英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

横綱昇進の甘い基準

2017-01-23 21:05:40 | スポーツ
 稀勢の里の横綱昇進が決定したらしい。
 現役力士では一番好きであるし、今回の優勝はもちろん、横綱昇進も嬉しいことである。
 しかし、≪これでいいのかな?≫という思いが強い

 横綱昇進の規定(基準)は、横綱審議委員会内規によると
①「2場所連続優勝」
②「2場所連続優勝に準ずる成績」

 大関が、①または②の成績を上げると、日本相撲協会が横審委員会に諮問する。その諮問を受けて横綱審議委員会が審議し、出席委員の3分の2以上の賛成があれば、「是」の答申をする(①の場合は無条件で「是」となっているらしい)。
 その答申を受けて、相撲協会が臨時理事会を開き、横綱昇進について決議するが、この理事会の決議は形式的なもので、横綱審議委員会での答申が、事実上の「決定」となっている。
 過去に横綱審議会議に諮問されて、昇進を見送られたことは4度あるが、最近の風潮は「“諮問”=“昇進”」のような気もする。

 “優勝に準ずる成績”とはいわゆる“準優勝”で、優勝力士と同星でなくても良い。
 なので、極端な場合、11勝4敗や12勝3敗での準優勝を2場所続けても、横綱審議会へ諮問するかどうかの対象となるが、まず、諮問されることはない。
 このように、“優勝に準ずる成績”というのは甘いのだが、3横綱がいる場合は2場所連続優勝するのは相当困難であり、「2場所連続優勝」に限定するのは現実に即さない場合もある。「“1場所優勝+準優勝”以上」とするのはどうだろうか?


 さらに、「2連続“準”優勝」にも満たない成績でも、横綱に昇進した例もある。
柏戸……10勝5敗 11勝4敗 12勝3敗(優勝決定戦敗退)
栃ノ海…11勝4敗 14勝1敗(優勝) 13勝2敗
玉乃島…13勝2敗(優勝) 10勝5敗 13勝2敗(優勝決定戦敗退)
(昇進後「玉の海」に改称)

 栃ノ海は13勝2敗で準優勝に成らなかったのは不運。準優勝と認めてもいいような気がする。
 以前は審査対象が直前3場所まで広く、玉乃島はそれ以前に12勝3敗 12勝3敗 13勝2敗(優勝)の成績で諮問されたが、昇進を見送られた経緯と、その後も安定した成績や相撲を取り続けていたことを加味されたのと、北の富士との同時昇進の興行的理由もあった。
 柏戸は更に成績が劣っているが、これもやはり、大鵬との同時昇進の興行的理由からであろう(甘すぎるが)。 


 以前に比べて、現在は「2場所連続優勝に準ずる成績」をきちんと守られていて、特に旭富士~日馬富士の8横綱に関しては、すべて2場所連続優勝している。直近の鶴竜は14勝1敗(準優勝)、14勝1敗優勝の成績。

 しかし、この「2場所連続優勝(準優勝は認めない)」と限定しても、“横綱の資格”充分とは言い切れない。
 この「2場所連続優勝」を重視することになって、大関が優勝すると、翌場所は「横綱挑戦の場所」と見なされて、それ以前の成績は諮問対象外となってしまっている。
 最近では、豪栄道が全勝優勝したが、大関昇進後~優勝直前の場所の成績は99勝87敗(.532)。12場所中4場所負け越し、8勝7敗も5場所。9勝6敗が2場所。大関らしい成績を上げたのは12勝3敗の1場所のみで、大関の成績と言えるようなものではなく、「大関昇進を認めたことが間違いであった」と言っても良いほどであった。怪我のせいもあったが、張り手、首投げ、はたきと内容も悪かった。
 こんな豪栄道が、秋場所に全勝優勝した(押し相撲に徹し、内容も素晴らしかったが)とは言え、それだけで「綱取りの場所」としてしまうのは、あまりにも早計である。実際、その前の名古屋場所は7勝8敗と負け越している。
 また、鶴竜は14勝1敗(準優勝)14勝1敗(優勝)で、準優勝と言っても14勝しているので、直前2場所の成績としては申し分ないモノと言えたが、先場所の優勝までは、皆勤した12場所では127勝53敗で、1場所平均10.6勝、優勝1回(12勝3敗)、途中休場を含めると休場は3場所、さらに今場所も途中休場という体(てい)たらく!
 このように、2場所だけを諮問対象期間に限るのは非常に問題があり、甘いように見える3場所対象(あるいはそれ以上)玉乃島時代の方が横綱の資格をしっかり見極めていたように思える。

