敵は、我らの数倍の人数。平場での戦いは不利。不利な戦いは、これを避けるというのも武略でござる。
おれでさえ負けたのだから、おまえなどが…、といいたげな亀井の口振りであった。
「なるほど、仰せごもっとも…」と、元就は、むかっとした顔を隠さなかった。
「しかし、地の理にくらい遠国衆を先に立たせ、地の理に明るい当国衆が後方に遊んでいたとあっては、富国の御大将への聞えもいかがなものであろうか…。安芸、備後の侍どもは大内がおそろしゅうて居〇んでいたのか、とお叱りも必死。よし、されば、陣を固めて守る分にはこれ程の人数は不要でござろう。それがし、ただいまより帰陣いたす…」
この元就の思い切った言葉に、亀井はもちろん、並居る武将も驚いた。
「同じお叱りを受けるなら、不自由な戦陣で待つより、我が家へ帰り、酒など食らって首の座を洗って待ち申そう」
元就は、席を立ちかけた。
「待たれよ…」
宍戸元源が、元就に声をかけてから一座を見回した。
「毛利殿のご意見、それがしも合点いたした。亀井殿、いま一度、我らに合戦の機会を与えてくださらぬか。それがしも同じくお叱りを受けるならば、おもいきりよく戦ってからお叱りを受けたい」
宍戸元源は最年長である。年長者の言葉には、重みがあった。つづいて吉川経世が賛成した。中には余計なことをいい出したと思うものもいたろうが、反対もできず、備後・安芸の侍たちも同意した。
亀井は、長老がそのように仰せられるならばと、しぶしぶながら承知した。
「されば、吉田の殿、さっそくに軍評定じゃ」
宍戸元源は、元就をうながした。
元源は無愛想な老人である。取っ付きにくい男であったが、頼りになる人物ではなかろうかと、元就は思った。
うむうむ。
ちょいと人物を置き換えて想像してみよ~っと。
おれでさえ負けたのだから、おまえなどが…、といいたげな亀井の口振りであった。
「なるほど、仰せごもっとも…」と、元就は、むかっとした顔を隠さなかった。
「しかし、地の理にくらい遠国衆を先に立たせ、地の理に明るい当国衆が後方に遊んでいたとあっては、富国の御大将への聞えもいかがなものであろうか…。安芸、備後の侍どもは大内がおそろしゅうて居〇んでいたのか、とお叱りも必死。よし、されば、陣を固めて守る分にはこれ程の人数は不要でござろう。それがし、ただいまより帰陣いたす…」
この元就の思い切った言葉に、亀井はもちろん、並居る武将も驚いた。
「同じお叱りを受けるなら、不自由な戦陣で待つより、我が家へ帰り、酒など食らって首の座を洗って待ち申そう」
元就は、席を立ちかけた。
「待たれよ…」
宍戸元源が、元就に声をかけてから一座を見回した。
「毛利殿のご意見、それがしも合点いたした。亀井殿、いま一度、我らに合戦の機会を与えてくださらぬか。それがしも同じくお叱りを受けるならば、おもいきりよく戦ってからお叱りを受けたい」
宍戸元源は最年長である。年長者の言葉には、重みがあった。つづいて吉川経世が賛成した。中には余計なことをいい出したと思うものもいたろうが、反対もできず、備後・安芸の侍たちも同意した。
亀井は、長老がそのように仰せられるならばと、しぶしぶながら承知した。
「されば、吉田の殿、さっそくに軍評定じゃ」
宍戸元源は、元就をうながした。
元源は無愛想な老人である。取っ付きにくい男であったが、頼りになる人物ではなかろうかと、元就は思った。
うむうむ。
ちょいと人物を置き換えて想像してみよ~っと。