Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

PEN LIFE1510. 義務時奴隷

2017年12月16日 | diving

 師走と書くのだから、普段は暇そうにしている師すなわち先生も、この時期は走り回るぐらいに忙しいという意味だったと私は記憶している。

 おりしも大学入試センターから今年度志願者数が12月8日に発表されている。志願者数582,669人 〔対前年度 6,702人増〕となっている。 私が勤めていた大学も試験場に指定されている。ということは試験実施のお手伝いに教員がかり出されることになる。この発表がなされて以降ジワジワッと大学入学試験の準備が本格的に始まるのである。

 だから大学に勤務していた頃、この時期に教員毎に設けてある郵便受けをのぞくのが恐怖だった。というのもこの忙しい師走に大学入試センター試験に関する説明会の参加案内が学内で開催される旨の通知が届くからである。説明会はどんな理由があろうと全員参加であり、欠席は認められない。だから学内でも説明会は複数回開催され出席の有無をチェックされる。

 実際説明会に行くと、隣にはさっきまで手術していましたといわんばかりのアルコールの臭いをさせた医学研究科の教員がいたりと、みんな師走の忙しいなかを駆けつけてくる。そしてとても分厚いマニュアルを渡される。試験時の志願者への説明のための発言のシナリオ(全国同一基準が大原則だから)や注意事項などなど・・・実に細かく記載され、それを短時間で一気に全部覚えろというわけだ。

 さらには過去の入試トラブル事例も付されている。そんなことを踏まえながら、トラブルがあったときの対応手順がことこまかに記述されている。地震がきたときはどうするか、そのために試験を一時中断したときの手順なんていう話は当然書かれてあるし、教員の試験場での態度についても記載されている。携帯電話は持ち込むな!、靴音たてるな!、内職するな!、居眠りするな!、いびきをかくな!、あげくのはてに呼吸がうるさい(今後でかねない)・・・と事務員からも執拗に念を押される。最後に英語リスニング試験のデモ用ICプレーヤーを渡され、当然操作方法について実際に操作しながら勉強し、私などは床に落としてみたらどうなるかとか、踏みつけてみたら動くかとか・・・まあ、いろいろやってみるわけである(その程度では壊れませんな)。説明会が終わるとデモ用ICプレーヤーは回収される。

 大学センター試験は、全国の大学で58万人以上の受験生が一斉に同一の基準のもとに行うのが大原則である。だからTV・新聞メディアは、どこかの大学がちょんぼしてニュースのネタにならないかと虎視眈々と待っているのである。まあハイエナみたいな連中だ。実際試験開始が1分遅れた試験場があっただけでも、格好のニュース素材なのだ。私が試験監督をしていたときは、うちの大学ではそんなちょんぼはなかったが、それでも某著名な国立系大学でちょんぼがありニュース沙汰というよりも血祭りにあげられていた。だから大学教職員が一丸となって完璧な遂行を異常なまでの神経を使っておこなうのである。当然準備も念入りに行われる。

 試験は、どんなに高名な先生も従事する。高名であっても外れているのは当番にあたらなかったか、あるいは常勤職員でない場合である。だから志願者の解答用紙を配っているのが著名な建築家だったりするわけだ。私などは、大学センター試験ぐらいは、生徒が通っている高校でやれよ!、その方がお互いにとってロスがすくないだろうけど、といつも思いながら従事していた。

 私の大学の入試は、大学センター試験、本学の前期日程、後期日程と3回続く。さて年が明けると、常に何かをしていないとおさまらない教員にとっては、試験中何もするなという拷問のような時間が続く3連チャンの始まりである。

 今の私は、そんな義務的奴隷からは解放されたが、いまでも細かく思い出す大学の大きな行事である。

 

沖縄県慶良間諸島渡嘉敷島アリガー南

OLYMPUS E-M1,M.ZUIKO DG FISHEYE8mm/F1.8

ISO200,露出補正0,f/7.1,1/100

 

 

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