英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『99.9-刑事専門弁護士- SEASON Ⅱ』 第9話(最終話SP)

2018-03-19 23:28:47 | ドラマ・映画
“ラスボス”、川上裁判長(笑福亭鶴瓶)
 公正な判決をした為、左遷された過去がある。
 その後は、自分の正義より組織を重んじるようになり、“ええ判決(良い判決)”をすることに心がけているらしい。

「司法への信頼が第一」と言い切るが…
 それを大義名分にして、被告や自身の正義から目を背ける深山(松本潤)が批判する裁判官そのものである。
“深山が批判する裁判官とは
≪裁判官は引かれたレールの上で裁判を進めるだけ≫で良いという思想
 ………検察の意図を汲み取り、それに沿った判決を下す
 ………法廷に提出された証拠、証言のみで判断し妥当な判決を下す(この“妥当”は“適当”に意味に近い)
 ………迅速に案件を処理するのを優先


心が揺れる川上
 再審開始をせざるを得ない証拠(真犯人の提示)を深山達から突きつけられる川上。
 さらに、斑目(岸部一徳)、尾崎(木村文乃)、深山(松本潤)、佐田(香川照之)から波状攻撃を受ける。
 再審請求に対する判断を下す直前に、法廷に入り、裁判官席ではなく被告席に独りで立つ川上の姿があった。

この川上の正義を喚起させる深山達の語りかけ・問いかけは、今シリーズのテーマであり、不可欠のように思えるが、川上の人格を考慮すると無かった方が良いような気もする。
 “決定的な証拠、そして、証拠提示に至る深山達の行為と“真実を追求する”信条、警察・検察の杜撰な捜査による冤罪の可能性などを突きつけられ、川上の胸の奥に追いやられていた正義がもたげてきた”と考えたい。
 深山達にダメを押されなくとも、自らの理念に基づき決断を下す川上であって欲しかった。『被告席に一人たたずむ川上のシーン』だけで良かった。



再審決定、そして無罪に
 無罪の判決を出した際、捜査の杜撰さと裁判官の真相を見抜けなかったことを裁判官を代表する形で、被告に謝罪した。
 裁判所が謝罪することになり、目の上のたんこぶである検事総長(榎木孝明)らを糾弾し、追い落とすことができた。
 それが川上の狙いだったと疑念を抱く斑目や尾崎たち……

 再審の決定を下した時は、純粋に裁判官の責務を果たそうとしたと考えたい。
 あの謝罪は狙ったものだろうけれど。



99.9%への心配―――――
 “日本の刑事事件における裁判有罪率99.9%である”という事実は、先にも述べたが、検察が描いたレールに都合のよい証拠だけを提出するなどの検察側の有利さ、更に、検察のシナリオを裁判官が忖度し裁判を誘導、判決を下すという状況に起因しているとドラマでは危惧している。
 しかし、この効率はそれが原因のすべてでないように思われる。
 “勝てない事件(容疑者)は起訴しない”という現状も要因である。事案が多いので立件を絞る必要性もあり、致し方ない面もあるが、立件して敗訴した場合の検察の“面目潰れ”を気にして立件しない場合も多いと聞く。
 ということは、そのメンツを気にして不起訴にして、犯罪者を解き放ってしまう危険性も高いのではないだろうか?



