ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

フルートベール駅で

2014-03-17 23:29:04 | は行

想像を超えて掴まれた。やられた。


「フルートベール駅で」81点★★★★


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2008年の大晦日。

サンシスコのベイエリアに住む
22歳のオスカー(マイケル・B・ジョーダン)は
いつものようにガールフレンドと目覚め
愛娘を保育園に送っていった。

犯罪歴はあるものの、
オスカーは家族を気遣う心優しい青年で、
なんとかいまの人生を変えたいともがいていた。

だがそんな彼にある出来事が起こる――。

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2009年の元旦、
米のフルートベール駅で

黒人青年が鉄道警官に、無意味に発砲された事件。

偶然、同じ駅に居合わせた人たちが
ケータイやiPhoneで撮った事件の画像がネットに公開され
けっこう大きなニュースになったので
知っている人もいるかもしれません。

ワシも、たまたまリアルタイムで知ってましたが
タイトルからはピンとこなかった。
駅名まで知らんしね(苦笑)。


同じような事件はたくさん起こっているのだと思うけど
本事件は
ビデオ画像という多くの「証人」がいるという可視化が
今回の映画化にもつながった。

そうした“市井の目”の力を、改めて感じるような作品でした。


映画は被害者となった青年オスカーの
“最後の一日”を描く形で作られたフィクション。

オスカーが朝から5歳の娘とたわむれ
ガールフレンドとケンカし
母親にメールをする。

そんな“なんでもない一日”を優しく丁寧に見せられると
それが終わってしまう未来を思い、
胸が詰まらずにはいらない。

それって監督の狙い通りだろうし、
こちらも想像したとおりではあるんです。
ですが、

これが、思いがけず、キタ。

だって、隅々まで巧いんだもん。


監督のライアン・クーグラーは若干27歳。

この事件のニュースに衝撃を受け、
映画学校在学中にこの脚本を書き、
それがサンダンスの目にとまったのだそう。

さすがですねえ。

特にうまいのが
野良犬との悲しくとも一瞬のシーン。

あのわずかな出来事に
彼の世界が「カタッ」と、静かに良き方向へと動いた証を
確かに見て取れる。

彼はたったこんな事で動く、
22歳のまだ、ほんの子どもだったのだ、と
痛感させられる場面だった。


実際の事件のときの映像も
効果的に使われていて、

見も知らぬ誰かの物語を
身近に感じることで
誰かの問題が、自分の問題になっていく。

それが映画の力なんだと、
つくづく、しみじみ思った。

しかもわずか85分。
いい映画っす。


★3/21(金・祝)から新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。

「フルートベール駅で」公式サイト
コメント (1)
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