英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『相棒 eleven』 最終回2時間スペシャル「酒壺の蛇」

2013-03-21 23:24:26 | ドラマ・映画
怖い二人の女  ~鋭い女と愚かな女
「突然の夫の死で、心神喪失に陥り、夫の事故死(中毒死)が受け入れられない女」ではなく、夫がキノコ鍋をするはずがないと確信しており、夫が電話をかけていた相手を、その話し方で女性と断定、しかも何時何分まで覚えているという「鋭すぎる女」であった。
 ある意味、それだけ妻に理解され愛されていたのだろう。

そして、今回の主役の女性……
 恋に狂い、難しいことを考えることを放棄した女、だが、芝居(嘘)は上手
 最初、恩地刑事のことを全く知らないふり(実は毒殺していた)をして、特命係に追及されると騙されていた女のふりをした(騙されていることを許容し、とにかく彼の役に立ちたかった)。

 彼がスパイであることに気づいても、そのことには目を瞑り、彼の愛を得るために殺人まで犯す。
 彼がスパイであり、何をしようとしているか、それがどういう意味を持っているのか、殺人をすることの善悪も考えず、さらに、彼を逃がすため右京や享まで危害を与えることに加担する。
 彼が悪人であろうと、他人が命を落とそうが関係ない。難しいことを考えることを放棄した愚かな女。彼の愛が得られさえすれば良いという自分本位の女
 人を毒殺したというのに、享の彼女・悦子とも楽しそうに話していた……怖ろしい女


 正直、展開がまだるっこしくて、この女に嫌悪感が増し続けるストーリーで嫌な気分に陥っていた。しかも、打算だけの男の横槍でその気分はさらに増していたが、

王がいずみに宛てた手紙を読んで非常にすっきりした。

突然の帰国命令が出た。
理由は分からない。
私の国はそういう国だ。
だから私は難しいことは考えない。
私の国では難しいことを考えてはいけないのだ。
しかし、君は難しいことを考えてもいい国にいる。
分からなければ調べてもいい国にいる。
調べる手段がいくらでもある国にいる。
だが、君は私との愛があれば、
難しいことは分からなくていいと言った
難しいことを考えられる幸福より
愛に溺れる快楽を選んだ
そんな君を、私は心の底から愚かだと思う
そんな君を、私はずっと嫌いだった
これからも、ずっと嫌いだ


そもそも、
難しいことを考えることを放棄したと言っているが
「人を殺してはいけない」ということは、簡単な道理である。


右京は
「まるで恋文のようでしたねえ。本来ならば、残さなくてもよい手紙です。王はもう、東国に着いたころでしょうかねえ」
と言っている。
 これは、「彼女に自分のことを愛しても無駄だ」と告げた。彼の優しさであるという意味なのか。
 それとも、「愚か」とか「嫌いだ」というのは、うら返しの表現で「うらやましい」「愛している」と言っているのだろうか?

しかし、王の手紙は、日本人に向けて言っているような気がしてしまう


今回のもう一人の主役は
打算だけの男・甲斐峯秋!
「領空内誘導がどれだけの人に迷惑を掛けるか分かるかね。国交省、空港、航空会社、乗客…」
「君は本気で東国の外交官を逮捕できると思っていたのかね……では逮捕できたとして、今の検察、いや日本政府に起訴できると思うかね。どうせ東国に脅されタダで返してしまうのがオチだ。そんなこと、今までに何度もあったでしょ。どうせ返すのなら、少しはメリットがないとね」

「私が捜査機関に連絡しなかったのは、逮捕する気がなかったからです」
(「逮捕する気がなかったって、殺人の容疑者ですが」(内村))
「その代わり、アメリカの捜査機関からは感謝されました」
「これは総理も知らない警察庁とCIAの取引なんですから」

(「それを自殺に偽装した共犯者がいないと、裁判で辻褄が合わなくなります」(内村))
「共犯者ならいるでしょ。金目当てで工作員に情報を流した挙句、勝手に追い詰められて自殺したみじめな国賊が。…捨て駒をうまく使って、取調べ調書とマスコミへの広報案文を考えてください。何か質問はありますか?」


 これには、立ち回りの名人・内村刑事部長も立ち去るのみだった
 それにしても、この峯秋が誕生日に一人で和菓子を食べるのを寂しがった人とは思えない

 打算男・甲斐峯秋に対し、ちくりちくりと
「ほう、もう全体像が見えているのかね?」
「全体像は、あなたがご自身の権力を強めるために、犯罪者を国外へ逃したということです」

「ご子息は、あなたのような方が、この先も決して手に入れることのできないものを既にお持ちです」

「君の言わんとしていることは、何となくだが、わかる。だが、そんなもん、我々のような人間には必要かね?」
「警察官にとって、一番必要なものだと僕は思っています」


享が持っているという警察官にとって一番必要なものとは?
 悦子がその答えを言った。
「(享は)自分のことより、人の幸せを一番に考える人だもの」

さて、その相棒・享だが
右京の最終手段、領空内誘導を峯秋に誘導されて(カマを掛けられて)、感づかれてしまうという失態。
それは良いが、ばれたことを全く気付かず、後に落ち込む。いや、普通、あの瞬間に気づくと思うが、これまで、右京の助手として手腕を振るってきた彼なら。

