがどうの……なんつってンだから肝が太てぇや。そりゃ谷崎はおろか三島由紀夫だってピンとこないはずだよ。ミシマ文学には芸能の血が流れてンだから……。
思えば、米朝師匠のマクラなんてのは、司馬さんの随筆とタメを張るくらい勉強になったもんだけど、ああいう方が亡くなるてのは、大きめの図書館が焼失しちまうようなもんだね。談志なんて人もね……あのシトの落語で笑ったことは一度だってないんだけども、いや大体テレビでしか観たことないんですがね、なんか好きでね。まあ毛色の変わった喋る図書館みたいな人でした。あと、噺家じゃないけど小沢昭一とかね。凄いひとがいっぱいいたなァ、昭和には。いやみなさん平成ンなっても活躍されてましたけどね勿論。でもぼくンなかではみんな昭和のひとですよ。
落語ってのは、アハハと笑って気持ちよくなってさっぱり忘れりゃそれで全然いいんだけども、ふと立ち止まって考えだすとコワい芸だ。ひとりで喋ってあれだけの客を引きずり込んで、長い時だと1時間あまりも酔わせちゃうんだから……。一人芝居だもんな、つまりは。しかも座布団のうえェ座ったまんまでさ。
たとえば圓生(もしくは文楽)と志ん生……「秀才型」と「天才肌」といったら単純すぎるけど、ともあれ、端正で筋目の通った芸風と、豪快で破天荒な芸風とのライバル関係は誠に興趣の尽きぬものであり、キャラづくりの「王道」といってもいいけれど、まァこれはそのモチーフを使った作品のひとつの完成形でしょうなァ。
アニメ版は、原作の細かいところを思い切って刈り取り、そのぶんメインの落語をたっぷり聴かせる。これが絶品。ジャズを基調にした音楽も凝ってる。音楽担当は澁江夏奈。さらに主題歌の作詞作曲は椎名林檎、歌うは芸妓の「みよ吉」役で出演もしている林原めぐみ。これまた絶品。
端正で筋目の通った(そして陰性の色気の滴る)落語家・八雲のCVは石田彰。
豪快で破天荒な(そして陽性の色気に満ちた)落語家・助六のCVは山寺宏一。
いやァ、おふたりとも滅法うまい。いや声優としてむちゃくちゃ上手いてぇのは何も今更アタシなんぞが云々するこっちゃないんだけども、落語が滅法うまいんだな。ニッポンの声優のレベルの高さにゃいつも脱帽ですよ。
☆☆☆☆☆☆☆
落語ってものは脚本(ほん)を読んでも仕方ないんで、だったらテレビで……ってのもぬるくて、寄席ェ行って生(なま)の噺家の演ってるとこを聴かなきゃしょうがない。だから出不精のうえにカネが入ったらすぐ本につぎ込んじまうぼくなんぞにはなかなか味がわかんないんだけども、それをいったら芝居の舞台も、歌舞伎も能もろくすっぽ観たことないし、踊りや小唄も知らないねえ……こんなんでにっぽんのブンガクがどうの……なんつってンだから肝が太てぇや。そりゃ谷崎はおろか三島由紀夫だってピンとこないはずだよ。ミシマ文学には芸能の血が流れてンだから……。
思えば、米朝師匠のマクラなんてのは、司馬さんの随筆とタメを張るくらい勉強になったもんだけど、ああいう方が亡くなるてのは、大きめの図書館が焼失しちまうようなもんだね。談志なんて人もね……あのシトの落語で笑ったことは一度だってないんだけども、いや大体テレビでしか観たことないんですがね、なんか好きでね。まあ毛色の変わった喋る図書館みたいな人でした。あと、噺家じゃないけど小沢昭一とかね。凄いひとがいっぱいいたなァ、昭和には。いやみなさん平成ンなっても活躍されてましたけどね勿論。でもぼくンなかではみんな昭和のひとですよ。
落語ってのは、アハハと笑って気持ちよくなってさっぱり忘れりゃそれで全然いいんだけども、ふと立ち止まって考えだすとコワい芸だ。ひとりで喋ってあれだけの客を引きずり込んで、長い時だと1時間あまりも酔わせちゃうんだから……。一人芝居だもんな、つまりは。しかも座布団のうえェ座ったまんまでさ。
北村薫の上質のミステリ「円紫さんと私」ってシリーズでは、大学教授が勤まるくらいモノ識りで、人間や世間の裏表にも精通してる大変なひとがホームズ役なんだけど、このひとの生業(なりわい)が落語家なんだなあ。なぜその道を選んだのかは、いちおう作中で語られてるけど、ぼくにはそれだけだとは思えなかった。心の底の深いところでいったい何があったのか。それがいっとう謎かもしれん。
余談が長くなっちゃった。ともあれ、昭和元禄落語心中、いまどき珍しい大人向けの名作アニメでございます。
余談が長くなっちゃった。ともあれ、昭和元禄落語心中、いまどき珍しい大人向けの名作アニメでございます。
追記 20.07.29)「アニメ版は、原作の細かいところを思い切って刈り取り」と上のところで書いたけれども、それはとりあえず第1話のことで、全体としては、むしろ原作が端折ったり、駆け足で通り過ぎてるところをじっくりと映像とセリフで補ってますね。原作に対する深い愛着と敬意がうかがえる。ほんとうに良質のアニメ作品ですよ。
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