ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

母の身終い

2013-11-28 23:28:37 | は行

この残響はハンパない!
まだ、胸がバクバクいっている……。


「母の身終い」80点★★★★


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フランスのある街。

48歳のアラン(ヴァンサン・ランドン)は
つまらない罪で服役し、出所したばかり。

独り住いの母親(エレーヌ・ヴァンサン)のもとに
身を寄せるが

母親とアランは折り合いが悪く
常にぶつかり合ってしまう。

そんなときアランは
母親が病気で余命を宣告され、
ある決断をしていることを知る――。

***********************


見た後、喉にせり上がってくる、
この石のような重みはなんなのか!


「終活」なんて生易しいものではない、
母親の選択、
この究極のエンディングは、
すべての観るひとに大なり小なりの重石を持たせると思う。


見る前と、後では確実に何かが変わる、という
久々の映画体験です。


ただ、これは「終活」の方法うんぬんよりも
どうにもうまくゆかない“母と息子”を描いた作品であり
そこが、重要。


母親は髪をきっちり束ね、
清潔で、きちんとしている。意志も強そうだ。

他人であるワシから見ると
「こうありたい」と思える女性なんだけど

しかし、
48歳の息子には耐えがたい要所のある母親で

二人は
どうしてもぶつかってしまう。

わかるわ~(苦笑)。


グザヴィエ・ドラン監督が
17歳と母親の衝突を描いた「マイ・マザー」
確実に20年後、いや30年後なわけですよ、コレ(苦笑)。


そして本作の監督は1966年生まれのフランス人、ステファヌ・ブリゼ氏。
確実に自身と40代の主人公、
重なる部分あるだろうなと思う。


どんな親子間にも経験のあることじゃないかしらんと、
自らを振り返り、また胸がつまる。


そんなヒヤヒヤ親子の“緩衝材”である愛犬を
互いに奪い合う様子も
ユーモアにもなっているんだけど、静かに効く。

その犬をめぐる騒動、
そのときの母親の振る舞いの冷徹さもまた、
ラストを経れば意味を持ってくるんですね。

母親と息子を
終始じっと静かに「観察」し、
どこにでもありそうなドラマを焼き付け、

しかし、大きな提起をする。

そして、このラスト……。

いろんな意味で、残りまくり。
自分の“こうありたい姿”も、よーく見えてくるのでありました。


★11/30(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「母の身終い」公式サイト
コメント (3)
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