【事件の検証・無罪の立証のポイント】
①被告が購入した灯油の量と時刻

 防犯カメラの映像と灯油の販売データから、検察は被告が購入した灯油の量と時刻を断定したが、防犯カメラの時刻が狂っていた。
 防犯カメラに映っていたテレビ画像から真の時刻を立証したのは面白かった。
②火災現場の写真の検証
 “燃え残ったはっぴ型白衣”(佐田の着眼)と“ボウルに残った黒焦げの物体”(深山の着眼)に疑問をもち、検証。
 佐田の発見は空振りだったが、黒焦げの正体は天かすが自然発火したものと判明。(この事例って最近の夕方の報道番組で取り上げていたなあ)
 被害者(被告の妻)は天かす発火による一酸化中毒により意識が混濁し倒れ、その際、頭を打撲したものと推測。資源回収の雑誌の束だけが火元ではなかった。
 ≪では、既に発火していたのに、雑誌の束に火をつけたのか?≫⇒≪放火犯は都合の悪い何かを燃やして処分したかった≫
③事件当時の証言の検証
 現場の火事を再現し、事件当時の居合わせた者の中に再現実験と矛盾する証言をしていた中学校教師が真犯人と断定。
(≪雑誌の表紙はすぐ燃えてしまうので、週刊バイブスが燃えていたと確認するのは不可能≫、≪“炎は背丈より少し高い程度”という証言だが実際はもっと燃え上がり2階の住人を救出するのは困難)
④犯人が燃やしたかったもの
 赴任していた中学校の女生徒の体操服(盗品)。
 コソ泥にそれをネタに強請られていた。既に死亡していたコソ泥の遺品のガラ系携帯電話に体操服の画像データが残されていた。


 ≪事件の関係者の行動や現場を再現し、詳細に検証する≫
 そのことによってこれまで見えなかった真実(このドラマでは“事実”と表現)が見えてくる。
 少しでも妙と感じたことを掘り下げて考察するのも大切。

例えば……
……≪“15リットル購入した灯油を10リットル使用して5リットル残っていた”というが、きっちり10リットル撒くのは不可能に近い≫
……≪防犯カメラの画像の店員のポーズが奇妙、何故だろう?≫

 このドラマのこういった検証シーンは非常に面白かった


【疑問点や不満点】
・捜査の杜撰さは弁護士が主役なので許容するが、杜撰過ぎると感じたこともしばしばあった
・小ネタの多さも目をを瞑りたいが、プロレスファンには申し訳ないが、プロレスネタはちょっと勘弁して欲しいと思うことが多かった
・わざと会話を寸断するのをギャグとして多用していたが、イライラしてストレスが溜まった
・最終話、佐田の計算高さがスクープされ、依頼人に激怒されたが、依頼人としては、被告の無実を証明するのが第一であり、解任するのは怒り過ぎ。不信感を抱くぐらいが普通であろう。


 ラストの方で、握手を求める尾崎に“ごめんなさい”する深山、小学生のように佐田をからかう深山、Queenの『We will we will rock you 』(ドッドッパ♪)から『ドンパン節』(どんぱんぱん)に変調する小ネタは面白かった。




第1話第2話第3話第4話第5話第6話第7話第8話

【ストーリー】番組サイトより
 深山(松本潤)たちのもとに、死刑囚・久世貴弘(小林隆)の再審請求の依頼がきた。
 依頼人は、久世の息子・亮平(中島裕翔)。久世は8年前に妻を殺害後、放火したとして「建造物放火及び殺人罪」で死刑判決を受けていたが、息子の亮平は「両親は仲が良く、父が母を殺すわけがない」と言い切っていた。深山と舞子(木村文乃)は、自分自身の経験もあり、久世の無実を立証するために調査に乗り出すことに。
 しかし、再審請求は『開かずの扉』と呼ばれるだけあって、一度最高裁で結審した判決を覆すことはほぼ不可能に近く、苦戦を強いられる。その上、再審請求を審理する裁判長に川上(笑福亭鶴瓶)が就任する。久世の無実を立証すべく奮闘する深山たちに辛酸をなめさせられ裁判所内で後がない川上は、建前では公平に審議するためと言いつつ、深山たちに無理難題を押しつけるのだった。
 佐田(香川照之)はマスコミ介し世論にアピールすることで、審議を有利に進めようとするが、反対に都合が悪いことを週刊誌に書かれてしまい、依頼人である亮平たちからの信頼を裏切ってしまう…。

 0.1%の可能性さえも潰されつつある中、深山たちは事実にたどり着き、『開かずの扉』をこじ開けることができるのか!?

脚本:宇田学
演出:木村ひさし
トリック監修:蒔田光治
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