右京に、これまでの自分の未熟さを告白し詫びるが、今シリーズでは、ずっと出来のいい助手で、未熟さや右京に反発するシーンが描かれてこなかったので、空々しさを感じた。


小道具と化した悦子
 悦子がある意味大活躍!
 犯人のいずみが後輩で、しかも会ったばかりという偶然。いずみの情報を提供した。
 茨城空港で王と遭遇。彼の手紙を託された。
 話(捜査)をスムーズに進める役割だった。

そう言えば、
王はいずみに手紙を残したが、右京たちもろとも、いずみを始末(爆破)しようとしたが、この二つの行為は、矛盾している。 


【非常に細かいことだけど】
・王の手紙、文章に起こす時に詳しく見たが、最初の方は句点が打ってあったのに、手紙の最後の方は句点がなかった
 
・公園に人目のつかないところがあるのは、困ります。



【ストーリー】番組サイトより
 角田(山西惇)と同期で組対二課・課長の恩地の遺体が自宅から発見された。現場の状況から毒キノコを誤って食べた事故死と思われた。警察の幹部が毒キノコを誤食したという前代未聞の事態に大河内監察官(神保悟志)の指示のもと、特別に司法解剖も行われるが怪しい点は発見できず事故死として処理されてしまう。

 右京(水谷豊)と享(成宮寛貴)は、恩地の妻・由美子の証言から、最近恩地が炭素繊維を扱う企業の女性とこっそり電話をしていたことを知る。さっそくその企業を訪ねた右京と享は、恩地の携帯電話の履歴に残された電話番号が我孫子という人物の所属する部署であることを確認。その部署の女性社員はいずみ(星野真里)一人だけであることを掴む。

 いずみから話を聞こうとした右京と享だが、なぜか携帯は通じず、会社を訪ねても留守ばかり。いずみが偶然にもCA養成スクールで悦子(真飛聖)と顔見知りだったこと知り、享は悦子にいずみと一緒に食事をする約束を取ってもらい、そこに向かうのだが…。
 一方、右京は同行せず、いずみと連絡がつかないことに不審を抱き一人で別行動し、待ち伏せ。するといとも簡単に会うことができ、ようやくいずみから話を聞くことに成功。しかし、いずみは恩地のことは知らないと証言。悦子の話では、いずみは近々結婚の予定があると言っており、相手はアドリア大使館勤務の井川という日本人男性だという。

 恩地が、輸出制限されている炭素繊維を国外に持ち出した外為法違反容疑の捜査を単独で行っていたことがわかった。その容疑がかけられた企業の一つが我孫子やいずみの勤務する会社。ということは、恩地は我孫子といずみに接触していた可能性が高い。さらにいずみの婚約者・井川が、アドリア大使館には存在しないことがわかり…。

 一人の刑事の死から日本企業の違法行為を暴いていく右京と享。そして、容疑者へとたどりつくが、思わぬ“敵”に事件は二転三転。はたして正義の裁きは下されるのか?

ゲスト: 星野真里 田中圭

脚本:櫻井武晴
監督:和泉聖治

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言い得て妙 ()
2013-03-30 13:02:10
かみしろさん、こんにちは。

>「日本は空気という独裁者に支配されている」

という表現は、言い得て妙です。

>「自分の頭で考えること」による不利益
>日本人は「自分の頭で考える」ことを支持しない

 なるほどです。
 これは現代の情報過多の状況も一因だと思います。
 ある大きな事件(大きくなくても興味を呼ぶ事件)が起きると、事細かに図解(CG)などを用いて、キャスターやコメンテーターや解説者が意見を言います。
 親切なようで、これによって視聴者は自分で考える必要がなくなります。
 さらに、民放の報道番組においては、視聴率が取れそうな事件を大きく扱い、それらの解説やコメントも視聴者の意に沿うようなものを主流にします。
 原発事故、たとえばナトリウム漏れ事故など、大惨事に発展する可能性があった深刻な事故でも、多くの視聴者は関係ないと思っていますから、それを真っ向から大々的に報道しても視聴率は取れないと考え、流す程度の報道になったと思われます。もしかしたら、政府からの圧力もあったかもしれません。
 私が、過去に一番がっかりしたのは、「郵政民営化」というスローガンを隠れ蓑に他の政策はうやむやにして、自民党大勝になった選挙です。

>強大な支配者ですよ、日本の空気というものは。

そうですね。
返信する
自分の頭で考えたことなどない日本人 (かみしろ)
2013-03-30 01:58:38
先日『日本が世界一「貧しい」国である件について』という本を読んだのですが、その中に「日本は空気という独裁者に支配されている」という章がありました。
空気には逆らわず思考停止する、即ち自分の頭で考えないということですが、であるとしたら、日本は恐らくその歴史の殆どを空気が支配していた筈で、確かに、自分の頭で考えず(空気に逆らわず)にいた方が、メリットの大きい社会を延々と続けてきた訳です。
なんというか、個人的にとても納得できるんですよね。