 今回の稀勢の里の場合はどうだろうか?
 実力も長期的成績も充分(年間最多勝)で、相撲も正攻法を貫いており、資格充分。
 しかし、優勝争いをするものの、ここ一番に弱く、全国の相撲ファンがこれまで何度ため息をついたことか……また、下位力士に取りこぼすことも多い。とにかく、ここ一番になると、動きがギクシャクしてしまう。今場所も、勝ちはしたが、慌ててしまったり、動きがばたついて、観ているものをヒヤヒヤさせた。
 直前の3場所の成績は、10勝5敗 12勝3敗(準優勝) 14勝1敗(優勝)で、内規の成績を満たしている。
 しかし、先場所終了後、相撲協会の誰かは失念したが、「先場所の準優勝は優勝した鶴竜に星2つ離れていて、来場所優勝したとしても、諮問はないだろう」という主旨のコメントをしている。それに、場所終盤に稀勢の里の優勝が現実味を帯びてくるまで、「横綱昇進」の声が上がっていなかったように思う(私が知らないだけかも)。
 しかも、今場所は、横綱日馬富士と鶴竜が途中休場。琴奨菊、照ノ富士が大不振。優勝争いに踏みとどまっていた豪栄道も怪我をして、なんと稀勢の里は13日目に不戦勝の星を得てしまった。直近2場所連敗していた栃の心も途中休場で対戦せずと運も味方した。白鵬も、一時の強さは陰を潜めている。

 なので、横綱昇進はもう一場所様子を見ても良かったのではないだろうか?


 それにしても、「全会一致」で10分間で終了って何だよ!(日馬富士の時もそうだった)
 審議していないだろう!異を唱える委員なし!

 有名無実………横綱審議委員会

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3 コメント

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お久しぶりです (zoran)
2017-01-28 17:59:20
英さん,こんにちは。

いつもながら詳しい解説と鋭い指摘には感服です。正直言って,あまり今の大相撲には興味がないので,個人的には「どっちでもいいわい」と思いますが,ご主張にはほぼ「同意」です。

ほとんど相撲は見ない,相撲関係の情報は,たまにニュース番組のスポーツコーナーから,という私には今回の横綱昇格話は突然感がありました。相撲関係者やファンの間では,ここ数場所継続していた話題だったのですか?とにかく協会もファンも「日本出身横綱」を一刻も早く誕生させたい一心だったのでしょうね。

私も英さんの提案「1場所優勝+準優勝以上」でもいいかな,とは思いますが,準優勝は「同星あるいは1勝差」の条件付きでは?と思います。

ところで,「巨人・大鵬・卵焼き」世代としては(年がバレる),柏戸が直前3場所1回も優勝せずに横綱になっていたとはびっくり。大関までに1回は優勝したことあったのでしょうか?

追伸:谷川会長辞任についてのコメントは出ますか?
返信する
ええ、そう思います ()
2017-01-28 20:46:14
zoranさん、こんばんは。 

 私も若貴時代から、関心が薄れ始め、モンゴル勢が台頭してきたころからは惰性で傍観しています。横綱を始め、相撲に品位がありませんし。
 今回の稀勢の里の横綱昇進は、仰る通り、“日本人横綱”が欲しかったからでしょう。場所終盤に、稀勢の里の優勝が現実にを帯びてきてから、急に浮上しました。私もニュースなどの情報しかありませんが、場所前、前半戦では横綱昇進は話題に上っていなかったと思います(本記事にも書きましたが、先場所終了後に「今場所優勝しても、横綱昇進はない」と協会役員が言っていましたし。

>準優勝は「同星あるいは1勝差」の条件付きでは?と思います。

 そうですね。同意します。

>「巨人・大鵬・卵焼き」

 初耳です……うそ。
 聞いたことがあります……これも、若者ぶっています。「懐かしい」に近い感覚です。

 柏戸は通算5回優勝していますが、大関時代にも1度優勝しています。
 大関昇進自体は直前3場所は、9–6、10–5、11–4でかなり疑問の残る昇進だったようですが、大関昇進後は、12–3、11–4、13–2、12–3、10–5、11–4、12–3と大関としては堂々たる成績だったようです。

>谷川会長辞任についてのコメントは出ますか?

 記事として書くか?という質問でしょうか?
 連盟全体の対応の残念さの記事を書くつもりではいます。書けば、当然「谷川会長について」という項は設けます。
 ただ、いつになるか?書くのか?という保証はできません。
返信する
補足です ()
2017-01-28 23:47:52
zoranさんの質問に、きちんと対応していなかったレスになってしまっていました。

>相撲関係者やファンの間では,ここ数場所継続していた話題だったのですか?

 年間最多勝を取る成績で初場所前の5場所は13–2、13–2、12–3、10–5、12–3と、横綱昇進まであと一歩で、ほぼ毎場所のように、優勝と横綱昇進の期待がかけられていました。
 先場所は早めに2敗してダメかと思われたのですが、3人の横綱を立て続けに破り、おお!と思ったら、13日目に平幕の栃ノ心に敗れ3敗目を喫してしまい、会場中にため息が溢れました。
 ここ1年は、そういう状況でした。
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