今回はタイトルのあるように
不義の噂が主題だった。
この件については諸説はあるようだが、
「時栄と青木の不義の噂(真偽は定かでない)が出て、八重が率先して時栄を追いだした」
ということは確かな史実であるらしい。
ということは、上記の事項を歪めなければ、その他の登場人物の行為や気持ちに関しては、脚本家の解釈や主旨に委ねられる。
このエピソード……不義を犯したとはいえ山本家の恩人でもある時栄を、義理の妹の身の八重が叩き出した……頑固で剛直な八重がらしいエピソードであるが、これをストレートに描くとドラマのヒロインとしては、気性が激し過ぎるような気がするので、この件をどう描くのか、ずっと興味を持っていた。
★「覚えがないぞ」事件(時栄妊娠発覚)について
時栄が体調を崩したため、医師ジョン・カッティング・ベリーに診察してもらった際、時栄の妊娠が発覚。
覚馬は身に覚えがないため時栄の不倫が露見。覚馬は今までの時栄の検診を思い許したが、八重は「臭いものに蓋はできぬ」と時栄を糾弾し、追い出してしまった。
この事件は、徳冨蘆花(徳富健次郎)の小説『黒い眼と茶色の眼』(岩波文庫では『黒い眼と茶色の目』)で記されているが、自伝風(名前は変えてあるが該当する実在の人物が存在する)の小説でフィクションなのかノンフィクションなのか不明で、実際に不倫や妊娠があったかは不明である……らしい。
ドラマでの流れ
1.青木が時栄の手を握ったのを久栄が目撃
時栄は「偶然手が触れただけ」と弁明したが、久栄は以前から母(時栄)の青木への態度がおかしいと感じていた。
これを機に、青木は覚馬に「時栄を女中扱いし、忍従を強いている」と責める(開き直る)。
時栄は「やめて…もうやめておくれやす……お願いや」と止める。でも、青木の言ったことを否定はしない。
覚馬は時栄に「間違いがあったのか?」と問いただすが
時栄は「“ひとりで心細いやろ”と世話をしたのを勘違いしたのやろ」と否定
覚馬は青木を故郷へ帰そうとしたが、時栄がとりなして転校させることで決着
八重は時栄の措置を問うが、覚馬は「口を挟むな」と。
2.大垣屋清八の釈明(謝罪、説得)(同志社女学校の授業参観時)
・時栄の非を認め、詫びる
・時栄の覚馬への献身をアピール
・学校への協力、援助を惜しまない(「時栄を許すこと」の交換条件ではなく、女学校の素晴らしさを讃え、その気持ちから援助売ることを強調)
3.覚馬と時栄、洗礼を受ける
覚馬が、「自分の罪を悔い改めるため洗礼を受けようと思う。お前も一緒に洗礼を受けて、一からやり直して見ねえか」と申し出る
八重が時栄に、覚馬やみねが世話になったことに礼を言い、覚馬の事、山本家のことをこれからもよろしく頼みますと頭を下げる。 (自分(八重)が世話になったことの礼は言わない)
4.時栄、本心を吐露
その八重の言葉と洗礼を受けたことで、時栄は本心を吐露する。
「うち……ずぅっと妬んでましたんや……うらさんのこと。
身を引いたうらさんは、旦那様の胸に消せん傷をつけはった。
旦那様の中に、ずぅっとうらさんがおんのや。
年も取らんと綺麗なままで……」
「時栄さん、そんな気持ち…もう捨ててくなんしょ。
時栄さんとあんつぁまは洗礼を受けて生まれ変わった。今日から新しく、生き始めんだし」
という八重の説得に、
「新しく………そうや、やり直すんや」
と、時栄は自分に言い聞かせる。
5.青木、乱心…そして……
青木が自分の心を抑えきれず、時栄に言い寄る。
時栄は拒むが、強引に抱きしめられてしまう。
「誘ったのは、あんたの方や」と言われ、一瞬、固まってしまったのだ。
そこへ、タイミング良く(悪く)本の行商人がやってきて目撃してしまう。
噂が広まり、覚馬、学校が窮地に追い込まれる。
それでも、八重は噂を否定し、庇う。
「心無い噂のことは、気にしなくていいから」と八重は時栄を励ますが、
「なにも……なかったんだべ?」と尋ねてしまう。
その言葉に時栄は
「うちは、旦那様の胸に居はる…うらさんとは違う。
生身の女子や。綺麗なままでは生きられへん。
言い寄られたら…抱きすくめられたら……手ぇ握られたら……」
「罪深き女子や。洗礼を受けたかて、清められへん………」
ついに八重の本音が爆発!