先日両親と、NHKの原発事故に関するドキュメントの再放送を見ていたのですが、
「こんなこと普通に暮らしている我々には全く知る機会がなかった」
と父が口にして、私は唖然としました。
私は原発に反対して二十年以上、両親にも二度や三度はその番組内容と同様のことを、言ったのですよ。
情けなかったです。自分が本当にどれだけ無力であるか突きつけられました。そして今までに何度も感じたことですが、改めて敵(日本の空気であるとも言えます)の強大さに打ちのめされそうになりました。
日本に於いて「自分の頭で考える」ことは、社会人(大人)にとって様々な不利益をもたらします。
正確に言えば「考えて、実行すること」ですね。意見を言うだけでも相当に変人扱いされて幾分かの不利益を受けますが、行動に移せばそれは容易に職を失うことにつながる。NHKのアナウンサーが先日そうなりました。
そうそう簡単に、日本人は「自分の頭で考える」ことを支持しないです。先の大戦で本土決戦でもやって、民間人が数千万単位で死んでいれば、或いはその切っ掛けになったかもしれません。というくらいに、強大な支配者ですよ、日本の空気というものは。
返信する
場当たりな親子のキャラ ()
2013-03-23 11:05:53
かみしろさん、こんにちは。

>今シリーズ設定を活かす気があるのかね? と思っていましたが、一応そうしたようです。やり方がちょっと下手すぎます。もっと親父を絡めてちゃんと伏線張っておかなかったので、唐突で白々しくなってしまった。
>しかも、前回まで僅かに登場した峯秋の印象と、今回の印象がかなり違う。
>今シリーズの脚本は全体的に未熟で、描きたいキャラクターが描けておらず

 ええ、甲斐親子は場当たり的なキャラ設定でしたし、右京も右京らしくありませんでした。
 荒くて浅いシリーズで、「面白いものを作る」のではなく「面白そうなものを作る(作っている)」印象を受けます。

>回想シーンが初回のみだったように思います

「バーター」のシーンがありました。石丸謙二郎さんがゲストで警察OBの天下りに航空会社が絡んでいた話です。

>手紙としては、「忘れろ」と憎まれるように仕向けたものでしょう。
>実際の心情としては、女を愛してもいたでしょうし、自分は愚かではないかもしれないが、卑怯であり、女の愚かさを責める立場にないことはわかっていたでしょう。

 私もそう思います。あと、本文でも書きましたが、現代日本人へのメッセージで、脚本家はこのメッセージを送りたくて、これを中心に話を組み立てたような気がします。
 あと、手紙を読んで彼女は泣いていましたが、この手紙をどう受け取ったのでしょうか?なにしろ、難しいことを考えない愚かな女ですから、どこまで、読みとれたか、読みとる気があったか、謎です。
返信する
2~18回とは別 (かみしろ)
2013-03-22 21:53:02
今シリーズの相棒は、初回および最終話と、その間の回は非常に似た、しかし完全一致ではないパラレルワールドの話でした。
勿論皮肉です。
もしかして、最終話まで甲斐峯秋のキャラクターを決定していなかったのではないでしょうか?

>右京に、これまでの自分の未熟さを告白し詫びるが、今シリーズでは、ずっと出来のいい助手で、未熟さや右京に反発するシーンが描かれてこなかったので、空々しさを感じた。

回想シーンが初回のみだったように思います。
今シリーズ設定を活かす気があるのかね? と思っていましたが、一応そうしたようです。やり方がちょっと下手すぎます。もっと親父を絡めてちゃんと伏線張っておかなかったので、唐突で白々しくなってしまった。
しかも、前回まで僅かに登場した峯秋の印象と、今回の印象がかなり違う。

>「(享は)自分のことより、人の幸せを一番に考える人だもの」

亨に対して、こういうイメージもあまりない。正義感を感じさせたり、不条理に反発する純粋さはある程度描かれていたように思うが、「人の幸せを一番に考える」という言葉は個人的に違和感がある。現代日本で、ああいう父親を持ち警察官をやって30年近く「人の幸せを一番に考え」て生きてきた人間としては単純で無知だろう。

>これは、「彼女に自分のことを愛しても無駄だ」と告げた。彼の優しさであるという意味なのか。
 それとも、「愚か」とか「嫌いだ」というのは、うら返しの表現で「うらやましい」「愛している」と言っているのだろうか?

手紙としては、「忘れろ」と憎まれるように仕向けたものでしょう。
実際の心情としては、女を愛してもいたでしょうし、自分は愚かではないかもしれないが、卑怯であり、女の愚かさを責める立場にないことはわかっていたでしょう。

今シリーズの脚本は全体的に未熟で、描きたいキャラクターが描けておらず、恐らくメインの主張にしたかったであろう
「警察官(人間)として純粋さや他人の幸せを一番に考えることはとても大事」
というメッセージがとても虚しく響いてしまいました。
残念です。
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