第 3400回の「直流給電」などで書いてきたように太陽光発電の弱点の一つに電池で出来た直流を交流に返還す るパ ワーコンディショナーによる発電量の減少とその何時までも下がらないコストにあります。
その上に、パネルの長い耐久性に比べて家電と同じように10年程度しか持たないと言われる寿命があります。
我が家もそれを恐れてシャープの5年延長の保険に加入しました。厳しかったですが、間違いなく故障すると言われるパ ワコンの何十万円もの費用を考えると仕方ないと考えました。
さて、そのパワコンの概念が覆されるようなシステムがあるようです。それも、既にアメリカでは実用されているのだそ うです。これは、想像もしませんでした。
スマートジャパ ンより 2014年10月28日
日本国内では全くといってよいほど導入が進んでいない太陽光発電向けのマイクロイ ンバーター技術。欧米では同技術の優位性が評価されており、パワーコンディショナーを追い込むほど導入数が増えてい る。同技術に特化した米企業が、蓄電池をも取り組むシステムを開 発。採用された蓄電池は日本製だった。[畑 陽一郎,スマートジャパン]
太陽電池が生み出した直流電流をパワーコンディショナーで交流に変えて……。国内のシステムでは大前提となっている このような仕組みを「ひっくり返す」システム技術が、欧米で浸透し始めている。
パワーコンディショナーは使わない。直流を交流に変換する20cm角 程度の装置「マ イクロインバーター」を太陽電池モジュールごとに接続し、太陽電池モジュールからその場で交流を取り出 すという方式だ(図1)*1)。
従来のパワーコンディショナーを集中制御だと考えれば、マイクロインバーターは分 散制御に相当する。
*1) パワーコンディショナーもマイクロインバーターも直流を交流に変換するという意味では同じ機能を備えている。パワーコンディショナーは複数の太陽電池モ ジュールを直列に接続したストリング単位で、得られる電力を最大化しようと動作することに対し、マイクロインバー ターは1枚の太陽電池モジュールだけを最適化する。
図1のようなシステムにはどのような利点があるのだ ろうか。幾つもある。「もう少し電力が欲しい」という場合、太陽電池モジュールを1枚 単位で増設できる。1枚だけ大出力のモジュールを追加することも可能 だ。モジュールの特性を合わせる必要がないからだ。このため、パワーコンディショナーを用いた場合よりも、一般には 得られる電力の量が多くなる。
太陽電池モジュールの故障や、影にも強い。故障したモジュール、影が当たったモ ジュールの出力だけが下がり、隣のモジュールは正常に動作し続ける。システム全体への影響が小さい。
設置工事も楽になる。もともと交流を通している宅内配線と接続しやすく、システム 拡張がたやすい。マイクロインバーターにコンセントプラグが付いており、これを家庭用コンセントに差し込むだけで動 作する製品もある。「プラグインソーラー」と呼ぶ。
設置スペースでも有利だ。パワーコンディショナーの専用スペースを用意する必要が ないためだ。小ぶりな家屋ではありがたい。
ただし、マイクロインバーターにも「欠点」はある。太陽電池モジュールの数だけ装 置を用意しなければなら ず、モジュールの枚数が多いと、パワーコンディショナーよりも割高になるのだ。しかし、次節で紹介するように米国市 場では導入が進んでいる。これは初期コ ストとトータルの発電量を評価した結果だといえるだろう。
米国市場がマイクロインバーターで突出
米国の調査会社であるIHSが2013年8月 に発表した資料によれば、マイクロインバーター市場は米国に集中しており、2012年 には世界市場のうち、72%のシェアを占めたという。2013年 には米国の住宅市場の40%がマイクロインバーターを採用しており、パ ワーコンディショナーが少数派に転落する可能性が高い。
2017年のマイクロインバーターの世界市場は2.1GWま で成長する見込みであるという。これは2013年の約500MWと 比較すると4倍の成長に相当する。
次は蓄電池をマイクロインバーターでつなぐ
