ちょっと嬉しかった話

  今日は用事があって一日じゅう出かけていました。ある集まりがあったのです。やって来た人々の中には、実に数年ぶりに再会した人もいました。

  会場のある建物のエレベーターに乗り込むと、さっそく見知った顔と出くわしました。その人に会うのは5、6年ぶりでした。
  でもその人はとても気さくな性格で、一応の挨拶を済ませるとさっそく、まるで3日前に会ったような気安い調子で、「最近どう?」と話しかけてきました。

  その人はおしゃべりな人でもあるので、もっぱら私が質問に答える側でした。私には大きな悩みがありますが、その人は私のそれまでの短い答えだけで、瞬時にそれを悟ったようでした。

  私はつい「もうダメでしょう」と弱音を吐きました。その人は首を振りながら「いやあ、そんなこたぁない」とぶっきらぼうに言いました。

  ここまでなら単なる励ましですが、その人はぶっきらぼうな表情のまま、続けて言いました。「でも、よく分かる。あなたの立場で焦ってしまうのは理解できる」とうなづきながら言いました。私「そうですか?」 その人「うん。」

  エレベーターが6階に着くまでの短い会話でした。別に懇切丁寧な言葉で熱心に慰められたわけでもありません。詳細で具体的なアドバイスをもらったわけでもありません。でも、私が悩んでいるのが「よく分かる。理解できる」と言ってもらえて、私はとてもホッとしたというか、救われたような気がしました。

  その人とはそう親しい間柄ではありません。でも、普段からダイレクトな物言いをする人だけに、普通の人なら心で思っていても口には出さないようなことを、素直に私に言ったのでしょう。その人にとっては些細なことでしょうが、私には大きな慰めになったのでした。  
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« バレエとミュ... アダム・クー... »


 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。