襄と自分の夢である同志社が、(八重にはほとんど存在しないであろう)女の性(さが)によって砕かれようとしているんだもの。
「なんてことを……なんてこと、してくれたんだし!
こんな時に不始末の噂が、どんだけ足を引っ張っか、
あんつぁまの名を、どんだけ汚すことになっか」
「わかってます。ようわかってます…」
「………出てってくなんしょ!
お願いします。このうちから出ていってください。兄と別れてください」
頭を深々と下げる八重。
そこへ、覚馬がやってきて
「今度のことは、俺から出たことだ。始末は俺が付ける」
商工会議所を辞めてきたらしい。
「旦那様、縁を切っておくれやす。うちを離縁してください。久栄をお願いします」
6.別離
「父様を裏切ったんか?母様が傷つけたんは父様だけやない。うちのことも裏切ったんや。
母様なんか………」
最後の言葉を言いよどむ久栄の本心を推し量り
「さっさと出て行ってくなんしょ!
久栄、この人はもう母様なんかじゃねえ。山本家と縁を切った人だ。
ほら、早く出てけっ!」
と、時栄を突き飛ばす八重。たまらず、久栄が駆け寄り、
「やめてぇ、母様に酷いこと、せんといて!
出ていかんといて、うちを置いていかないで……」
母娘の分かれ、拗れたままで別れさせずにすんだ。
「おおきに」時栄は去っていった。
大河ドラマのヒロイン的、八重の心情、行動でソフトで浪漫にまとめていたと思う。ただ、『黒い眼と茶色の眼』の内容の真偽はともかく、実際の八重はこんなにやさしくないと思う。
「出ていけ!」という時、「なんてことをしたんだ!」というのが、不義そのものに対して言っているのではなく、学校や兄の名の為というのは良かった。(「ヒロイン主役特権=良い人」を強調しなかった点で評価できる)その分、終盤に母娘の仲を取り持ったということで、挽回させていたが。
今回の別れは、うらの別れに対比させていた。
うらは、「年を経た自分の姿を若い時栄に引け目を感じることが耐えられない」と身を引いたが(第31話「離縁のわけ」)、時栄は「覚馬の心には若いうらが居て、自分は年を取っていく」とうらを妬んいた。
覚馬への献身は厭わなかったが、女性として扱ってくれなかった寂しさがあったのだろう。覚馬もそれを感じ、職を辞した。
★ピンチはチャンス
財団が同志社女学校を見放し、窮地に追い込まれた。
しかし、八重はこれを「チャンスだ」考えた。授業参観をして女学校の価値を知ってもらい、キリスト教入信というハードルがなくなったこともアピールした。
★最少人数なのでは?
