私が就職したのはバブルの真っ只中。
あの頃、求人倍率は今よりずっと多く「売り手市場」と言われていた。
「就職協定」などというガイドラインは一応あったが
それよりずーっと前に内定をもらう人が殆どだった。
解禁日に他社を訪問しないよう
バスで温泉地などへ「監禁旅行」に連れて行かれた人もいるのではないだろうか。
さて、私が内定をもらった銀行では
入行前に「内定者のお祝いパーティー」が行われた。
これから一緒に仕事をする仲間と親睦を深める
という意味があったのだろう。
会場は銀行が保有する名古屋市内の施設。
着慣れぬスーツに袖を通し、足が痛くなるようなパンプスを履いて出かけた。
ホールには白いテーブルクロスのかかった丸テーブルがいくつも並び
ビール、ジュースなどの飲み物とオードブルが置いてあった。
男子8割、女子2割
左右にバッチリ分かれて固まっている。
女子はだいたい出身大学・高校別に
仲間の輪ができていた。
男子もたぶん同じだろうと思われた。
人事部長さんの乾杯音頭の後、
男子と女子に別れたまま歓談していたが、
勇気ある←その気がある男子達が先陣を切って
徐々に女子グループの方へ接近して話しかけた。
第一波が女子と会話し始めたのを見て、
男子グループの陣形はみるみるうちに崩壊。
幾つかのグループが女子に接触していった。
会場を見渡すと、遠くの方の男子グループの中に知り合いを一人発見した。
高校の同級生K君だ。
確か、彼は私立のW大学に行ったはず。
会うのは4年ぶりだ。
そっかー、地元に戻って就職したんだ。
一瞬目が合った。
あっちも私に気が付いたみたいなので、
軽く会釈してみたが、
向こうも同じように頭をぺこりと下げただけで、
それ以上近くに来ることはなかった。
彼は成績優秀な生徒だったが、とても内気な性格で
高校時代、女の子と話しているところを見たことがなかった。
内定者パーティーで思いがけず同級生の女の子に会ったからといって、
会場を横切って私のところに来てまで
「やぁ!久しぶり。元気?」
なんて声を掛けることなど考えられなかった。
私にしたって、こんなに大勢人がいる中で
つかつかと彼のところに寄っていって
「久しぶり~!」
と、声を掛けることなど、ちょっとできなかった。
会が終わるまでに歓談の輪がどんどん崩れて
もしかして近づくことがあれば話しかけよう、と思っていたが、
最後までその機会はなかった。
パーティは佳境に入り
あちこちに男女のグループができている。
楽しそうに会話が弾んでいるのは、地元の大学生グループのようだった。
私は地元私立N大のSさんと一緒に壁際に立っていた。
彼女とは、面接のときにたまたま待合室で一緒になり、
どちらからともなく話しかけた仲だ。
今のように携帯もない時代なので、もちろんメアドの交換などもない。
内定をもらったからといって、連絡することもなかったので、
今回のパーティで再会し、お互いびっくり。
「よかったね~。これからもよろしく。」
と喜んだというわけ。
二人とも、積極的に男子に話しかけるタイプではなかったので、
寄り添うようにグラスを持ったまま立っていた。
そこへやって来たのが、Sさんと同じN大の男子とその友達。
同じ大学ということで話しかけてきたのだ。
多分、「取りあえず自己紹介」するなど、
簡単な会話が取り交わされたのだろうが、
何を話したのか全く記憶がない。
パーティーがお開きになった。
内定者達は施設の外に出たが、
雰囲気は「栄に出て二次会行こうぜ。」だった。
↑地元以外の人、ごめんね。
「栄」というのは名古屋市の繁華街。
銀座、六本木、新宿、渋谷を足して4で割ったみたいな街。
パーティー中に出来たグループごとにタクシーに便乗し、
それぞれ散らばっていった。
私とSさんも外に出た。
・・・・Sさんと同じ大学の男子二人も引っ付いてきた。(汗)
「どこかでお茶しませんか。」
どうする?
