世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

野田佳彦の獣道 何をすべきか判らないは、何でもしてしまう怖ろしさ

2011年10月12日 | 日記
自由報道協会が追った3.11
自由報道協会・編
扶桑社

 

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野田佳彦の獣道 何をすべきか判らないは、何でもしてしまう怖ろしさ


  菅直人のように、訳の判らないこと事ばかりするくらいなら、何にもしない野田政権は安全だろうと思っていたのは大間違いのようだ。筆者のミスジャッジだ。何がしたい政権なのかと思っていたら、なんとなんと、何でもやっちゃう政権だったようだ。  

 福島原発による放射能汚染問題も、“除染と云う耳触りのいい言葉”で化粧直しをし、放射能をたらふく食べたオオカミが、お婆さんに化けて赤ずきんちゃんを襲おうとしている如きだ。放射能がそんなに簡単になくなるのであれば、“プルトニゥムなんて食べても大丈夫”に近いブラック・ユーモアである。環境省だか細野だか知らないが、年間1ミリシーベルトと云う日本の法律を、現実に合わせて、5ミリから10ミリシーベルトでも良いかもな~とか、2年後には汚染地域を徹底的に除染、半減させると科学的半減期を盾に、除染によりと嘘をつく。セシウム134の半減期はたしか2年だよな、細野が磐梯山のオハラ庄助になって“モナって”いても、勝手に半減するンだよね。(笑)

 NYTによると、「モラル喪失、金の亡者国家日本」、自国での原発は縮小方向、原発開発は海外で!福島原発がいまだに放射能を出し続けている現在においても、海外に原発を売り込もうとしている。古い原発に最新の安全装置をつける義務さえ怠った国が、最高の安全を確保すると主張している等と非難揶揄される始末。NYTに馬鹿にされたら、そりゃオシマイってものだよ。  

 11月のハワイAPECまでに、オバマの大統領再選の追い風になる何かを土産として持って行かざるを得ない野田佳彦は、普天間移設問題はクリアしそうもないので、川端達夫沖縄相、一川保夫防衛相、玄葉光一郎外相、北沢俊美前防衛相、前原誠司政調会長等々と沖縄現地訪問で努力のアリバイ作りに奔走するようだ。この問題は、金を幾ら積んでも仲井真知事は立場上首を縦に振るわけにはいかない。ウッカリすると、血をみる争いにまで発展、最終的には国民の嫌米魂に火をつけるリスクまで背負うことになる。日米同盟そのものの問題に波及する。  

 一方、厚生労働省は、年金の支給開始年齢を68歳に引き上げる案を社会保障審議会年金部会に示した。68~70歳を支給年齢に引き上げる案らしいが、これは役人の得意の“脅し”と云う事だ。そんなことにならない為には、社会保障と税の一体改革イコール消費税値上げへの布石のような冗談だ。2025年以降の国民の平均寿命が、今後とも伸びる前提のようだが、彼らが40歳前後の人々の内70歳以上生き伸び、年金が貰えるか博打のような話になってきた。猛烈に消費が冷え込むような話だね。  

 もう今さらTPPの話に言及するのも馬鹿臭くなったが、民主党の半分は、実は自民党以上に隷米主義者が多かったと云う事実を見るに至っている。党も政府も前のめりなのだから、11月のハワイAPECのお土産はTPPと云う事なのだろう。少なくとも野田と前原は、そう思っている。経団連、読売、朝日、外務、経産が推進キャンペーン状態だが、この日米同盟の糞味噌一緒協定が、日米関係を結果的に破壊する協定である可能性は高く、“角をためして牛殺す”と云う現象を生むかもしれない。  

 玄葉などは、嘘八百を「外に目を見開いて打って出ないと、子供、孫に豊かさを引き継げない。ルールメーキングに日本がしっかり関与するのは大切なことだ」、「ルールメーキングに参加して、条件が合わなければ抜けるという簡単な話ではない」と“交渉参加”イコール“参加”だと語るに落ちた。また、「アジア太平洋40億の内需を日本の内需と考え、外に目を見開くべし」とも言ったが、トンデモナイ嘘である。アジアの主要国、中国、韓国、台湾、インドネシア、タイ、フィリピンなどはシカトしているのだから、精々3億の内需じゃないのかね?米国市場を勘定に入れても意味ないぜ!  

