フェデラー伝説4-1


  4月のバレエ鑑賞は、マニュエル・ルグリのガラ公演のみで、A、Bプロ両方を観に行く予定です。新国立劇場バレエ団の『ペンギン・カフェ』は考え中。「かぶりものバレエ」は好きじゃないのですが、以前にご覧になった方から、すごく良い作品だとうかがいました。

  フェデラーの公式サイトを見たら、フェデラーは5月まで大会に出場しないのね。これは当初のスケジュールどおりなので、1ヵ月半も大会に出ないってことは、この間に何かやるつもりなんだろうなあ。治療とか調整とか。

  フェデラーが出ないとなると、テニス観戦にまったく興味が湧かないことに我ながら驚きます。今も何か大きな大会をやってるみたいですが、観る気全然ナッシング。早くフェデラーのプレーが観たいです。

  BNPパリバ・オープン準決勝での対ラファエル・ナダル戦直後、フェデラーの公式サイトのコメント欄がすごいことになって、世界中のフェデラー・ファンのショックと嘆きの声が、大音量で一斉に聞こえてくるかのようでした。ちなみにこのコメント欄で、フェデラーの背中の故障がかなり深刻な状態だったということを知ったわけです。さすが長年のファンの眼はすごいね。

  フェデラーの公式サイトだから、コメントはもちろんフェデラーへの慰めや励ましがほとんどです。ところが、フェデラーに対する皮肉や嫌味もちらほらありました。

  コメントを書き込むには会員登録してログインしないといけないので、登録してまで悪口を書き込む心理が、私にはよく分かりません。大体、悪口を言いたいほど嫌いな選手の公式サイトに、なんでわざわざ行くかね?

  いわゆる「荒らし」行為なんだろうけど、それに真面目に反論したり、感情的に言い返したりするファンがいたもんだから、荒れたとまではいえないけど、ちょっと険悪な雰囲気になりました。最後は冷静になるよう呼びかけるコメントが増えて収束しましたが、フェデラーとナダルの試合って、ファンにとってもすごく特別なものなんだな、とほんと実感しましたよ。

  ファン同士がネット上でケンカするのは、スポーツを楽しむ醍醐味の一つになってます。私ももう20歳若かったら大喜びで(笑)参戦したでしょう。でも、顔の見えないネット上で匿名で罵りあいをするのは、やはり不健全で危険なことだと思います。

  去年の上海マスターズ直前に「フェデラー暗殺予告騒動」が起こり、まず上海、ついで中国全土、果てに全世界を揺るがす大騒ぎになりました。あれも、『百度』という中国の大手ポータル・サイトの掲示板上での、フェデラーのファンとナダルのファンとのケンカが原因でした。

  「フェデラーを暗殺する」と書き込んだ「藍猫」というネットユーザーは、ナダルのファンだということです。『百度』の掲示板のフェデラーのトピック専用板に出入りしているフェデラーのファンたちが、ナダルのことを悪く書いていたのに怒り、フェデラーのファンたちと悪口の応酬をしていて、その流れで例の書き込みをしたそうです。

  フェデラーのファンたちがナダルの悪口を書いていたのもいけなかったし、ナダルのファンだという「藍猫」が、フェデラーのトピック専用板なんぞに入り込んだのもいけませんでした。それがきっかけでファン同士の言い争いが激化し、ついにはフェデラー本人とその家族に、身の危険という深刻な不安を与えてしまったのです。

  冷静というよりは硬くて暗い表情でプレーするフェデラー、コーチのポール・アナコーン氏以外は誰もいない、がらんとしたフェデラーの関係者席、あの光景を思い出すと、今でも心が痛みます。

  「藍猫」君は未成年らしいので、事件後はおそらく青少年用の矯正施設に収容され、インターネットに接続できない環境でしばらく過ごしただろうと思います。でも、大げさに騒ぎ立てたフェデラーのファンたちも同罪です。「藍猫」の書き込みが本気じゃないことは分かってたくせに、フェデラー側、上海マスターズ主催者側、上海市公安局に「通報」した上、マスコミの取材に事の次第を軽率にしゃべりまくったんですから。

