大雨の京都を後にして、南の島へ出かけた。鹿児島空港は雨も上がり雲も明るくなっていた。鹿児島から南へ飛ぶこと25分で、種子島に着く。生まれて初めての種子島訪問。種子島といえば、鉄砲の伝来と宇宙航空研究所のロケット発射の宇宙センターくらいしか思い浮かばない。勝手に想像していたイメージは、隣の屋久島と違って平坦な島に、緑のあまりない畑が広がっている島だった。しかし、種子島空港の上空まで来て、イメージが間違っていたことが分かった。種子島は緑豊かな島だった。
あまり高い山がないことは、隣の屋久島と比べて著しく異なる。それでも種子島は平坦とは言い難い。最高点は282mと低いが、常緑照葉樹林が山をこんもりと覆い尽くしている。もっとも平坦な場所は畑や水田が広がり、それは島と言うよりも本州の風景に似る。
今、種子島はタケノコのシーズンで、どこへ行ってもタケノコが出る。孟宗竹のタケノコではなく、もっと細いニガタケと呼んでいるタケノコだ。東北や北海道で好んで食べるネマガリタケほど細くはないが、ややそれと似ている。あくを抜く必要がないため、そのまま煮込んで、ゆがいて食べられる。柔らかく、美味しい。民宿の夕食には、このニガタケの天ぷらと伊勢エビが一匹出てきた。立派な伊勢エビで、体長25cmくらいある。取れたてではなく、ゆがいて冷凍していたみたいで、ちょっと残念だったが、それでも十分美味しい。伊勢エビを食べるのは久しぶりだ。
島の人に案内してもらい、島を見て回った。島全体を回っても、車なら3時間で回れる程度の島だ。海岸の風景が美しいのが印象的だった。なぜか? それは、海岸にほとんどコンクリート護岸や消波ブロックがないからだ。自然の造形がそのまま美しい海岸を作っている。砂浜はどこまでも広く、長い。砂がどんどん無くなりつつある本州の浜にはもう見られない光景が続いている。後背地には砂山が築かれ、昔の砂浜はかくあったのだろうと思わせる。この素晴らしい海岸の風景をいつまでも残して欲しいと思った。南の浜の先には、宇宙センターの発射台がそびえている。
そういえば、種子島はサーフィンのメッカとして知られているらしい。砂浜が素晴らしいし、そこに作られる波が、サーフィンで有名なハワイの波とよく似ているらしく、全国からサーファーが集まってくるらしい。その人たちの中で、何人かはこの島の美しさと波のすばらしさに魅せられて、島へ移住してくると言う。古い人ではもう20年になる。100人以上の若者がこの島に移住してきている。特に仕事があるわけではないこの島に若者がこれだけ移住して住んでいると言うことは、島の自然が豊かで、定職が無くても食べていける島の豊かさがあるということ。食べさえできれば、それ以上望まなくても良いほどサーフィンが楽しめるということでもある。
島の北端の喜志鹿崎から眺めた景色もまた素晴らしい。意外と近い種子島には、また来てみたいと思わせる何かがあった。しかし、隣の屋久島も行ってみたいが・・・。