ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ペコロスの母に会いに行く

2013-11-10 23:33:55 | は行

映画になってみて、この作品の伝えんとしていることが
初めて、ハッキリとわかった気がしました。


「ペコロスの母に会いに行く」72点★★★★


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団塊世代のゆういち(岩松了)は
東京から地元の長崎に戻り、サラリーマンをしている。

仕事の合間をぬって
漫画を描いたり、ミュージシャンとして喫茶店で歌ったり
けっこう勝手にやっているが

気がかりは
認知症が始まった母みつえ(赤木春恵)だ。

オレオレ詐欺に騙されそうになったり
最近は、目が離せなくなってきた。

自宅に来てくれているケアマネージャーは
介護施設を勧めるのだが――。

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過去といまをユラユラと行き来する
認知症の母を見つめる、60代の息子ペコロスの物語。


小さな玉ネギ“ペコロス”のような
ハゲ頭がトレードマークの
ペコロスこと岡野雄一氏のエッセイ漫画が基で、

『週刊朝日』にも連載されていて
気になってた作品でした。


ただ、漫画はほんわかした絵がよく
内容も微笑ましい時もあるんですが

オチらしきものがなかったり、
どう受け取っていいかわからないときもあった。


しかし、この映画を観て、
この作品が伝えんとしていることが
わかったというか、

この漫画の意味が初めて腑に落ちたんですねえ。


というのも
まず、ペコロス役の岩松了氏がピタリとハマっていて、

彼と母親の会話や、
脇を固める温水洋一氏や竹中直人との自然なやりとりや笑いに、
観ながら
肩の力がフッと抜けていくような気がしたんですわ。

深刻な状況を、まんま深刻になっていては
看る側も、看られる側も、きっと潰れてしまう。

ペコロスさんはその深刻さに呑まれず、
「ゆらりと交わすことこそ生きる術である」と
本能的に知っているような感じがあって

それを、同じような境遇の認知症患者のご家族や、
認知症の当人である母親にも
伝えよう、伝えたい、としてるんじゃないかな、と。


長崎のおだやかな環境、温かい日差し、
土地の言葉の温かさ、など
映像でこそ、感じられるものも大きいし

特に岩松さんは長崎出身だそうで
あのやわらかい方言がしっくりなじむのも
心地いい。

似た境遇にある人も、観ると
きっと心休められるのでは、と思います。


★11/16(土)から全国で公開。

「ペコロスの母に会いに行く」公式サイト
コメント (2)
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