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沖縄→東京→竹野と流転する、bozzoの日々。

【未完のレーニン】攻撃欲動を馴化する可能性

2014-01-14 | UNITE!NIPPON
写真はダンサー高原伸子とのPhoto_Session より、
皇居東御苑にある桃華楽堂。

【on_Flickr】DANCER_07


  『ロシアにおいて新しい共産主義文化を建設しようという試みが
   ブルジョアジー迫害によって心理的に支えられていることも、充分理解できる現象だ。
   ただちょっと心配なのは、ソヴィエトでブルジョアジーが根こそぎにされたあと
   果たして何が起こるだろうかという点である』(S.フロイト「文化への不満」(1930)より)

いわゆる大テロルを約5年後に控えた1930年の段階で、このように不気味・までに正確な予言をなしえたことについては、
まさに慧眼と言うほかない。要するに、フロイトからすれば、レーニンのやろうとしたことは「文化」的にすぎるのだ。
人間はこのような「文化」に到底耐えられず、結局のところ攻撃欲動の方が勝利するであろう、というのがフロイトの見立てである。
しかし、精神分析の始祖があくまで慎重に革命(無意識による、あるいは社会主義による)の両義性を見つめ、
進歩にいたる途を発見することの徹底的な困難性を自覚していたのに対し、ボリシェヴィキ革命の指導者はその進歩性を
いささか無邪気に信じていたということを確認するだけで、問題は結着するのだろうか?

今日まで再三再四語り尽くされてきた事柄、すなわち
「人間性に関する見方の根底においてフロイトはペシミストであり、レーニンはオプティミストであった」
ということに問題は尽きるのだろうか?

仮にフロイトが『モーゼと一神教』という謎に満ちたテクストを書かなかったとしたら、
われわれはこのような結論に満足すべきであるのかもしれない。
だが、すでに論じたように「精神性における進歩」をフロイトは他の彼のテクストにおいては見られないような口調で
そこでは強調したのであり、しかもそれがなされたのは、まさに攻撃欲動の圧倒的勝利の確証であるかのごとき
ナチズムが猖獗を極める最中においてのことであった。
そして、『モーゼと一神教』によってやがて打ち出されることになる観点から遡及的に見てみるならば、
『文化への不満』においてすでに、攻撃欲動をいかに昇華しうるかについての道筋は語られていたことがわかる。
それは「罪責感」をめぐる議論においてである。もっと言えば、攻撃欲動を馴化する可能性、
「文化発展」の可能性が賭けられうる唯一の途として、それは論じられていた。

   『われわれの攻撃欲動を無力化するため、どんな方法がとられているだろうか。
    それはちょっと想像もつかぬほど奇抜だが、考えてみるとごく当たり前の方法である。
    すなわち、われわれの攻撃欲動を取り込み、内面化する方法である。しかし実のところこれは、
    攻撃欲動をその発祥地へ送り返すこと、つまり自分自身へと向けることに他ならない。
    このようにして字がの内部に戻った攻撃欲動は、超自我の形で自我の他の部分と対立している自我の一部に取り入れられ、
    こんどは「良心」になって、本当なら自我自身が自分とは縁のない他人に対して
    示したかったであろうのと同じ厳格さでもって、自分自身の自我に対するのである』(S.フロイト「文化への不満」(1930)より)

   『イスラエルの人々は、自分たちは神の寵児だと考えていた。
    ところが、この偉大なる父が自分の寵児の上へつぎからつぎへと不幸を注ぎかけた時、
    イスラエルの人々は、神と自分たちのこの特殊な関係に疑いを差し挟むとか、
    神の力と正義を疑いの目で見るとか言うことはせず、預言者たちを生んで、
    これに自分の罪深さを責めさせ、この罪の意識を基にして、司祭宗教の厳格きわまる戒律を作り出したのだった』(S.フロイト「文化への不満」(1930)より)

ここでフロイトが言っていることは、ユダヤ教は攻撃欲動をもっとも徹底的に内面化した宗教であるということにほかなるまい。
それを信奉する者たちは、攻撃欲動を他者へと振り向ける代わりに、つねに罪責感のなかにとどまろうとするのだ。
しかし問題なのは、なぜ、また、いかようにしてこのような精神的態度が可能になるのか、ということだ。



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