顔を見合わせる私とSさん。
断る理由もないし・・・・
じゃあ、
「お茶だけなら。」
と、4人でタクシーに乗り込んだ。
程なく栄に着いたが、
男子二人はどのお店に行くか当てもないようだった。
「どこに行く?」
・・・・・どこに行くって、
あなたたちねえ・・・・・、
それは、そちらが決めることではなくて?(汗)(汗)
運の悪いことに雨もポツポツ降ってきた。
仕方がないので、地下街に潜ることにした。
「じゃあ、ここにしようか。」
入ったのは地下街の普通の喫茶店。
メニューには、コーヒー、紅茶、ソフトドリンクなどの飲み物と
軽食だってトースト、スパゲティーナポリタンくらいしかなく、
テーブルの端っこには、「チーズケーキ」の色あせた写真が印刷された厚紙が三角に折ったものが載っている、
そんなお店だった。(汗)(汗)(汗)
ここでの会話も全く記憶がない。
早く帰ることだけを考えていたからに違いない。
私一人が岐阜出身、あとの3人は名古屋市内だったので
「遅くなるといけないから。」
と断り、帰ることにした。
Sさんも
「私も。」
と席を立った。
「駅まで送ります。」
と、彼らは言ってくれたが、
「いいです~いいです~。」
と、二人とも丁寧に断り、
地下鉄まで走って逃げたのだった。(笑)
入行後の新人研修でSさんに会った時、彼女はこっそり教えてくれた。
「あのね、あのあと、学内で二人に会ったけど、
お茶したこと、すごく喜んでたんだよ。
今まで女の子と話したこともなかったみたいだから。」
あの頃、求人倍率は今よりずっと多く「売り手市場」と言われていた。
「就職協定」などというガイドラインは一応あったが
それよりずーっと前に内定をもらう人が殆どだった。
解禁日に他社を訪問しないよう
バスで温泉地などへ「監禁旅行」に連れて行かれた人もいるのではないだろうか。
さて、私が内定をもらった銀行では
入行前に「内定者のお祝いパーティー」が行われた。
これから一緒に仕事をする仲間と親睦を深める
という意味があったのだろう。
会場は銀行が保有する名古屋市内の施設。
着慣れぬスーツに袖を通し、足が痛くなるようなパンプスを履いて出かけた。
ホールには白いテーブルクロスのかかった丸テーブルがいくつも並び
ビール、ジュースなどの飲み物とオードブルが置いてあった。
男子8割、女子2割
左右にバッチリ分かれて固まっている。
女子はだいたい出身大学・高校別に
仲間の輪ができていた。
男子もたぶん同じだろうと思われた。
人事部長さんの乾杯音頭の後、
男子と女子に別れたまま歓談していたが、
徐々に女子グループの方へ接近して話しかけた。
第一波が女子と会話し始めたのを見て、
男子グループの陣形はみるみるうちに崩壊。
幾つかのグループが女子に接触していった。
会場を見渡すと、遠くの方の男子グループの中に知り合いを一人発見した。
高校の同級生K君だ。
確か、彼は私立のW大学に行ったはず。
会うのは4年ぶりだ。
そっかー、地元に戻って就職したんだ。
一瞬目が合った。
あっちも私に気が付いたみたいなので、
軽く会釈してみたが、
向こうも同じように頭をぺこりと下げただけで、
それ以上近くに来ることはなかった。
彼は成績優秀な生徒だったが、とても内気な性格で
高校時代、女の子と話しているところを見たことがなかった。
内定者パーティーで思いがけず同級生の女の子に会ったからといって、
会場を横切って私のところに来てまで
「やぁ!久しぶり。元気?」
なんて声を掛けることなど考えられなかった。
私にしたって、こんなに大勢人がいる中で
つかつかと彼のところに寄っていって
「久しぶり~!」
と、声を掛けることなど、ちょっとできなかった。
会が終わるまでに歓談の輪がどんどん崩れて
もしかして近づくことがあれば話しかけよう、と思っていたが、
最後までその機会はなかった。
パーティは佳境に入り
あちこちに男女のグループができている。
楽しそうに会話が弾んでいるのは、地元の大学生グループのようだった。
私は地元私立N大のSさんと一緒に壁際に立っていた。
彼女とは、面接のときにたまたま待合室で一緒になり、
どちらからともなく話しかけた仲だ。
今のように携帯もない時代なので、もちろんメアドの交換などもない。
内定をもらったからといって、連絡することもなかったので、
今回のパーティで再会し、お互いびっくり。
「よかったね~。これからもよろしく。」
と喜んだというわけ。
二人とも、積極的に男子に話しかけるタイプではなかったので、
寄り添うようにグラスを持ったまま立っていた。
そこへやって来たのが、Sさんと同じN大の男子とその友達。
同じ大学ということで話しかけてきたのだ。
多分、「取りあえず自己紹介」するなど、
簡単な会話が取り交わされたのだろうが、
何を話したのか全く記憶がない。
パーティーがお開きになった。
内定者達は施設の外に出たが、
雰囲気は「栄に出て二次会行こうぜ。」だった。
↑地元以外の人、ごめんね。
「栄」というのは名古屋市の繁華街。
銀座、六本木、新宿、渋谷を足して4で割ったみたいな街。
パーティー中に出来たグループごとにタクシーに便乗し、
それぞれ散らばっていった。
私とSさんも外に出た。
・・・・Sさんと同じ大学の男子二人も引っ付いてきた。(汗)
「どこかでお茶しませんか。」
どうする?
顔を見合わせる私とSさん。
断る理由もないし・・・・
じゃあ、
「お茶だけなら。」
と、4人でタクシーに乗り込んだ。
程なく栄に着いたが、
男子二人はどのお店に行くか当てもないようだった。
「どこに行く?」
・・・・・どこに行くって、
あなたたちねえ・・・・・、
それは、そちらが決めることではなくて?(汗)(汗)
運の悪いことに雨もポツポツ降ってきた。
仕方がないので、地下街に潜ることにした。
「じゃあ、ここにしようか。」
入ったのは地下街の普通の喫茶店。
メニューには、コーヒー、紅茶、ソフトドリンクなどの飲み物と
軽食だってトースト、スパゲティーナポリタンくらいしかなく、
テーブルの端っこには、「チーズケーキ」の色あせた写真が印刷された厚紙が三角に折ったものが載っている、
そんなお店だった。(汗)(汗)(汗)
ここでの会話も全く記憶がない。
早く帰ることだけを考えていたからに違いない。
私一人が岐阜出身、あとの3人は名古屋市内だったので
「遅くなるといけないから。」
と断り、帰ることにした。
Sさんも
「私も。」
と席を立った。
「駅まで送ります。」
と、彼らは言ってくれたが、
「いいです~いいです~。」
と、二人とも丁寧に断り、
地下鉄まで走って逃げたのだった。(笑)
入行後の新人研修でSさんに会った時、彼女はこっそり教えてくれた。
「あのね、あのあと、学内で二人に会ったけど、
お茶したこと、すごく喜んでたんだよ。
今まで女の子と話したこともなかったみたいだから。」