英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2022年度 順位戦B級1組 千田七段-羽生九段  ~やっぱり、夕食休憩を挟んでの長考はロクなことがない…~

2023-01-14 11:09:52 | 将棋
“夕食休憩を挟んでの長考はロクなことがない”
羽生九段の将棋を観戦していて、常々感じる実感である。


 中盤の入り口で、羽生九段の4七の“と金”が残る展開となり、羽生九段が優勢となった。見た目的に“と金”の存在が大きく、《これはいけそう》《楽勝か?》とウキウキ状態だった。
 その後も羽生九段優勢で推移し、午後5時16分に千田九段の39手目▲8二歩が指された。桂取りだが、この手を放置して攻め合う手や△8二同飛と応じる手など4手ぐらい候補手があったが、どれも羽生九段に利がありそう。
 夕食休憩まで44分で、羽生九段の残り時間は3時間5分あり(千田七段は2時間20分)、候補手も多いことから、夕休までは指さないだろうと思った。普通は腰を落として勝利に近づく一着を読み切る……となるのだが、私は嫌な予感しかしなかった。これまで、形勢嘉の局面から夕食休憩を挟んでの長考後の一着は、疑問手や悪手が多く、形勢をおかしくして、敗局というパターンを何度も観てきたからだ。

 休憩再開後もしばらく考えるかなと思ったが、再開直後、△8二同銀。“ない手”ではないが、玉の守りに利いていた銀をソッポに行かせる手で、所謂(いわゆる)“利かされた手”だ。正直、《この手はないだろう》と思っていた手だ。実際、形勢は互角になったようだ。
 △8二同銀に▲5五飛とされ、居玉の後手玉に対し、”5三の成桂+5五の飛車”が大きな脅威となった。飛車の利きを緩和する△5二歩に対し、千田七段は▲7二角!…タダだが、△7二同金と取ると▲5二成桂の一手詰。総攻撃を受け、一気に危機の後手玉(形勢は互角)。
 ▲5五飛と指されて、羽生九段は△5二歩に20分考えている。▲5五飛は自然の指し手なので、ここで改めて20分考えるのはおかしい。夕食休憩前の44分+休憩時間(夕食を摂るとは言え40分の間がある)なら、▲5五飛は想定していたはず。何か、誤算があったのだろうか?
 ここで20分考えるのなら、《対局再開後も読みを入れろよ》と勝手なことを考えていた。

 この後も難解な攻防が続いたが、午後11時5分、羽生九段の投了となった。
 残念だったのは、終盤▲6二金と打たれた局面。(部分図です)

 △6二同玉は▲6二同龍の一手詰なので、△8二玉か△8三玉しかなく、選択か難しい。
『△8二玉は▲7一金から▲6二竜の王手が生じる。△8三玉は▲7一金から▲6四竜が詰めろ(△6四同歩に▲8四飛△9二玉▲8一飛成まで)』【名人戦棋譜速報・解説より】

 羽生九段、△8三玉。
 第一感は△8三玉だが、この手で敗勢に。
 △8三玉に▲7一金と進む。この局面は後手玉に詰めろは掛かっていないが、▲6四竜(←王手ではない)△同歩▲8四飛△9二玉▲8一飛成の詰みがある。肝心なのは、《銀を使わなくとも後手玉が詰む》こと。なので、後手からの△3六角などの攻めに対して、銀を使って受けることができる。
 対して、△8二玉なら後手玉を詰ますには銀が必要で、△3六角とされた時に銀を使ってしまうと、後手玉を詰ますのが遠くなってしまう。
 おそらく、△8二玉でも少し後手が苦しい気がするが、2分で△8三玉と指したのは浅慮と言わざるを得ない(54分残っていた)



 これで、順位戦は4勝6敗となった。ランキングが1位なので、成績は8位。下位には4勝6敗の屋敷九段(ランク4位)、横山七段(8位)、久保九段(10位)、3勝8敗の丸山九段(13位)、2勝8敗の郷田九段(7位)がいる。(丸山九段の降級は決定、ランク7位の郷田九段は残り2局に勝てば、横山七段(8位)、久保九段(10位)が連敗した場合、二人の上位になる)
 とは言え、勝ち星1つですぐ逆転してしまうので、“首筋が涼しい”状況。次戦の横山七段に勝てば残留が決定するが、負けるとかなり“寒く”なる。残り2局に連敗しても残留の目はあるが、次局に敗れた場合、最終局は勝たないと陥落してしまう可能性が高い。
 最終局云々より、次局に勝利して安心したい。


 温泉気分だったのに……夕食休憩を挟んでの長考(夕食前の長考)はロクなことがない……
コメント (2)
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