goo blog サービス終了のお知らせ 

ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ツナグ

2012-10-02 23:24:58 | た行

いいのか、悪いのか
泣きませんでしたねえ。

「ツナグ」59点★★★


*******************

ごくフツーの高校生に見える
歩美(松坂桃李)。

だが彼は
死者と生者をつなぐことのできる
“ツナグ”と呼ばれる能力を持つ、一族の末裔。

いまは
祖母(樹木希林)から、その力を受け継ぐかを迷いながら
“ツナグ”の見習いをしている。

そんな彼のもとに
母に会いたいという男(遠藤憲一)や
親友に会いたい高校生(橋本愛)
失踪した恋人を7年も待ち続ける男(佐藤隆太)らが依頼にやってくるが――。

*******************


死者に会えるチャンスは一生に一度だけ。

しかもツナグが相手に
「ぽつおさんが会いたがってるんですけど、会いますか?」とお伺いを立てて、

相手が「会いたくない」と言えば会えないという
なかなかゾッとする(笑)ルールがミソ。

ファンタジーだ何だというより先に
さあ、自分なら誰に会うかな、
もったいなくて一生使わなそう、とか考えましたねえ。


この設定を「ばかばかしい」とか思わずに
すんなり、そう考えられたのは

「梅ちゃん先生」松坂桃李氏の実直そうな佇まいと、
祖母役の樹木希林さんのひょうひょう加減が醸し出す
不思議なリアリティのたまものでしょう。

“大切な人の死”という
重い素材を扱っているのに、

悲しみを煽るわけではないので
泣くこともなく、よくも悪くもサラッとしてました。

3つのエピソードのうち、
橋本愛の役と内容が重いだけに、
ほか二つはいまひとつな感じ。

佐藤隆太のエピソードとか
もっと展開できるでしょ?という
もったいなさもあった。

主人公の両親の死の理由も
すぐに見当がついてしまうしなア。
もうちょっと話が練られていてもいいですねえ。

あとテンポがゆっくりなのはいいんですが、
それゆえに長い、のは勘弁してほしい。

それでも
樹木希林さんの古布っぽい衣装や、
民藝感溢れる調度や、食器などが
いい味出してて好みでした。

なんか、続編ができそうな予感・・・。


★10/6(土)から全国で公開。

「ツナグ」公式サイト
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最終目的地

2012-10-01 20:43:09 | さ行

ジェームズ・アイヴォリー監督、久々に会心の作!


「最終目的地」77点★★★★

**********************

コロラド大の若き教員オマー(オマー・メトワリー)は
ある作家の伝記を書こうとする。

しかし、遺族に協力願いの手紙を出したところ
「お断りします」の返事。


押しの強いオマーの恋人は、
「遺族に直接お願いに行け」と、彼を南米ウルグアイに送り出す。

果たして、作家の屋敷で待っていたのは
作家の妻(ローラ・リニー)
作家の愛人(シャルロット・ゲンズブール)とその幼い娘

作家の兄(アンソニー・ホプキンス)
東洋人の青年(真田広之)の奇妙な暮らしだった――。

**********************

試写状やチラシの印象から想像してたのは、
もっと時代がかった重い話。
いやいや、まったくいい感じに裏切られました。

てかタイトルとともに、
「イメージ戦略間違ってるで賞」だよなア(笑)

久々に「眺めのよい部屋」時代を思わせる
よい作品でした。


南米独特の熱っぽい土地のなか、
作家の遺した広大な敷地で
4人の男女は過去に縛られ、土地に縛られ、
いわば自ら「かごの鳥」になっている。

しかし
一見フクザツに思える4人の関係だけど、

当人たちはそう気にもせず、
決して悲壮でもなく

そこでの生活には
どこかけだるいあきらめや、甘やかさがある。

まるで斜陽貴族のような。


と、そこに誠実でハンサムな
部外者の青年がやってきて、変化が起こる――という話なわけですが


なんといっても
登場人物の個性が実にうまく描かれ、
そのアンサンブルが素晴らしい。

人間の綾を巧みに織ってる、という感じ。

シャルロット・ゲンズブールの
折れそうに頼りなげな感じもいいけど、
いかにも“斜陽”なローラ・リニーがね、グッとくるんですよ。

A・ホプキンスの存在感はもとより
真田広之氏は佇まいも英語もしっくりくるしねえ。


それに意外に多くのカップルが
自然に倣っている“鉄板法則”
「人に頼られる人」「頼る人」の描きかたが絶妙なんです。


誠実だけど気弱な主人公と、
気の強いカノジョ、

そのカノジョをローラ・リニーがバッサリ斬る
セリフには思わず拍手が出ましたねえ。

ぜひお試しあれ~。


★10/6(土)からシネマート新宿ほか全国順次公開。

「最終目的地」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする