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#photobybozzo

沖縄→東京→竹野と流転する、bozzoの日々。

カレッサの少年

2006-03-30 | Philippine
Manila Bayと呼ばれる海岸沿いでは、
「カレッサ」という馬車がロハス大通りを行き来している。

赤い車体に黄色い車輪のコントラストが美しい。
さらに白馬が馬車馬だったりすると、もう存在が「絵はがき」のようだ。

そんなフォトジェニックな馬車だから、
馭者も心得たモノで、日本人をみかけるとしつこく付いてくる。

指をピースマークに立て、「20.20」と盛んに声をかけてくる。
顔をのぞき込むように、「20,20」といつまでもあきらめない。

しかし、ここらへんの馬車には乗らないほうが良いらしい。

ボクらも、馬車に乗るような洒落っ気は持ち合わせてないので、
ハエを払うような振る舞いでしか、相手にしていなかったのだけど、
…魔が差したというか、…歩き過ぎで足が棒になっていたというか、

…乗ってしまった。

リサール公園からBAYWALKのスクエアまで「all 20」で乗せてくれるという。
日没の暮れかけた時間だったので、馭者も家路に向かう途中なんだろう…とか、
勝手に都合良く判断してたから、

「ちょっとブラザーも拾っていく」

と言ったセリフも、なんの不信感なく受け入れていた。

馭者のブラザーが乗り込んできた。
ボクを挟み込むようなカタチで座った。
これは何かあるな…と今頃警戒しても、後の祭り。

いきなり、日本語で話しかけてきた。

「どこから来たの?ぼくはね、札幌にいたんだ」

「フィリピンは何度目?」「案内しようか?」

馬車はロハス大通りから、脇道へとどんどん入っていく。

「BAYWALKでいいから、まっすぐ行って」
「大丈夫、わかってるよ」

馬車馬に鞭打って「ハイヤ、ハイヤ!」とかけ声をあげ、
急いでもいないボクらの意志をまったく無視するように、
馬車をぐいぐい走らせていく。

「この馬、かわいいでしょ」

鞭を振り上げながら、やたらと馬を自慢している。ますます怪しい。

見慣れたエリアに入ったので、「ここで降りる」と伝えると、
「OK、OK、じゃあ、20ちょうだいね、降りる前にちょうだいね」

カッポカッポと走る馬車馬を気遣いながら20php札を差し出すと、
待ってましたとばかりに、馭者とブラザーが脇を固めて、
「dollar!dollar!20$!」とワケのわからないコトを言ってきた。

    20ドル?

20phpが20dollarに大化けした。約50倍の大暴騰だ。
ははあん、そういうことだったのね。
初めからそんな子供じみたトリックでボクらをだましたつもりでいるようだね。
    
    妻の出番だ。

「乗車前に20って言ったからね、わたしは20しか払いませんよ」
馭者とブラザーは大仰に「No way!」と天を仰ぐ。
妻も頑として引き下がらず、20php札を突き出している。

結局、ブラザーの脇の甘さが出て、ボクが馬車から降りたのを機に
妻も降りることができたので、20phpの支払いでなんとかクリアできたのだが、
「馬がかわいそうだ、馬がかわいそうだ」と
どこで覚えたのか憐憫の表情を浮かべる辺り、
百戦錬磨の常套手段のようだ。

最後は、暴力的に20php札を奪って
悪態ついて帰って行った。

観光客が甘い態度を見せるから、こんな詐欺紛いが横行してしまうのだろう。
うしろめたい寂しげな表情の子供が、馬車からボクらを見下ろしていた。