第72期名人戦七番勝負(森内俊之名人 対 羽生善治三冠)第1局は、羽生三冠が先勝。
僚友のnanaponさん(『即席の足跡』)とssayさん(『weblog』)には先(「名人戦第一局」、「第72期名人戦七番勝負第1局」)を越されてしまいました。
私も、一日目終了後に一応記事「名人戦が開幕…いろいろあり、いろいろ思う」は書いてはいますが、日記のようなものです。
以前から、お二人は素晴らしい人物だとは思っていました。人格はもちろん、見識の広さ、考察の深さも相当なものです。(と、持ち上げておけば、何かと見返りがありそう……)
それはともかく、おふたりの上記の記事を読み、改めて、素晴らしい人だなあと思いました。
ssayさんが「期待に違わない、素晴らしい戦いであった。将棋ファンでよかったと、心から思える」と記事を締めくくり、それを読んだnanaponさんも「二人の創り出す新鮮かつ熱さに満ちた熱戦をどんだけ長いことハラハラドキドキさせてもらったことか。ssayさんに先に言われてしまったけど、本当に将棋ファンでいてよかったと思わせてくれる一局でした。こんな戦いがまだまだ見られるのかと思うと桜は散ってもワクワクする春はまだまだ続きます」と述べています。
御二方は熱戦を観戦して「将棋ファンで良かった」と感慨にふけっています。
この御二方に比べて、私は……。
確かに、森内名人、羽生三冠が十二分に持ち味を発揮した大熱戦でした。
私は前記事のコメント欄で、たまもさんへのレスで
「何回か突破口を作りかけたのですが、そのたびに修復され壁を作られてしまいました。
終盤、何とか森内玉の影を捉えかけましたが、なかなか捉えきれませんでした。
名人戦棋譜速報を観ていて…観ているだけでしたが、力が入り、「森内名人、投了」の文字を見て、やっと脱力。クタクタです。
対局者の精神力の凄さに感服です」
と述べていますが、Stanleyさんの「第2局以降も熱戦を期待しています」に対し
「内容は二の次で、勝ちさえすればいいです。それも4連勝がいいです」
と歪んだレスをしています。
将棋の内容は凄まじく密度の濃い名局でした。
印象に残る局面を2、3取り上げて、感想を述べようと思い、図面を作りました……でも、≪この局面は必須だな≫≪この局面も外せない≫≪あぁこれも…これも…≫……結局、ああ、いつものパターンに……
ともかく、せっかく作った図面なので、全部載せて、その時の私の思考を記したいと思います(解説ではありません)
げっ!何をしているんだ?
森内名人の強気に、最強の手で切り返す羽生三冠。
以下飛車角交換後の△6六角には▲6七飛と飛車を自陣に打つしかなさそう。後手だけ角を手持ちにしているし、「序盤は飛車より角」と言うし、先手は苦労しそうだ。
後手の角の脅威を減らすため自ら飛先を止める辛い歩打ち。
後手の主張が通った局面だが、将棋が長引けば、バラバラではあるが前び出ている金銀をまとめれば、先手に全面的に制圧される危険性もある。
桂跳ねを防ぐため、さらに飛先に歩を打つ先手。言うがままという先手であるが、どこかで後手が先手陣を切り裂かなければジワジワ抑え込まれそう。端桂の弱点も気になる。
無理やり先手陣をこじ開けた。
何とか、戦いを起こせ、これは行けるぞ!
更に、斬り込む羽生三冠。△6六角と先手陣を切り崩せそうだが、先手の飛車が7二の金を狙っていて、▲6七銀に△7七歩と打つしかなく、▲5八飛と進むと、後手の攻めが食い止められてしまうぞ(実際もそう進行)。
図の△7六歩では△8五歩も有力だったようだ。
▲4八玉~3八金と陣形を整備された。現局面が後手が不利だとは思えないが、このまま、戦いを起こせず、自陣の整備合戦になると、後手は有効な手が5、6手しかない。しかもあまり固くならない。対して、先手には20手ぐらい有効手がありそうで、どんどん先手陣が良くなっていきそう。
渡辺二冠は「ここは1手、△4二銀と形を整えて、それから、いろいろと手を繰り出していきたい」というような解説をしていたが、ここで仕掛けないと手にならないと見たのだろう。羽生三冠は△3五歩と仕掛けた。
仕掛けたが、あまり有効な感触がない。
どうする?と心配していたら、△5五金、こんな手で大丈夫なのか?
森内名人の▲5六金の強い受けにほとんど時間を使わず、△3五角行!
角金交換の駒損にはなるが、先手陣を斬り込めそうな感触だ。行ける…かな?
決めに行った!
少し過激すぎるのでは?
決まったか?
しかし、そんな簡単なものではなかった。
▲4四桂△同歩▲2五角の筋で後手の攻め駒を1枚外され、飛車を取ったものの、後手の攻め駒は飛車と成銀だけ、持駒も歩しかない。香車を拾っても攻め駒は3.5枚(歩は0.5枚とカウント)。大丈夫なのか?
反撃されたぞ!「攻撃は最大の防御なり」とも言う。それとも、苦し紛れか?
先手の8一の銀が効率が悪いので、後手玉は残せそうだ。
▲3六香に△3四歩と受けたが、構わず▲同香と取られてしまった。……げっ!△3四同金だと▲6一角打があるじゃん!