テーマ曲時のクレジット(キャスト・俳優名)の役名が付いている役者の数が少なかった。
………今回のレビューは…疲れた。
【ストーリー】番組サイトより
襄(オダギリジョー)がアメリカから5万ドルという巨額の資金援助をたずさえて、1年8か月ぶりに帰国した。八重(綾瀬はるか)は、襄との久しぶりの再会を喜ぶ。
これで大学設立は順調に進むかと思えたが、時栄(谷村美月)と青木(永瀬匡)の不倫関係がうわさ話となって町に知れわたり、同志社の宣教師たちからも不協和音が噴出する。事態収拾のため、覚馬(西島秀俊)は商工会議所会長を辞職するが、責任の重さを悟った時栄は離縁を申し出る。時栄は、離れたくないと泣きじゃくる娘・久栄(門脇麦)を八重と佐久(風吹ジュン)に託し、家を後にする。
不義の噂が主題だった。
この件については諸説はあるようだが、
「時栄と青木の不義の噂(真偽は定かでない)が出て、八重が率先して時栄を追いだした」
ということは確かな史実であるらしい。
ということは、上記の事項を歪めなければ、その他の登場人物の行為や気持ちに関しては、脚本家の解釈や主旨に委ねられる。
このエピソード……不義を犯したとはいえ山本家の恩人でもある時栄を、義理の妹の身の八重が叩き出した……頑固で剛直な八重がらしいエピソードであるが、これをストレートに描くとドラマのヒロインとしては、気性が激し過ぎるような気がするので、この件をどう描くのか、ずっと興味を持っていた。
★「覚えがないぞ」事件(時栄妊娠発覚)について
時栄が体調を崩したため、医師ジョン・カッティング・ベリーに診察してもらった際、時栄の妊娠が発覚。
覚馬は身に覚えがないため時栄の不倫が露見。覚馬は今までの時栄の検診を思い許したが、八重は「臭いものに蓋はできぬ」と時栄を糾弾し、追い出してしまった。
この事件は、徳冨蘆花(徳富健次郎)の小説『黒い眼と茶色の眼』(岩波文庫では『黒い眼と茶色の目』)で記されているが、自伝風(名前は変えてあるが該当する実在の人物が存在する)の小説でフィクションなのかノンフィクションなのか不明で、実際に不倫や妊娠があったかは不明である……らしい。
ドラマでの流れ
1.青木が時栄の手を握ったのを久栄が目撃
時栄は「偶然手が触れただけ」と弁明したが、久栄は以前から母(時栄)の青木への態度がおかしいと感じていた。
これを機に、青木は覚馬に「時栄を女中扱いし、忍従を強いている」と責める(開き直る)。
時栄は「やめて…もうやめておくれやす……お願いや」と止める。でも、青木の言ったことを否定はしない。
覚馬は時栄に「間違いがあったのか?」と問いただすが
時栄は「“ひとりで心細いやろ”と世話をしたのを勘違いしたのやろ」と否定
覚馬は青木を故郷へ帰そうとしたが、時栄がとりなして転校させることで決着
八重は時栄の措置を問うが、覚馬は「口を挟むな」と。
2.大垣屋清八の釈明(謝罪、説得)(同志社女学校の授業参観時)
・時栄の非を認め、詫びる
・時栄の覚馬への献身をアピール
・学校への協力、援助を惜しまない(「時栄を許すこと」の交換条件ではなく、女学校の素晴らしさを讃え、その気持ちから援助売ることを強調)
3.覚馬と時栄、洗礼を受ける
覚馬が、「自分の罪を悔い改めるため洗礼を受けようと思う。お前も一緒に洗礼を受けて、一からやり直して見ねえか」と申し出る
八重が時栄に、覚馬やみねが世話になったことに礼を言い、覚馬の事、山本家のことをこれからもよろしく頼みますと頭を下げる。 (自分(八重)が世話になったことの礼は言わない)
4.時栄、本心を吐露
その八重の言葉と洗礼を受けたことで、時栄は本心を吐露する。
「うち……ずぅっと妬んでましたんや……うらさんのこと。
身を引いたうらさんは、旦那様の胸に消せん傷をつけはった。
旦那様の中に、ずぅっとうらさんがおんのや。
年も取らんと綺麗なままで……」
「時栄さん、そんな気持ち…もう捨ててくなんしょ。
時栄さんとあんつぁまは洗礼を受けて生まれ変わった。今日から新しく、生き始めんだし」
という八重の説得に、
「新しく………そうや、やり直すんや」
と、時栄は自分に言い聞かせる。
5.青木、乱心…そして……
青木が自分の心を抑えきれず、時栄に言い寄る。
時栄は拒むが、強引に抱きしめられてしまう。
「誘ったのは、あんたの方や」と言われ、一瞬、固まってしまったのだ。
そこへ、タイミング良く(悪く)本の行商人がやってきて目撃してしまう。
噂が広まり、覚馬、学校が窮地に追い込まれる。
それでも、八重は噂を否定し、庇う。
「心無い噂のことは、気にしなくていいから」と八重は時栄を励ますが、
「なにも……なかったんだべ?」と尋ねてしまう。
その言葉に時栄は
「うちは、旦那様の胸に居はる…うらさんとは違う。
生身の女子や。綺麗なままでは生きられへん。
言い寄られたら…抱きすくめられたら……手ぇ握られたら……」
「罪深き女子や。洗礼を受けたかて、清められへん………」
ついに八重の本音が爆発!