 野田政権を、野田ではない誰かが動かしているようにさえ思える。菅政権は迷走だったが、野田政権は確信犯的に誰か、何処かが動かしている。それは官邸の内部にいるのだろうが、最終的には霞が関と云う事になりそうだ。まぁ、上記のすべてがアリバイ作りの行動と云う見方も出来ないことはないのだが、相当不安にもなる。小沢一郎が尿道結石で痛がっている間に、裁判で拘束されている間に・・・?なんとかならんもんですかね、小沢一郎さんよ!


権力 VS 調査報道
高田 昌幸,小黒 純
旬報社


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民主主義とグローバル資本主義経済 縄文の心は金儲けに負けるのか?

2011年10月11日 | 日記
プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)
マックス ヴェーバー
岩波書店


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民主主義とグローバル資本主義経済 縄文の心は金儲けに負けるのか?


 民主主義とか、自由主義とか、資本主義はそれぞれ異なる次元の概念ではないのだが、世界の先進国家においては、概ね国家体制構築上の共通認識概念になっている。いまさら個々の概念について言及する必要はないだろう。そして、それらの概念が、表向き成立しているが如き見せかけも成立している。

  アメリカにおいても、日本においても、フランス、ドイツにおいても、民主主義と自由主義と資本主義は表面的に成立している。しかし、実態はどうなのか?と個別の国家をざっと検証してみるだけでも、幾つかの部分で「はてな?」と云う問題を抱えている。どのような国家体制であっても「はてな?」は常につきまとうだろうが、歴然たる「はてな?」は是正の余地が判りやすくピックアップが可能だ。

  しかし、巧妙に民主主義と自由主義と罪刑法定主義(法治国家)と資本主義が複雑に絡み合っている20世紀後半からの先進諸国の、それぞれの概念は資本主義と云う概念の為にのみ存在する補完概念に成り下がっているようで仕方がない。おそらく、概念の階層を無理にでも作るとすれば、民主主義、法治、自由主義、資本主義の順に並ぶべきではないかと思うのだが、どうも現実はかなり異なっているようだ。

  筆者の感慨に過ぎないので、政治社会学者のように論理的に説明することは困難だが、どうも資本主義と云う概念がすべての概念の上位に位置しているのが現実の社会であるように思える。この資本主義と云う概念は日々変化し、その姿を七変化させていく。民主主義と自由主義と罪刑法定主義(法治国家)等々の概念は滅多に動くことはないので、資本主義の七変化に好きなように支配されているように見える。動きの鈍いさが弱味となり、ブンブン蜂に刺されっぱなしになっているようだ。

 動きが鈍いと表現したが、民主主義と自由主義と罪刑法定主義(法治国家)がいとも容易く、資本主義のように軽佻浮薄に動きまわられては、それはそれで厄介なこと、不動に近い方が良いのだろう。ただ、現実の世の中が、人間社会の核となるべき概念の上位にいるが如き状況が問題なだけなのだろう。その原因の多くが「金が欲しい」と云う言葉に集約される部分が、如何にも哀し過ぎる。

 資本主義の実態が、グローバル経済と云う形で成長したのも、合理的に「金が欲しい」をつきつめて行くと、国境を度外視して「人モノ金」が行き来する方が多くの「金が欲しい」に合致すると云う事になる。今や「金が欲しい」は先進各国にとって“イデオロギー”に替わる国家国民の“バイブル”にさえなっているのかもしれない。「金が欲しい」が人間自身を呪縛しているように思われてくる。

  国家や社会、企業が「金が欲しい」と云う“正当性が担保された欲望”は、当然のように一人ひとりの個人をも呪縛する。“最終的に金だろう?”と云う言葉が人々の間で常識のように語られる世界が、今の先進諸国の諸問題のすべからくを網羅して語れるとさえ思えてくる。今や、“民主”も“自由”も“信条”“生命”さえも、資本の前に跪く世界が展開しているのだな~、とつくづく思うのだが、時計の針を逆さまに回せるとも思えない。進みながら、その時の流れを変える何かを人類が見つけ出さない限り、どう考えても、行き着くところは“破滅”なのだろうと、想像してしまう。

  当たり前すぎる現実を、わざわざ書きだす必要はないと云う人々も多いだろうし、“金と生き方は別だ”と主張する人々も、それは居るに違いない。しかし、筆者の目から、先進諸国の多くが「金が欲しい」又は「金をくれ」で明け暮れているとしか思えない。資本主義で生きる人々が逃れられないジレンマだとニヒルに言い、見て見ぬふりも可能だろうが、「はてな?」と云う問題意識も失いたくはないものだ。

