前回の続き、…
女の手にはウニの殻を半分にした長い何本もの剣先のある兜のようなものがあり、女はそれを私の頭にかぶせました。
兜の剣先がうねうねと動き出すと、昨夜の家内との言い争いの場面が目の前にありありとよみがえり、私は激しい怒りが込み上げてきました。
すると、女はメスをとって私の胸からおなかを一気に切り裂き、おなかを割って、私の肝臓を切り取ってしました。
女が取り上げた私の肝臓は、青筋をたてて湯気立ち、ピクピクと震動していました。
再び兜の剣先がうねうねと動き出すと、今度は先程の夢の恐怖が甦り、今度は私の腎臓を切り取り女はそれを私の鼻先に突き出しました。
私の腎臓は黒光りしながら凍てつき、落としてしまば脆くも砕けてしまいそうでした。
兜がうねうねと動き出すと、憂鬱な気分、思い悩む気分の情景が甦り、その度に私の肺も胃も切りとられてしました。
女は私の空ろになった体にグイと顔を近づけ、匂いでも嗅ぐかのように何かを探り始めました。
間近で見る女の肌は透き通った実にみごとな白い肌をしていてきれいでした。しかも、いい香りまでします。
それに、鼻筋の通った切れ長の涼しげな目をして…私の心臓はドキドキしだし、と、すかさず女は私の心臓を切り取ってしまいました。
そして、ますます顔を近づけると、女は耳を澄ますようにして私の心を探っているようでした。
その顔が私の目の前に来ると、女の唇と私の唇が触れそうなくらいになりました。
その唇がまた何とも言えないくらい魅力的でした。
覆いかぶさるようにする女の胸が私の開いた胸に触れ、その柔らかさといったら…
そこで、私はハタと閃き、それだけは勘弁! と、…
ガバッと起き上がりました。…
おとといの日曜日に、NHKスペシャル「人体」を見ました。
最新の科学で見ると、人体のあらゆる器官は互いに密接なネットワークでつながっていることが分かってきたそうです。
漢方ではそれを2千年以上前から把握していて、人体の各器官のつながりを考慮しながら病気に対応してきました。
そして、漢方では、感情も内臓と密接につながりあっていると考えているようで、つまり、肝臓と怒り、腎臓と恐怖、肺と憂鬱、胃と思い煩い、心臓と興奮などです。