  去年の「フェデラー暗殺予告」事件、そして今回の対ナダル戦に対するファンたちの敏感な反応を見て、これからフェデラーとナダルとの対戦について感想を書くときには、言葉にくれぐれも細心の注意を払おう、とガチな恐怖心をもって思った次第。

  また無駄話が多くなっちゃった。ルネ・シュタウファー(Rene Stauffer)著『ロジャー・フェデラー(Roger Federer Quest for Perfection)』第4章(Chapter 4)その1。

  誤訳だらけでしょうが、なにとぞご容赦のほどを。


  ・1998年、16歳のフェデラーは、ジュニアの国際大会でめざましい活躍を見せ、どんなサーフェスにも適応できる、またオールラウンド・プレーヤーであるということを示していった。

  ・ハード・コートの大会では、オーストラリアで行なわれたジュニア大会で優勝し、全豪オープンのジュニア部門でも準決勝にまで進んだが、スウェーデンのアンドレアス・ビンシゲラ (Andreas Vinciguerra、81年生、98年プロ転向)に敗れ、決勝進出を逃した。
  ・クレー・コートの大会でも、イタリアで開催されたジュニア大会で優勝した。しかし全仏オープンのジュニア部門では1回戦で敗退した。

  ・イギリスで行なわれたグラス・コートの大会でフェデラーは連勝し、ついにウィンブルドン選手権ジュニア部門男子シングルス決勝で、フェデラーはグルジアのイラクリ・ラバーゼ(Irakli Labadze、81年生、98年プロ転向)を破って優勝した。スイス人ジュニア選手として、これは76年に優勝したフランツ・ギュンタード以来の快挙だった。
  ・しかし、当のフェデラーは意外なほどに淡々としていた。「満足してるけど、大喜びはしてない。」 一方、フェデラーのコーチであるピーター・カーターは狂喜した。「ロジャーはプロ並みの集中力でプレーした。次は、ボレーを向上させなくては。」

  ・フェデラーがウィンブルドン選手権のジュニア部門で優勝した直後、フェデラーはスイスのグシュタードで開催されるスイス・オープンのワイルドカード(主催者推薦特別出場枠)を受け取った。
  ・このとき、フェデラーの世界ランキングは702位であったので、本来ならば出場資格はなかった。しかしこれが、フェデラーがプロの大会でプレーするはじめての機会となった。
  ・スイス・オープンはクレー・コートの大会であり、ウィンブルドン選手権の次の週に開催されることになっていた。大会はベルナー・アルプスにある、絵に描いたようなセレブ御用達の保養地で行なわれており、1915年にまでさかのぼる歴史ある、最も古いプロの大会の一つである。
  ・多くの山荘と豪壮なパレス・ホテルがたたずむ小さな村という牧歌的なロケーションと、絵葉書のような風景とで、このスイス・オープンは選手と観客に人気である。


  といわれてもねえ。スイス・オープンという大会は、ATPの現在の大会カテゴリでは250シリーズに属します。2012年の優勝者はトーマス・ベルッチ、準優勝者はヤンコ・ティプサレヴィッチ、2011年の優勝者はマルセル・グラノイェルス、準優勝者はフェルナンド・ベルダスコ、2010年の優勝者はニコラス・アルマグロ、準優勝者はリシャール・ガスケとなっています。

  1915年からという長い伝統があり、アルプスの美しい山々の風景に囲まれた、別荘と高級ホテルが立ち並ぶ金持ち専用保養地で開催される大会。でも250シリーズ。

  このスイス・オープン、おそらくは夏のバカンスを楽しむセレブ観客限定の、見せ物興行的な要素が強い大会なんでしょうね。トップ選手がガチでポイントを取りにいくために出場するような大会ではないんだろうと思います。

  フェデラーはワイルドカードでこの大会に出場できることになり、プロ大会でのデビューを果たすことになるわけですが、それはウィンブルドン選手権のジュニア部門で優勝した、16歳のスイス人ジュニア選手と大人の世界的プロ選手とを対戦させるという「座興」のために呼ばれたのでしょう。

  大人のプロ選手たちの中に年少のジュニア選手を放り込む、いささか悪趣味な企画です。でもプロテニスの大会はショウ・ビジネスでもあります。かくして、ロジャー・フェデラーはプロ・トーナメントにデビューすることになりました。動物園の檻の中に撒かれる生餌みたいに。


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