取らずに△3三歩だと詰んじゃうし、△3三金直もやられそう。
……あ、そうか、金を取らせて△4三金打と固めればいいのか。
やっと……勝てた。
僚友のnanaponさん(『即席の足跡』)とssayさん(『weblog』)には先(「名人戦第一局」、「第72期名人戦七番勝負第1局」)を越されてしまいました。
私も、一日目終了後に一応記事「名人戦が開幕…いろいろあり、いろいろ思う」は書いてはいますが、日記のようなものです。
以前から、お二人は素晴らしい人物だとは思っていました。人格はもちろん、見識の広さ、考察の深さも相当なものです。(と、持ち上げておけば、何かと見返りがありそう……)
それはともかく、おふたりの上記の記事を読み、改めて、素晴らしい人だなあと思いました。
ssayさんが「期待に違わない、素晴らしい戦いであった。将棋ファンでよかったと、心から思える」と記事を締めくくり、それを読んだnanaponさんも「二人の創り出す新鮮かつ熱さに満ちた熱戦をどんだけ長いことハラハラドキドキさせてもらったことか。ssayさんに先に言われてしまったけど、本当に将棋ファンでいてよかったと思わせてくれる一局でした。こんな戦いがまだまだ見られるのかと思うと桜は散ってもワクワクする春はまだまだ続きます」と述べています。
御二方は熱戦を観戦して「将棋ファンで良かった」と感慨にふけっています。
この御二方に比べて、私は……。
確かに、森内名人、羽生三冠が十二分に持ち味を発揮した大熱戦でした。
私は前記事のコメント欄で、たまもさんへのレスで
「何回か突破口を作りかけたのですが、そのたびに修復され壁を作られてしまいました。
終盤、何とか森内玉の影を捉えかけましたが、なかなか捉えきれませんでした。
名人戦棋譜速報を観ていて…観ているだけでしたが、力が入り、「森内名人、投了」の文字を見て、やっと脱力。クタクタです。
対局者の精神力の凄さに感服です」
と述べていますが、Stanleyさんの「第2局以降も熱戦を期待しています」に対し
「内容は二の次で、勝ちさえすればいいです。それも4連勝がいいです」
と歪んだレスをしています。
将棋の内容は凄まじく密度の濃い名局でした。
印象に残る局面を2、3取り上げて、感想を述べようと思い、図面を作りました……でも、≪この局面は必須だな≫≪この局面も外せない≫≪あぁこれも…これも…≫……結局、ああ、いつものパターンに……
ともかく、せっかく作った図面なので、全部載せて、その時の私の思考を記したいと思います(解説ではありません)
げっ!何をしているんだ?
森内名人の強気に、最強の手で切り返す羽生三冠。
以下飛車角交換後の△6六角には▲6七飛と飛車を自陣に打つしかなさそう。後手だけ角を手持ちにしているし、「序盤は飛車より角」と言うし、先手は苦労しそうだ。
後手の角の脅威を減らすため自ら飛先を止める辛い歩打ち。
後手の主張が通った局面だが、将棋が長引けば、バラバラではあるが前び出ている金銀をまとめれば、先手に全面的に制圧される危険性もある。
桂跳ねを防ぐため、さらに飛先に歩を打つ先手。言うがままという先手であるが、どこかで後手が先手陣を切り裂かなければジワジワ抑え込まれそう。端桂の弱点も気になる。
無理やり先手陣をこじ開けた。
何とか、戦いを起こせ、これは行けるぞ!
更に、斬り込む羽生三冠。△6六角と先手陣を切り崩せそうだが、先手の飛車が7二の金を狙っていて、▲6七銀に△7七歩と打つしかなく、▲5八飛と進むと、後手の攻めが食い止められてしまうぞ(実際もそう進行)。
図の△7六歩では△8五歩も有力だったようだ。
▲4八玉~3八金と陣形を整備された。現局面が後手が不利だとは思えないが、このまま、戦いを起こせず、自陣の整備合戦になると、後手は有効な手が5、6手しかない。しかもあまり固くならない。対して、先手には20手ぐらい有効手がありそうで、どんどん先手陣が良くなっていきそう。
渡辺二冠は「ここは1手、△4二銀と形を整えて、それから、いろいろと手を繰り出していきたい」というような解説をしていたが、ここで仕掛けないと手にならないと見たのだろう。羽生三冠は△3五歩と仕掛けた。
仕掛けたが、あまり有効な感触がない。
どうする?と心配していたら、△5五金、こんな手で大丈夫なのか?
森内名人の▲5六金の強い受けにほとんど時間を使わず、△3五角行!
角金交換の駒損にはなるが、先手陣を斬り込めそうな感触だ。行ける…かな?
決めに行った!
少し過激すぎるのでは?
決まったか?
しかし、そんな簡単なものではなかった。
▲4四桂△同歩▲2五角の筋で後手の攻め駒を1枚外され、飛車を取ったものの、後手の攻め駒は飛車と成銀だけ、持駒も歩しかない。香車を拾っても攻め駒は3.5枚(歩は0.5枚とカウント)。大丈夫なのか?
反撃されたぞ!「攻撃は最大の防御なり」とも言う。それとも、苦し紛れか?
先手の8一の銀が効率が悪いので、後手玉は残せそうだ。
▲3六香に△3四歩と受けたが、構わず▲同香と取られてしまった。……げっ!△3四同金だと▲6一角打があるじゃん!
取らずに△3三歩だと詰んじゃうし、△3三金直もやられそう。
……あ、そうか、金を取らせて△4三金打と固めればいいのか。
やっと……勝てた。