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子どもを防犯訓練に参加させてよいか

2006-06-10 14:55:45 | 子ども・子育て・保育
 保育園、幼稚園では火災訓練をやるのは恒例になっています。市町村によっては、その頻度も規定しているところもあります。
 具体的にはしかるべき合図の下に、全園の子どもが一斉に行動して外に避難して所定の場所に集合するのが一般的です。給食室以外は火を扱わないので、実際の火災は想定しにくいのですが、消防署の指導もあってのことでしょう。
 幼い子どもたちは実際を想像しにくいので、緊迫感をあおるのは先生の自己満足であって、子どもの心は恐怖心で縮んでしまいます。先生たちが落ち着いて指示と誘導をすれば、子どもたちは平常心で訓練を終えられます。重点は落ち着いてすばやく行動することです。災害の訓練も同じことがいえるでしょう。

 数年前から防犯訓練が加わりました。警察署の指導と連携でおこなう場合が、一般化しています。このところの子どもを対象にした犯罪状況から、無理からぬことです。
 子どもをねらった犯罪は、不審者侵入型と連れ去り型があります。園でやるのは不審者侵入型に対応するためのものです。
 これは警察官等が不審者の役をして侵入をするという、リアルで実践的な訓練をする場合が多いようです。このように実際を想定した訓練に、子どもを参加させてやるところがあります。リアルだけに恐怖心を持つ子どもが多いと思われます。もし恐怖心を持たなくったら慣れたということであり、それを訓練の成果といえるか難しいところです。

 神奈川県のある大都市では、子どもの参加をさせないでやっています。安心した暮らしの場でもある保育園で恐怖体験をさせるべきではないという、警察署の見解を反映させてのことです。
 ある保育園では、子どもがいないときに警察署の指導の下に、保育士だけでやりました。園舎の条件から、一番ねらわれると想定される保育室に侵入した、という設定でおこなわれました。発見した保育士が笛を吹いて発生を知らせて、それぞれ分担にしたがって行動するわけです。
 模擬訓練とはいえ、保育士は相当な恐怖体験をしたのでした。そのためしばらくの間、笛を首にぶら下げたまま離せなかった保育士がいたことに象徴されるように、職場に恐怖体験の後遺症が残ったとのことでした。

 わたしはそのような保育士の状況を、理解できます。恐怖体験として引きずってしまうのが普通だと思います。そのような認識から、子どもに防犯訓練はさせるべきではないと考えています。
 模擬とはいえ、安心な場所であるべきところでの恐怖体験は、子どもにとって「うそっこ」であっても切り返ができなく、混沌として引きずってしまいます。まめまきのオニの怖さとは、違うのです。しかもかりに実際犯罪が起こった場合、子ども自身で被害から回避するための行動をとることは無理なことです。
 子どもを参加させることは、安心の場でなければならない保育室を不安空間にしてしまします。大人の業務上の都合に、子どもを引き込んではいけません。もしやのことが起きたときの対策を講じていた、というアリバイの意味であってはなりません。

*類似したテーマで、04-12-20のコラムに書いています。

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