テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

影武者が綴る時代夜話本。

2007-10-08 14:13:16 | ブックス
 昨日に引き続き、隆慶一郎さんの御本を取り上げようと
 選び出しましたのが、こちら。
 厚い文庫本にして上・中・下の、計三巻にも及ぶ大部の著です。
 有名な作品ですから、御存知の方もおられるでしょう。



         ―― 影武者 徳川家康 ――



 著者は隆慶一郎さん、単行本が発行されたのは平成元年のことでした。
 
 御話に、トリックはありません。
 題名のまま、徳川家康の影武者として生涯を送った或る漢の物語です。

「かげむしゃ……まえにィ、えいがでェ、みたでスよ。ネーさ」

 テディちゃの言ってるのは、黒澤明さんの『影武者』ですね?
 あの影武者さんは、いわば甲斐国の中でだけ
 『影』を演じていればOKでした。
 が、家康となるとそうは行きません。
 スケールが違ってきます。
 
 そもそもは、関が原の合戦場。
 敵方の忍びに斃された家康に替わり、
 影武者・世良田二郎三郎が戦の指揮を執ることに。
 混乱の中でやむなく始まったこの芝居が、
 なんと、その後も延々と続けられる、という設定です。

 そんなの馬鹿げてる!と多くの人は言うでしょうか。
 
 ところが。
 隆さんの筆は、迫真の力をもって、有り得ぬ筈の事柄を描ききります。
 教科書の定説ではなく、
 血肉の通った伝説。
 数多の正史よりもこちらを信じたくなるような、
 活き活きとした魅力があるのです。

「にせものさン、いいひとだった、のでスか?」

 そうですね、読者はまず、二郎三郎の人柄に惚れ込みます。
 そして、もうひとり、
 影武者・二郎三郎を援ける忍者――甲斐の六郎。
 武田忍の裔(すえ)だというこの人物にも瞠目させられます。

 目立たぬ外見ながら、もう一人の主人公として、
 甲斐の六郎は素晴らしい働きをみせます。
 いや、真の主人公はこの六郎ではないかと、
 読後に考えさせられてしまいます。
 著者の隆氏も、六郎に魅せられていたのでしょう。
 長い長い語りの尽きる終章、
 物語の『願い』を託されたのは、他ならぬ六郎でした。

 面白さに時間も忘れる傑作です。
 読み始めたら、寝不足になること確実!
 何度も読み返したくなる、すてきな御本です!
 読んでない方はぜひ!
 もう読んだ方も、たまには再読を!

「にせものだッて、いいやつはいる、のでス!」
 

 
 

 
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