 民主主義と自由主義は見せかけになり、「金が欲しい」の資本主義に支配された国家や国民は、異なる概念の区別すら出来なくなる惨状に見舞われている。ここ数年の流れを観察していても、その糞味噌すべてが「金が欲しい」で集約される。少子高齢化と社会保障、財政健全化、普天間移設、政権交代、TPP、原子力発電、震災復興等々すべての話題の中心は「金が欲しい」なのだから、ウンザリだ。

 それでいて、「政治とカネ」を錦の御旗に、検察は暴走する、裁判所も暴走する。そもそもが「金が欲しい」世界を作っておきながら、「政治とカネ」を旗印に、民族の独立と縄文の心を理念に掲げる政治家が袋叩きに遭う。本当に面白い不条理だ。たしかに、人間が不条理な生き物であることは認めるとしても、強盗が、盗んだ額がオマエの方が多いから罪人で(特定の政治家を指してはいない)、俺達はシステムの中で盗んだから罪人ではない、と言っている霞が関の役人たち、東電の経営者であり、債権者であり、株主なのだろう。そして、これこそが民主主義だと嘯くのだから、堪らん気持になってしまう。

  日本が近代国家にあらずと小室直樹は言ったのだが、近代国家と云う駅を停車することなく通り過ぎて、“ならず者国家”とか、“奈落国家”とか、そう云う駅に停車しそうな按配に思えるのは、筆者の杞憂なのだろうか。

  勿論、それでは資本主義に替わるべき、次なる何かが見えているのかと云うと、当然だがまったく見えていない。ただ、自由も民主主義も実生活も民族的自立も、それらのものどもが、資本主義とか、グローバル経済とか、金融資本主義の僕になっている現在の状況は、修正されるべきだと強く思う。おそらく、このような世の流れにおいては、人の幸福の尺度が「カネ」と云う目盛りだけになるようで、酷く情けない気分になってしまう。


日本いまだ近代国家に非ずー国民のための法と政治と民主主義ー
小室 直樹
ビジネス社


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いつまで、米国の尻にへばりつくのか TPPは年次改革要望書の総仕上げ

2011年10月10日 | 日記
拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる (文春新書)
関岡 英之
文藝春秋


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いつまで、米国の尻にへばりつくのか TPPは年次改革要望書の総仕上げ


 10日野田総理は、≪環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加問題について、「早急に結論を得るのが従来の姿勢だ。政府・民主党内で議論を始めるように指示した」と明らかにした。政府・民主党は11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに結論を出すことを視野に入れており、首相の指示は意見集約を加速させる狙いがある。≫と時事通信が伝えている。

  筆者は、TPPは明らかに日本市場の米国化であり、既に破綻したとも見られるグローバル市場原理主義経済の更なる拡大に過ぎないと主張している。早い話、短絡的に表現すると、「日本のすべての市場を占領したい」と云う、米国の意志と云う事だと思う。つまり、小泉政権時代にあった「年次改革要望書」が「日米経済調和対話」に名前を変え、日本市場の全面的開放を要求している。 この米国大使館の公式HPに掲載されている「日米経済調和対話」を読む事で、TPPの実体は明確になるのだろう。

 「交渉参加」が「TPP参加」を即時決定するものではないだろうが、「日米経済調和対話」を読む限り、米国が日本の独立を望んでいない現実がよく理解できる。長文だが、参考掲載しておく。

*米国大使館:東京・日本の公式サイトより掲載
≪日米経済調和対話
*下記の日本語文書は仮翻訳であり、正文は英文です。
2011年2月(仮訳)

 米国政府はこの新たな日米経済調和対話を通じ、新たな機会を創出し、新規事業や貿易を促進し、公共の福祉を増大させる措置を講じることによって、 両国の経済成長を支援する機会を歓迎する。米国政府は、実行可能な範囲において、両国のシステム、規制アプローチ、その他の措置や政策の調和に向け、この共通の目標を推進する形で日本と緊密に協働することを期待する。
 日本との協力関係の強化は、この対話において米国が特に重視する領域である。情報通信技術、知的財産権、農業関連措置やワクチンといった領域における両国の協力はすでに良好な成果をもたらしている。この対話の下、米国は共通の目標の達成に向け、当該領域ならびにおそらくはその他の領域においても、 引き続き日本とのさらなる調和と連携を促進する。

