元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「スニーカーズ」

2018-08-03 07:00:02 | 映画の感想(さ行)
 (原題:SNEAKERS)92年作品。当時の製作陣は先進的なネタであると思い込んでいたようだが、大して上手く“料理”されておらず、冴えない出来に終わっている。

 1969年、二人の大学生が政府機関の銀行口座にハッキングして、寄付と称して慈善団体に送金するという事件が起きる。一人は逮捕されて獄中死したが、もう一人は逃げ延びた。90年代、逃亡に成功した元大学生(ロバート・レッドフォード)はサンフランシスコに“スニーカーズ”というチームを結成。セキュリティ・システムを通り抜けてその信頼性をチェックするのが彼らの仕事である。



 彼らは全員コンピューターに通じたプロだが、人の言えない過去を持つことでも共通していた。ある日、政府組織と称する一団から“ブラック・ボックス”と呼ばれるチップの盗みを依頼される。だが、それは彼らが国際的な陰謀に巻き込まれていくきっかけであった。

 監督は「フィールド・オブ・ドリームス」(89年)のフィル・アルデン・ロビンソン。レッドフォードをはじめ、ダン・エイクロイド、シドニー・ポアチエ、リバー・フェニックス、ベン・キングズレーなどが顔を揃えるオールスターキャスト映画でもある。

 さて、この映画の脚本に参画したウォルター・F・パークスは、ジョン・バダム監督の「ウォー・ゲーム」(83年)のシナリオも手掛けている。ハッカーが主人公なのも同じだが、力を合わせれば核戦争を回避できるといった理想主義的テーマを持つ前作と同じく、陰謀の真の目的がいわばユートピアを求めるものであったという結末も、何となく共通しているようだ。しかし、今回はその目的・手段があまりにも現実離れしていて青臭く、観ていて笑ってしまった。「フィールド・オブ・ドリームス」にもあらわれた60年代のカウンター・カルチャーへのオマージュなのかもしれないが・・・・。

 衛星回線を何重にも利用して政府機関に取り引きの電話を入れる場面を除いては、アッと驚くようなハッキング・テクニックは登場しない。クライマックス敵の本拠地への潜入シーンも、普通のサスペンス映画と同じで盛り上がることはないし、何よりもプロットが甘く、「ウォー・ゲーム」ほどハラハラする場面はなかった(ただ、デイヴィッド・ストラザーン扮する盗聴とオーディオのエキスパートでしかも盲目、というキャラクターは出色)。

 なお、ロビンソン監督はこの後はあまり作品を撮っていない。何となく「フィールド・オブ・ドリームス」だけの“一発屋”のような印象を、今のところは持ってしまう。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする