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イラストレーター/ライター遠藤イヅルの困った嗜好をばらす場所

【てつどう】MB3020の咆哮 山陽5000系直通特急に萌え死に

2010-09-24 | てつどう。
先日大阪出張が何回か続き(ましたので、合間を縫って関西の鉄道探訪を楽しんできました。

その探訪記事1回目は、山陽電鉄の5000系です。



梅田から山陽車に乗れる喜び



山陽電鉄は準大手私鉄に分類される63.2kmの路線を持つ民鉄。
特徴として、全線にわたり、JRと並走しているため完全な競合関係にあることがあげられます。

現在の主力である3000系以降の車両は、神戸高速鉄道を介して乗り入れる先である
大手の阪神や阪急と設計を同一にする必要もあり、準大手私鉄でありながら、
非常に高いクオリティを持っているのも特徴の一つです。
また、製造も地元の川重が一気に引き受けているのも山陽電鉄らしいところです。


その3000系列は、輸送力増強・旧型車の置き換えとして
1964年から1985年まで22年の長期間、合計133両が製造されましたが、
その長い製造年月も手伝って、山陽電鉄の車両の性能の標準化とアコモデーションの向上、
そして同じ車両を作り続けるが故の保守の合理化とコストダウンに成功しました。

この3000系列の後継車として、1985年に登場したのが5000系です。

当初の役割は、当時まだ山陽電鉄に残っていた旧型車の一掃だったのですが、
国鉄の分割民営化の足音が聞こえる時期になって、ライバルであった山陽本線が
これまで以上に強敵になることが予想されたため、5000系は普通車用でありながらクロスシートを装備し、
3000系列後期モデルから継いだ丁寧な作りのアルミボディを持つ、
レベルの高い車両として登場したのでした。

外観は3000系と同様のパノラミック・ウインドウでありながらも、
ブラックフェイスとして大幅にイメージチェンジ。
奇をてらわず、そして見あきないグッドデザインです。


山陽姫路にて。



制御方式は界磁添加励磁制御です。この制御方式の特徴は、
当時すでに各社で採用されていた界磁チョッパやVVVFインバータ制御を用いずとも、
既存の3000系で使用していたモーターを流用しつつ省エネも図れる、ということ。
ここでも、保守管理の徹底的な合理化策が伺えます。


クロスシートの車内。


グローブ付き蛍光灯、内張りのある側扉、綺麗な内張り。何もかもが上質。うーん、うらやましい。

当初は固定のクロスシートでしたが、途中から転換クロスシートで製造され、
一部の固定クロス車も転換化改造がされています。

このシートがふかふかで、なかなかの一品だったりするんですなあ。




ちなみに、5000系登場当初、15年ぶりのクロスシート採用が失敗に終わった時のために、
すぐにロングシートに戻せるようにしてあったそうですが、それは杞憂に終わり、
それよりもむしろ5000系は、その性質上優等列車主体で使用されるようになり、
3両だった編成も現在では、5000系のマイナーチェンジモデルである5030系を含み
6両貫通編成10本、4両編成2本の組成となり、
前者は神戸高速鉄道へ乗り入れてからの悲願であった、
阪神梅田への直通特急(1998年運転開始)に集中的に充当され、日夜山陽路を爆走しております。


ちなみにこれはVVVF車の5030系。


で、この5000系を語るには、(実際には5000系というより、山陽電鉄を語るには)そのモーターについても語りたい。

というのも、5000系のモーターは、MB3020という「名機」なのです。
このモーターを最初に搭載されたのは、あの奈良電デハボ1200系(のちの近鉄680系)。
1954年、まだまだ高性能(カルダン)車の黎明期に登場したデハボ1200系は、
当時としてはたいへんすっきりとした斬新な外観もさることながら、
技術的にも画期的な高性能電車だったのでした。

その後、このモーターはデハボ1200系での実績を買われ、
近鉄初の量産型高性能車800系、さらには近鉄初代ビスタカー10000系、
そしてその後継のビスタカー2世、10100系にも採用された、
初期の標準軌間用カルダンモーターの傑作なのです。

この名機が、山陽ではVVVF車である5030系、2000系のモータを持つ3200系以外は
まだまだ味わえるのですが、
特に5000系は直通特急としてかなりの速度で飛ばしてくれるので(号泣
MB3020の「昭和20年代以来のカルダンモータ」の咆哮を味わえる貴重な車輛なのです!

この21世紀になってもなお、
目をつぶって、もはや貴重になった初期高性能車を堪能できるというのは、
とても幸せな気分なのでした。



めったに会えない4連の5000系。しかもトップナンバー車だ。
そう、山陽は阪急のように、0番から製造がはじまります。




>>それにしても5000系は1990年代中期まで作られていたわけですが、
それにMB3020が積まれていたことがすごい...。

>>ちなみに近鉄でもまだMB3020搭載車は残存しています。
「あおぞら号」20100系の機器を流用などした1000系、
そして本物のビスタカーのモーターの生き残り・2000系、2680系などです。
あ、でも2000系も2680系も3両ずつしかないし、さらには2680系は鮮魚列車だから
乗れないジャンね(汗
コメント (2)
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