図書館から借りてきた数冊の内の1冊。
蒸し返しの所謂「従軍慰安婦問題」を機に、読んでみた。
第二次世界大戦に連なる日本軍の中国大陸侵攻時の所謂「南京事件」の様子だ。
主人公に中国の一知識人を設定し、日記風に彼の眼を通して日本軍占領下の南京の惨劇を捉え、描いている。
惨殺された中国人の数の多寡ではなく、我々の父や祖父が異国の地に送り込まれ、如何に惨たらしい鬼畜の振る舞いを繰り返し、そこに暮らす人々との間に加害者・被害者という立場で抜きさしならない関係を作ったことか。
日本軍の南京占領時の、到底筆舌に尽くし難い暴虐の実態は、「殺、掠、姦」、「戦争で人が人を殺すのは当たり前」というのとは、チョット訳が違う。
思想哲学の違い、敵味方、加害者被害者という構図ではなく、戦争に駆り出される個人としての、或いは、戦闘集団に組み込まれた時の人間の在り様、人間って何だ、どこまでムゴイ行為を出来るものか等々、根源的な問いとして見詰めようとする著者・堀田善衛の意図があるように見える。
武田泰淳著・短編「汝の母を」と同様、読み継がれることを願う。
蒸し返しの所謂「従軍慰安婦問題」を機に、読んでみた。
第二次世界大戦に連なる日本軍の中国大陸侵攻時の所謂「南京事件」の様子だ。
主人公に中国の一知識人を設定し、日記風に彼の眼を通して日本軍占領下の南京の惨劇を捉え、描いている。
惨殺された中国人の数の多寡ではなく、我々の父や祖父が異国の地に送り込まれ、如何に惨たらしい鬼畜の振る舞いを繰り返し、そこに暮らす人々との間に加害者・被害者という立場で抜きさしならない関係を作ったことか。
日本軍の南京占領時の、到底筆舌に尽くし難い暴虐の実態は、「殺、掠、姦」、「戦争で人が人を殺すのは当たり前」というのとは、チョット訳が違う。
思想哲学の違い、敵味方、加害者被害者という構図ではなく、戦争に駆り出される個人としての、或いは、戦闘集団に組み込まれた時の人間の在り様、人間って何だ、どこまでムゴイ行為を出来るものか等々、根源的な問いとして見詰めようとする著者・堀田善衛の意図があるように見える。
武田泰淳著・短編「汝の母を」と同様、読み継がれることを願う。