ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

おじいちゃんの里帰り

2013-11-27 23:57:06 | あ行

予想どおりのあったかホームドラマだけど、
予想以上に笑えて、ジンと胸をつかれました。


「おじいちゃんの里帰り」76点★★★★


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1960年代半ば、
ドイツは労働力として
トルコから多くの移民を迎え入れた。

イズマル家の“おじいちゃん”(ヴェダット・エリンチン)も
当時ドイツに移住したトルコ人。

家族もドイツに呼び寄せ、
いまや三世代がすっかりドイツでの暮らしに溶け込んでいる。

が、
6歳の孫チェンク(ラファエル・コスーリス)は
小学校で「自分はドイツ人なのかトルコ人なのか?」と
考えこんだりもする。

そんななか
おじいちゃんがいきなり
「トルコに家を買った」と言い出して――?!

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ドイツに多くいるトルコ系移民の
ルーツと、いまを背景に
見事な家族ドラマに仕立てたなかなかの作品。

子役使いのうまさ
家族の個性の丁寧な描写、

そして
過去の話と現在の話を巧みにつなげる構成・・・など

セオリーをきちんと踏まえた
“確かさ”もよいんだけど

見事なのが笑いのセンス。

異文化ギャップや異世代交流を、
抜群のタイミングで「プッ」とさせるんですなあ。


宗教や民族の話を基盤に置きつつも
トゲトゲしさとは無縁で、
「ああ、見てよかったな」とつくづく思えます。


監督と脚本は
実際にドイツのトルコ系移民である
ヤセミン&ネスリン・サムデレリ姉妹。

自身らが体験したこと、
自分たちの家族の話でもあるわけだから
こんなにも
リアリティがあって、生き生きしてるんですね。


“トルコ”という土地に根ざした人の生き様というか
民族的な“どっしり度”みたいなものを感じたし、

それが、どこか
死に対する感覚にも共通しているんだな、というのが
興味深かった。

悲しみだけでなく
“つながってる”“そこにいる”感じがあるっていうんだろうか。
なんかいいな、と思いました。


そしてワシにとって嬉しかったのは
おなじみ『週刊朝日』(11/29号)の「ツウの一見」で
『トルコで私も考えた』シリーズの高橋由佳利さんに
お話を伺える機会をもらえたこと!(笑)


高橋さんならではの
“トルコのおじいちゃん”の見方、そして
“異国で生きていくこと”についてのお話も
すっごく参考になりました。


そうそう
宣伝ポスターにワシの推薦コメントが
載ってるかもしれませんぜ(笑)


★11/30(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「おじいちゃんの里帰り」公式サイト
コメント
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