「ホテル アイ・レアーリ全景」
リアルトから少し奥まった静かな場所にあります
隣には教会
イタリアに出発する二週間前のこと。一通のメールがありました。「ホテル アイ・レアーリ」からでした。私は旅行が近くなると、早くから予約をしているホテルには、「間違いなく行くので予約は保っておいて下さい」と連絡を入れることにしているのですが、そのメールに返信はあるものの、ホテル側からわざわざコンタクトがあるのは珍しく、おまけにPDFファイルまで添付されていたので何事かといぶかりました。実は、出発の三週間前、ナポリで当初予約していたホテルから「リニューアルの為しばらく閉鎖するので他のホテルを予約して欲しい」というメールがあったばかりなのでした。
「アイ・レアーリ」の用件とは…
サーモンのキャビア添えヨーグルトソース(メニューより)
なんと、クリスマスディナーのお誘いでした。本文には、「当ホテルを選んで頂いてありがとうございます~」から始まって、「24日と25日に私共のホテルのレストランで、クリスマスの特別の食卓の用意があります、ついては、お出でになりませんか?スタッフ一同、心を込めておもてなしを致します」とありました。
アドリア海のシーフードと赤カブのニョケッティ(メニューより)
過去、ベネチアでは同時期に「パレス・ボンベッキアティ」や「ルッツィーニ」「リアルト」など「アイ・レアーリ」と同格のホテルに宿泊しましたが、ホテルからこんなお誘いがあったのは初めてです。勿論、ホテルの稼ぎ時でセールストークではあるけれど、これは余程厨房に自信があるのと少しばかりの客への気遣いなのだとちょっと心が打たれました。
栗を包んだホロホロチョウのロールとじゃがいも&ペコロスのグラッセ(メニューより)
というのも、ベネチアのクリスマスの食事はどの店も予約が必須なので、これというレストランは当日ではなかなか入れないのです。おまけに家族経営のレストランやトラットリアなどは長い休みを取って閉店しているところも多いので、少し気の利いた食事をしようとなるとお店探しに苦労します。きっとそんな事情も見越しての企画なのでしょう。
口直しのマンダリンのソルベット(メニューより)
もっともこのホテルの事務方は、24日と25日の宿泊者名簿から食事のお誘いメールをコビー貼り付けで一斉送信~。私には「女性一人やけど駄目元で送ってみるか~」みたいにポチッとしたのだろうと思うしな^^;・・・多分に営業トークだと分かっていても、このお誘いはなんと心憎いことかと思います。添付ファイルには食事のメニューと金額が表示されていましたが、私はこのホテルの心意気に感じ、そしていつものちょっと行ってみよー精神で到着予定の24日のディナーに申し込みを入れたのでした。
ヒラメの香草焼きと宮殿風レンズ豆のクリームソース(メニューより)
しかし、この夜の宴の心配がただ一つ・・・沢山の料理が出てきっと食べきれないと思うこと・・・このホテルだけのことではないのですが、イタリアでコース料理を頼むと日本人にはどうにもこうにも多すぎるのです。4年前、ベネチアのトルチェッロ島のレストランでも経験しています。あの時は、カメリエーレ(給仕さん)がテーブルのそばで料理を取り分けてくれたので、「少なくして下さい」と頼めたけれど、一品料理が提供されたなら・・・
食べ切れん(-_-;)
イタリアのクリスマスの伝統的な、いわゆるブッシュドノエル(メニューより)
ハイ、心配はものの見事に的中しました。この日は昼食も抜いて、胃薬や消化薬も飲んで、ついでにストレッチもして気合いを入れてテーブルに着きましたが、やはり私には多かった^^;。でも料理は、どれもほんとに美味しくて、実に丁寧に作られている、おおざっぱな味付けは何一つなく繊細で、料理人の矜恃さえ感じました。スタッフの人たちも笑顔を絶やさず、かといって過剰なサービスもなく、各テーブルの雰囲気を邪魔しないように、静かだけれど心のこもった気遣いで非の打ち所がありません。女性一人のテーブルでも臆することの無いように何気ない目配りもあり、ゆったりと居心地の良い食事をすることが出来ました。
panettone fatto in casa(salse creme)
ホームメイドのケーキ塩クリーム(メニューより)
最後のデザートは、もう食べきれないからと断ったのですが、すると、奥から責任者らしい男性が出てきて、残してもいいので一口だけでも食べて行って下さい、心を込めて作りましたので、と言ってくれました。どんな場合も、食事を残すのはどうにも気が引けてならず、でもお腹は限界だし、ここで無理をして失態をおかすよりもと、私も丁寧にお断わりして席を辞しました。
イタリアに来ていつも思うのは、こんな時、同じ料金でいいから女性用に完食できるメニューがあればいいのに…と。周囲を見れば、全ての料理を食べきれないのは私一人ではありませんでした。
とはいうものの、このホテルへの高評価はレストランに関してもこうして納得もでき、私も100点満点を付けたいのだけれど・・・
アックアアルタになったホテルの前
黄色の矢印、わずかな距離でしたが…
26日の朝、ラヴェンナに行くのにホテルを出ようとしましたが、ホテルの前は、上記の写真の青線のところまで運河からあふれた水で浸かっていました。玄関口はアルミ製の専用扉で水は遮られていましたが、せめて橋のたもとまで、パッサレッレ(洪水の時敷かれる戸板)を敷いておいて欲しかった。そうしてくれていれば、あんなに濡れずに済んだのに・・・ジーンズの裾が塩吹くこともなかったのに・・・
ホテルからの出口はここしかないし、すぐそばには運河があって、この時期アックアアルタになる可能性は十分過ぎるくらいあるのに、この点のみがこのホテルの残念なところでした(^^)。
余談
もし、このホテルへ行かれるのであれば・・・
「Merceria due Aprile」(メルチェリア・ドゥェ・アプリーレ)と呼ばれる大通り
リアルト橋から、素直に町の中、サン・マルコ広場から続くメルチェリアの大通りへ出ます。すると目の前にディズニーストア(上記の写真、黄色の矢印)があります。そのすぐ横の小さな通りを青色の矢印のように曲がると、その通りが「カッレ・スタニェリ」になります。人一人が通るくらいの小さな道ですが、ここをまっすぐ行くと橋があって、渡ると「ホテル アイ・レアーリ」です。
私はいい加減な行き方をしたために、カッレ・スタニェリとは違う小道に迷い込んでしまいました。このあたりは知っているつもりになっていたのですが、ベネチアはやはり迷宮都市でした。分かればとって~も簡単(*^_^*)