福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

ひまつぶし

2007-05-04 15:32:30 | 南極

はじまりがあれば、おわりがある。そして、また、次のフェーズへ進んで行く。

第47次南極観測隊を応援してきた、み・くりさんのブログ「Katabatic Wind~ずっと南の、白い大地をわたる風」も、ひとまずの終止符を打つことになりました。さわやかな「風がわたる」、前向きな終わり方が感動を誘います。み・くりさんらしいです。そして、未来につながる情報発信を別な形ではじめる、み・くりさんに期待いたします。

「Katabatic Wind」の最終エントリー「ありがとうございました。」には、私の過去のエントリー「ブリザード」が紹介されています。南極大陸での野外調査中、天候が悪化し、観測小屋の中で3日間たった4人で過ごしたことを綴りました。

さて、電話も、テレビも、ラジオも、インターネットも無く、外部からは完全に隔絶された環境に3日間おかれた場合、あなたはどんなふうに時を過ごしますか?

いつものレトルトを中心とした食事を終え、もう一人の生物隊員の高野さんと「ひまつぶし」の会話。

「今日もレトルトの鰻蒲焼きでしたね」と高野さん。
「うーん、そうだね。この中国産鰻にも飽きましたね。なんて、贅沢なこと、いってんだろうねえ」と私。

そうです。閉ざされた環境では、食への欲望がつのってくるのです。それで、日本に帰ったら、「あれも食べたい、これも食べたい」談議が始まるのです。高野さんと共通して食べたい物は、札幌の炉端焼きのお店「炙屋」の生太巻きでした。そのイメージを頭の中で浮かべてしまうと、もう大変です。唾液が止めども無く出てしまうのです。典型的な、パブロフの条件反射。

01_82で、私にとって、何が一番食べたかったと言うと、「ひつまぶし」。炭火でカリッと焼いた鰻を刻んで、アツアツのごはんに載せ、特製のタレをかけたもの。これだけは、家庭でなかなか再現できない料理の一つです。食べ方は好みですが、一応の作法では、飯篦で「ひつまぶし」を4等分する。最初の4分の一は、そのままいただく。好みによっては、山椒をかけても良し。

02_45残りは、あなた次第ですが、きざみネギ、ワサビ、山椒、そして特製タレを好みに加えて、お茶をかけていただく。お茶漬けにしていただきながら、時々、奈良漬けや肝吸いに手を付ける。

そんな、こんなを、思い浮かべながら、南極大陸で過ごす、贅沢な「ひまつぶし」。ブリザードも、はじめがあれば、必ず、おわりがある。

あれから、1年以上が経ち、ゴールデンウィークの一日。どこへも出かけず、ゆったりした時間の中で、今晩の献立を考える。逆立ちしても、「ひつまぶし」なんて作れないな。レトルトの鰻蒲焼きを解凍して、鰻丼にしようか?

<追記>
札幌で、「ひつまぶし」が味わえるお店をご存知でしたら、お教えください。