襄と自分の夢である同志社が、(八重にはほとんど存在しないであろう)女の性(さが)によって砕かれようとしているんだもの。
「なんてことを……なんてこと、してくれたんだし!
こんな時に不始末の噂が、どんだけ足を引っ張っか、
あんつぁまの名を、どんだけ汚すことになっか」
「わかってます。ようわかってます…」
「………出てってくなんしょ!
お願いします。このうちから出ていってください。兄と別れてください」
頭を深々と下げる八重。
そこへ、覚馬がやってきて
「今度のことは、俺から出たことだ。始末は俺が付ける」
商工会議所を辞めてきたらしい。
「旦那様、縁を切っておくれやす。うちを離縁してください。久栄をお願いします」
6.別離
「父様を裏切ったんか?母様が傷つけたんは父様だけやない。うちのことも裏切ったんや。
母様なんか………」
最後の言葉を言いよどむ久栄の本心を推し量り
「さっさと出て行ってくなんしょ!
久栄、この人はもう母様なんかじゃねえ。山本家と縁を切った人だ。
ほら、早く出てけっ!」
と、時栄を突き飛ばす八重。たまらず、久栄が駆け寄り、
「やめてぇ、母様に酷いこと、せんといて!
出ていかんといて、うちを置いていかないで……」
母娘の分かれ、拗れたままで別れさせずにすんだ。
「おおきに」時栄は去っていった。
大河ドラマのヒロイン的、八重の心情、行動でソフトで浪漫にまとめていたと思う。ただ、『黒い眼と茶色の眼』の内容の真偽はともかく、実際の八重はこんなにやさしくないと思う。
「出ていけ!」という時、「なんてことをしたんだ!」というのが、不義そのものに対して言っているのではなく、学校や兄の名の為というのは良かった。(「ヒロイン主役特権=良い人」を強調しなかった点で評価できる)その分、終盤に母娘の仲を取り持ったということで、挽回させていたが。
今回の別れは、うらの別れに対比させていた。
うらは、「年を経た自分の姿を若い時栄に引け目を感じることが耐えられない」と身を引いたが(第31話「離縁のわけ」)、時栄は「覚馬の心には若いうらが居て、自分は年を取っていく」とうらを妬んいた。
覚馬への献身は厭わなかったが、女性として扱ってくれなかった寂しさがあったのだろう。覚馬もそれを感じ、職を辞した。
★ピンチはチャンス
財団が同志社女学校を見放し、窮地に追い込まれた。
しかし、八重はこれを「チャンスだ」考えた。授業参観をして女学校の価値を知ってもらい、キリスト教入信というハードルがなくなったこともアピールした。
★最少人数なのでは?
テーマ曲時のクレジット(キャスト・俳優名)の役名が付いている役者の数が少なかった。
………今回のレビューは…疲れた。
【ストーリー】番組サイトより
襄(オダギリジョー)がアメリカから5万ドルという巨額の資金援助をたずさえて、1年8か月ぶりに帰国した。八重(綾瀬はるか)は、襄との久しぶりの再会を喜ぶ。
これで大学設立は順調に進むかと思えたが、時栄(谷村美月)と青木(永瀬匡)の不倫関係がうわさ話となって町に知れわたり、同志社の宣教師たちからも不協和音が噴出する。事態収拾のため、覚馬(西島秀俊)は商工会議所会長を辞職するが、責任の重さを悟った時栄は離縁を申し出る。時栄は、離れたくないと泣きじゃくる娘・久栄(門脇麦)を八重と佐久(風吹ジュン)に託し、家を後にする。