民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「パパたちの元気で愉快なお話し会」 田中 尚人

2014年03月03日 00時06分02秒 | 民話(語り)について
 「パパたちの元気で愉快なお話し会」 田中 尚人(パパ’s絵本プロジェクト/編集者)

 出典 「心をつなぐ読み聞かせ絵本 100」 別冊 太陽

 自分の子どもと読んで、ウケたりウケなかったりした絵本が、
ほかの子どもたちにはどのように受け取られるだろうか?
自分の家庭の絵本時間を、ほかの子どもたちとも共有できたら、
もっときっとずっと楽しくなるのでは?
父さんだからこその絵本や、父さんが読んだ方がグッとくる絵本があるのでは?
これが僕らの活動のきっかけだ。

 中略

 父親が絵本を読む、ということはまだまだ珍しいことであるらしく、実態としては、
絵本=母親が読むもの、という意識が強い。
最近では、「将来、キレない子どもにするために」「早く文字を覚えさせるために」
「感受性豊かで、もの識りな子どもにするために」という打算や強迫観念が先行して、
薬や教科書でも与えるような思い込みとなって、
ただでさえ忙しい育児ママの仕事をひとつ増やしつつあるのではないだろうか。
そんな義務感が先行した絵本時間は、苦痛以外の何ものでもなく、本嫌いになって拒絶をするか、
「聞き分けのいい子」を装ってテレビでも観るように受け流すしか子どもの選択肢はなくなってしまう。

 中略

 僕らは、「読み聞かせ」についての知識も経験もなく、
集団を相手にした時の話し方について訓練を受けたこともない。
 練習すらしていないのだからヘタなのは仕方ないが、僕らが大切にしているのは、
文字を読むことではなくて、僕ら自身の声や言葉を子どもたちに伝え、
絵本をツールにして子どもたちと言葉のキャッチボールを行うこと。
子どもたちからは毎回意表をつくような、みずみずしい反応が戻ってくる。
その反応にオトナの僕らがどれだけ同じ温度感でアドリブできるか。

 これはとてもスリルに満ちている。
同じやり方は決して通用しない。
テレビや教育現場などで「受け取るだけ」、はっきり言えば「黙って聞き流す」ことに
慣れきっている子どもたちの言葉の窓を開けるのはなかなか手が焼けるけれど、
どんな子どもだって面白いこと、楽しいことに無関心なはずはない。
子どもたちの遠慮ない突っ込み、抜けるような笑い声や手加減のないブーイング、驚き、疑問、
恐れの表情は、僕らにとって、見せかけのオトナ社会とは反対に、
確かな手応えをじかに受け取ることのできる貴重な体験となっている。

 以下 略