こうした状況の中、マイクロインバーターの考え方を蓄電池にまで拡張しようとし ている企業がある。米Enphase Energyだ。同社はマイクロインバーターを採用した太陽電池 モジュールを、「双方向」マイクロインバーターを用いた蓄電池と組み合わせる(図2)。 双方向とあるのは、蓄電池には充電と放電の逆向きの電流の流れがあるからだ。同社が世界で初めて開発した技術である と主張する。双方向マイクロインバーターを備えた蓄電池を「Enphase AC Battery」 と呼ぶ。
マイクロインバーターの利点は太陽電池モジュールと同じだ。工事が容易であり、必 要に応じて蓄電池を増設しやすい。
同社は2015年下期にも図2の ようなシステムを市場に投入する予定である。全てを交流で接続する「オールACア プローチ」を採る。マイクロインバーターを備えた太陽電池モジュールと、双方向マイクロインバーター、蓄電池をパッ ケージ化した「分散型電力貯蔵システム」として提供することで、住宅内のエネルギーマネジメントを最適化できるとい う。制御にはEnphase Energy Management Systemを 利用する。
「図2にある運転制御盤は、太陽電池モジュールと蓄電 池の状態を監視して制御する機能を備える」(エリーパワー)。
図2 分散型電力貯蔵システムの構成 家電を含め、機器同士を交流(ACケー ブル)で接続する。 出典:エリーパワー
エリー パワーが蓄電池を単独供給
Enphase Energyはマイクロインバー ターの開発・製造・販売に強みのある企業だ。だが、蓄電池技術はない。そこで、日本で蓄電池を開発・製造・販売する エリーパワーと戦略的提携の覚 書を締結した。長期的かつグローバルな提携である。「覚書の詳細な内容は公表できないものの、例えば1年 という短期間ではない。Enphase Energyは世界市場に販売網 を構築しているため、当社の蓄電池がそこに載っていく」(エリーパワー)。
エリーパワーは容量1.2kWhのリチウムイ オン蓄電池モジュールをEnphase Energyに単独供給する*2)。 「新規開発品ではなく、当社が既に量産しているリチウムイオン蓄電池セルを組み合わせて供給する。国内では4セ ルを1モジュールに組み上げているものの、Enphase Energy向けには8セルを使 う」(エリーパワー)。Enphase Energyによれば蓄電池から の出力は275Wもしくは550Wに なるという。
*2) エリーパワーの発表資料にはEnphase Energyの共同創業者で副社長のRaghu Belur氏のコメントが掲載されている。そこではエリーパワーと提携を結ん だ理由として次のようにある。リン酸鉄リチウムを正極材に使用しており、安全性と性能に最も優れており、長寿命であ ること。蓄電池を高い品質基準の全自動ラインで製造していることが挙げられている。
「図2には4枚 の太陽電池モジュールと4個の蓄電池が組みになって描かれているものの、 実際のシステムでは太陽電池モジュールと蓄電池の数は1対1で はない。米国市場では4~5枚 の太陽電池モジュールと3~5台 の蓄電池を組み合わせることが一般的だろう。太陽電池モジュールを1枚増設し たとき、蓄電池の数はそのままでよいことも多い」(エリーパワー)。
日本市場に分散型電力貯蔵システムが導入されるのはいつなのだろうか。エリーパ ワーの発表資料には、同社社 長の吉田博一氏のコメントとして「分散型電力貯蔵システムは米国のみならず、日本を含めた世界のエネルギー問題の解 決に貢献していくものと確信していま す」という発言が掲載されている。
こんなものが出来ているなんて全く知りませんでした。何故これが日本で採用されないのか不思議です。もしかしたら、業 界か国の規制が絡んでいるのかもしれません。こういうところはアメリカの方が自由競争の原理が働くのかもしれません。
それにしても、一見コストアップのように思えますが、メガソーラーのように大規模でない住宅用のようにパネルの枚数 が少なければパワコンのコストより安くなると言うのが驚きです。こうなると、住宅用に採用されないのがやはり納得できま せん。
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