Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

PEN LIFE1515.  インシデント拡大の過程

2017年12月29日 | diving

 インシデントについては先週のブログで書いた。インシデントは、その多くが人的ファクターで拡大してゆく。新幹線台車欠損事故の毎日新聞(2017年12月28日朝刊25面)記事ではJR西日本の発表内容が記載され、インシデント拡大の過程が記述されており興味深い。そこで新聞記事を掲載しておく。なお記事には断り書きの記述がないので全文ではないと推測。

 保守担当(保)と運転指令(指)のやりとり、車は車掌なのか?記事に記載が無い。※-※は新聞記者の取材結果だと思われる。

以下新聞記事

(岡山)

車両保守担当者3人が乗車

(岡山→新神戸)15時31分〜

保「床下を点検したい」

指「走行に支障があるか」

保「そこまではゆかない」、「安全をとって新大阪でやろう」

指※上司からの問い合わせと重なり、この提案を聞いていない※

(新神戸→新大阪)15時55分〜

指「走行に支障があるという感じではないか」

保「判断できかねる」、「通常と違う状態なのは間違いない」

※指令員が点検実施の調整をしてくれていると認識※

※保守担当者は専門家なので本当に危険なら伝えてくると認識※

指「台車関係かどうか疑わしいがわからないということ」

保「そうですね、はい!」

新大阪16時01分〜

車「運転継続の旨をJR東海に引き継ぐ」

 

 新聞記事では「現場と指令も人任せ」と見出しがあり、喧嘩両成敗の考え方はいかにも新聞記事的曖昧さがあり私が新聞嫌いになる要因の一つなのだが・・・。

 人的ファクターの原因は明快だ。技術の専門家である保安員が停車と検査を提案したにもかかわらず、指令員が聞いていなかったこと。つまり提案という重要項目を聞きそびれた指令員にインシデント拡大の最初の原因がある。従って新聞記事の書き方は不適切。

 保安員は、検査していないのだから「疑わしいところはわからない」というのは正確な回答である。だからわからなければ検査するのが工学の世界では当然のことなのだが、疑わしいことがわからなければ問題がない、という指令員の判断自体がいかにも文化系的解釈だ。従って検査や停車駅や後続列車への連絡などを指示しない運転指令員に明らかな2番目の人的ファクターの原因があった。

 指令員のキャリアをWEBで調べてみた。車掌や運転手を経験し、その後輸送指令関係の技術経験を積み重ね管理者試験を受け、資質と機会があれば指令員になれるということであり、特に工学系の高校を出ている必要はない。つまり文化系でも指令員になれるようだ。

 こうしたインシデントを見過ごすと、前の福知山の大事故でもそうだったが、今度はやたらに過敏になり停まる必要も無いのに停めてみたりとその対応に工学的論理の一貫性がなく、やることなすことがすべてが形式的になる可能性があろう。そうした形式的という視点でみればJR西日本は文化系的体質ではなかろうか。

 関西は、もともと文化系の牙城だから形式さえ満たせば、それでよしとする風土がある。だがハイテクノロジーは形式ではなく高次技術集積だから、科学的コンセプトや工学の論理的一貫性がないとオペレーションはできない。

 このように書くと私の文化系嫌いのように理解されがちだが、つまり私は社会的なカテゴリーに従ったにすぎない。それをブログ用に文化系、工学系と読み替えている。

総合職:文化系または過去に工学系であった人間が改宗した非専門家

技術職:工学系または専門家

と定義すればよいか。

 ハイテクノロジーは、オペレーションも含めモノをつくる経験や技術を通じつつ工学的論理も形成されよう。いいかええればモノをつくった経験がない文化系知識でハイテクノロジーをオペレーションされても危なっかしくてさ・・・。

 それにしてもなぜ台車の金属が破断していったかとする問題の解決には至っていない。台車枠はコの字型の部材を組み合わせて機械溶接で行うので均質な性能のはずである。そこに欠陥があれば、この時期に納品された4編成の全ての台車が危ないということになる。ちなみに台車枠の内部には縦に複数のリブ部材が入っているはずであり変形を防ぐようになっている。だがそのリブ間は空洞だから亀裂は防ぎようがない。

 さてインシデントの原因はなにか?。金属疲労か?、溶接不良か?。原因に対する答えが出ないと、よくわからないから問題がない文化系新幹線のままですけど・・・。

 

沖縄県儀志布島カメパラダイス

OLUMPUS E-M1,M.ZUIKO DG FISHEYE8  mm/F1.8
 ISO200,露出補正-1,f/6.3,1/80

 

 

 

 

 

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