新国立劇場バレエ団『マノン』(6月24、26日)-1


 『マノン』

  原作:アベ・プレヴォ

  振付:ケネス・マクミラン

  音楽:ジュール・マスネ
  音楽構成・編曲:リートン・ルーカス、ヒルダ・ゴーント
  改訂編曲:マーティン・イェーツ

  装置・衣装:ピーター・ファーマー(ニコラス・ジョージアディスの原デザインによる)

  演出:カール・バーネット、パトリシア・ルアンヌ

  照明:沢田祐二

  監修:デボラ・マクミラン


  マノン:サラ・ウェッブ(ヒューストン・バレエ)
  デ・グリュー:コナー・ウォルシュ(ヒューストン・バレエ)

  レスコー:古川和則
  レスコーの愛人:湯川麻美子

  マダム:堀岡美香
  ムッシューG.M.:マイレン・トレウバエフ

  乞食のかしら:吉本泰久
  高級娼婦:厚木三杏、長田佳世、堀口 純、川口 藍、細田千晶
  紳士:江本 拓、原 健太、奥村康祐

  看守:厚地康雄

  ねずみ捕りの男:小笠原一真


  演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
  指揮:マーティン・イェーツ


  今回の装置と衣装はオーストラリアン・バレエからのレンタルだそうです。去年の小林紀子バレエ・シアターの公演もそうでした。にしては、マノンの衣装が微妙に違うように思いましたが、マノン役のサラ・ウェッブの自前衣装だったのかしらん。

  デザインがピーター・ファーマーなのは、小林紀子さんによると(2011年小林紀子バレエ・シアター『マノン』公演プログラム)、英国ロイヤル・バレエが用いている、ニコラス・ジョージアディスがデザインした衣装や装置とそっくり同じものを作ろうとすると、コストが大幅にかかるんだそうです。

  そこでオーストラリアン・バレエはピーター・ファーマーに再デザインを依頼し、ファーマーはジョージアディスの原デザインに沿いつつも、より低コストで作成可能な衣装と装置をデザインし直したとのこと。

  私はファーマーのデザインのほうが好きですね。つっても、細かい違いなんか分かってなくて、ただ単にファーマーのほうはヘンなヅラを使ってないからというだけの理由です。

  『ロミオとジュリエット』の3人の娼婦でも明らかなように、ニコラス・ジョージアディスはヘンなヅラマニアだったのだろうと私は踏んでます。『マノン』もその例外ではなく、第二幕の娼婦たちや、第三幕のニューオーリンズの街の女たちは、みーんなパパイヤ鈴木みたいなアフロヅラをかぶってます。

  しかし、ファーマーのデザインだと、娼婦たちのヅラはロココ調で許容範囲内ですし、街の女たちは地毛をひっつめ髪にしてあるだけなので、ドリフの爆発コントみたいなヅラよりもはるかに自然で、素の美しさが引き立ちます。

  今回の指揮者は、『マノン』の音楽の改訂編曲を担当したマーティン・イェーツ御本人です。イェーツのこの改訂編曲版が、現在は本家の英国ロイヤル・バレエをはじめとして、世界中のカンパニーで用いられているとのことです。イェーツは、実は隠れた豪華キャストですな。でもやっぱり、リートン・ルーカス&ヒルダ・ゴーント版との違いがよく分かんないのですが。

  東京フィルハーモニー交響楽団の演奏は非常にすばらしかったです。『マノン』の前奏曲のあの静かな出だしを聴くと、毎度ゾクッときます。オリジナルの選曲&編曲者であるルーカスとゴーントは偉大だ。

  音楽はすごく良かったですが、イェーツ氏には、たとえば第三幕の冒頭、埠頭で兵士たちと女たちが踊るシーンはもうちょっと速く、ラストの沼地のシーンはもうちょっと遅く演奏してほしいです。デ・グリューとマノンの脳裏に現れる人々役のダンサーたちが、演奏があまりに速いので、あわただしく急いで動き回ってて大変そうだったぞ。

  沼地のパ・ド・ドゥも、もうちょっと迫力ある演奏希望。

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