「○○商店のとある一日」
振付・演出/木村玲奈
出演/田添幹雄・木村玲奈+みちゆく人々
ドラマトゥルク/田添幹雄
11月28日から丸々二日間、木村玲奈&田添幹雄に密着した。
「○○商店のとある一日」という作品はこの廃屋からはじまる。20年前の阪神大震災を契機に転居された「瓦せんべい」屋さん。
その後も取り壊されることなく、原型のまま今に至っている。ふだんはひっそりとしたこの廃屋と玲奈さんが出逢ったのが2年前。
その時にいつか作品化したいと心に決めた彼女。「みんフェス」の【フリンジ】企画として、2年越しでカタチになった。
私たちは移動する。
色々な場所へ、色々な時間へ。
でもずっと移動しないものもある。
そんな存在に出逢った2012年10月。
いつかここを移動させようと思っていた。
過去、日本、宇宙、未来、東京、現在、外国?
ずっとそこにいるのだから、
たまにはこんな日があってもいいじゃない?
共にそんな一日を過ごしましょう、みなさん。
この前書きにあるように、11/29の晴れ渡った一日、「瓦せんべい」屋さんは、新長田の8カ所で開店した。
ダンサーのふたりは「瓦せんべい」屋の一日がそう始まるように、腰元にエプロンを締め、無言で店開きの準備をする。
かつてそうであったかのように、黙々と仕事を進めるふたり。軒先を掃除したり、珈琲豆を挽いたり、暖簾を出したり、せんべいを焼いたり。
その一連の所作が、空間を、時間を移動して、8カ所で抽出された。…公園や駅前や路地や港で。
その抽出された動きが、「ダンス」だと、玲奈さんは言う。
かつての「瓦せんべい」屋のふたりがそうであったように、毎日のいとなみの中で繰り返される所作は、研ぎ澄まされた「ダンス」そのものだと。
青空開店となった11/29に至るまでダンサーのふたりは、その所作が息の合った動きとなるよう、何度も何度も繰り返したという。
木村玲奈は、その積み重なる動きの先に、「希望」を見出しているのだとボクは思った。
「いとなみ」という退屈な所作を愚直に繰り返した、その先にこそ真なる「希望」はあるのだと。
2日間の密着を通して、彼女の「世界」に対峙する距離感がちょっとだけ掴めたような気がした。
そこにあるのは、「成長戦略」や「高利回り」といった近未来の財産を食いつぶすような近視眼的欲ではなく、
「定常的」に繰り返される「いとなみ」…過去から現在、そして未来に連綿とつづく、積み重なった「時間」の堆積。
その堆積にこそ、人間の智慧が育まれ、「希望」へとつながるのだ…といった遠視眼的世界が広がっているのだ。
NPO法人DanceBox「みんなのフェスティバル」【フリンジ】街かど・みちみちパフォーマンスより。
振付・演出/木村玲奈
出演/田添幹雄・木村玲奈+みちゆく人々
ドラマトゥルク/田添幹雄
11月28日から丸々二日間、木村玲奈&田添幹雄に密着した。
「○○商店のとある一日」という作品はこの廃屋からはじまる。20年前の阪神大震災を契機に転居された「瓦せんべい」屋さん。
その後も取り壊されることなく、原型のまま今に至っている。ふだんはひっそりとしたこの廃屋と玲奈さんが出逢ったのが2年前。
その時にいつか作品化したいと心に決めた彼女。「みんフェス」の【フリンジ】企画として、2年越しでカタチになった。
私たちは移動する。
色々な場所へ、色々な時間へ。
でもずっと移動しないものもある。
そんな存在に出逢った2012年10月。
いつかここを移動させようと思っていた。
過去、日本、宇宙、未来、東京、現在、外国?
ずっとそこにいるのだから、
たまにはこんな日があってもいいじゃない?
共にそんな一日を過ごしましょう、みなさん。
この前書きにあるように、11/29の晴れ渡った一日、「瓦せんべい」屋さんは、新長田の8カ所で開店した。
ダンサーのふたりは「瓦せんべい」屋の一日がそう始まるように、腰元にエプロンを締め、無言で店開きの準備をする。
かつてそうであったかのように、黙々と仕事を進めるふたり。軒先を掃除したり、珈琲豆を挽いたり、暖簾を出したり、せんべいを焼いたり。
その一連の所作が、空間を、時間を移動して、8カ所で抽出された。…公園や駅前や路地や港で。
その抽出された動きが、「ダンス」だと、玲奈さんは言う。
かつての「瓦せんべい」屋のふたりがそうであったように、毎日のいとなみの中で繰り返される所作は、研ぎ澄まされた「ダンス」そのものだと。
青空開店となった11/29に至るまでダンサーのふたりは、その所作が息の合った動きとなるよう、何度も何度も繰り返したという。
木村玲奈は、その積み重なる動きの先に、「希望」を見出しているのだとボクは思った。
「いとなみ」という退屈な所作を愚直に繰り返した、その先にこそ真なる「希望」はあるのだと。
2日間の密着を通して、彼女の「世界」に対峙する距離感がちょっとだけ掴めたような気がした。
そこにあるのは、「成長戦略」や「高利回り」といった近未来の財産を食いつぶすような近視眼的欲ではなく、
「定常的」に繰り返される「いとなみ」…過去から現在、そして未来に連綿とつづく、積み重なった「時間」の堆積。
その堆積にこそ、人間の智慧が育まれ、「希望」へとつながるのだ…といった遠視眼的世界が広がっているのだ。
NPO法人DanceBox「みんなのフェスティバル」【フリンジ】街かど・みちみちパフォーマンスより。