米国側関心事項

情報通信技術(ICT)通信
周波数:オークションの活用を認めるなど、 日本の周波数割当プロセスにおける客観性、透明性、説明責任を向上させる措置を講じ、より一層の競争とイノベーションを促進する。
支配的事業者規制:NTTやその関連会社に 関わるいかなる改革も、特に新規市場参入者に対して競争的機会を保証する手段を十 分に提供するものとなるようにし、政策決定プロセスがNTTからの不当な影響を受けず、開放的かつ非差別的な方法で進められるよう確保することで、競争や消費者による選択を推進する。NTTグループの再編に関わるいかなる提言もパブリックコメント手続きの対象とする。
移動体接続料:移動体着信料金が、日本の法律に沿い、効率的な経営の下でのコスト志向の原則に基づいた水準に設定されているか否かを評価する調査を開始することで、消費者の利益につながる公正な価格設定慣行を確保する。融合サービスおよびインターネット対応サービス:融合サービスおよびインターネット対応サービスに関わる規制が策定または更新される際、日本の規制アプローチが、インターネット配信映像など革新的製品やサービスの提供を可能とすること、また支配的事業者が市場の競争を歪めないことを確保する。
透明性:総務省の規制・政策決定機関としての役割に鑑み、審議会・研究会等を含む、総務省の政策決定プロセスにおける透明性と説明責任を向上させる措置を講じることで、新たな技術について公正な市場機会と消費者による選択を確保し推進する。
国際協力:ICTに関わる共通の懸念や関心 事項について、重要分野における共通原則の策定等を通し、WTO等の場で引き続き協力の機会を探る。

情報技術
政府のICT調達:国際的な技術標準や傾向を反映し、技術中立性や相互運用性の原則に沿った日本政府全体に適用される政策の実施等を通して、政府のICT調達の競争、透明性、公平性を高める。
医療IT:国際標準に基づき、技術中立性や 相互運用性を促進し、患者自身による自らの医療記録へのアクセスを向上させる医療ITを早急に導入することで、日本の患者にとっての医療の質と効率性を高 める。
クラウド・コンピューティング:社会全体で 成長やイノベーションを促進するクラウド・コンピューティング技術の潜在力を最大化するために、国境を越えるデータの自由な流れを促進する。データサービスについて提供場所が日本国内か国外かにかかわらず非差別の原則を採用する。データセンターやクラウド・コンピューティングに関わる規則の策定・施行に際し、透明性を確保し、国内外の産業界の意見を聞く。
プライバシー:政策の標準化や、ガイドラインの一貫性のある施行を通じ、個人情報保護法の実施について中央政府機関全体でさらなる統一化を図る。データの適切な共有を促すために、現行法の規定と運用を再検討し、データ保護に対するバランスの取れたアプローチを採用する。オンラ イン広告における個人情報の利用に関わるガイドラインの策定に際し、透明性を確保し、国内外の産業界の意見を聞く。

知的財産権
技術的保護手段:主に技術的保護手段の回避のために使用される機器やサービスの取引や、回避という不正行為に対して、より包括的な禁止規定を提供し、また必要に応じ、十分な民事・刑事上の救済を提供する等、アクセスコントロールおよびコピーコントロールに対する救済手段を提供することにより、技術的保護手段(およびこの技術的保護手段を採用するビジネスモデル)の確固たる保護を確実にし、権利者自身の著作物を保護する能力を高める。   
著作権保護期間の延長:OECD諸国や主要 貿易相手国での傾向を含む、新たな世界的傾向と整合性を保つよう、オーディオビジュアル作品に加えてすべての著作物に関わる著作権保護期間を延長し、著作 権保有者の保護を強化する。
オンライン上の海賊行為:オンライン上の侵害に対するエンフォースメントを強化するために、法律、規制、その他の方策を更新する措置を講じる。またオンライン上の海賊行為に対処するため、インター ネット・サービス・プロバイダーや権利者を含む、利害関係者間の協力的取り組みを奨励する。
エンフォースメント手段:権利者からの申し立てを必要としない、警察や税関職員および検察の主導による知的財産権の侵害事件 の捜査・起訴を可能にする職権上の権限を警察や税関職員および検察に付与し、権利者への実効的な救済手段として著作権や商標権侵害に対して予め決められた法定損害賠償の制度を採用することで、知的財産権の侵害に対するエンフォースメントを強化する。
保護の例外:すべての著作物を対象に、日本 の著作権法の私的使用に関する例外規定が違法な情報源からのダウンロードには適用されないことを明確にする。また、日本政府および審議会等が著作権保護に対する制限や例外に関わる提言を検討する際には、完全な透明性と、利害関係者が意見を提供する有意義な機会を確保する。
特許法と手続き:ワークシェアリングの効率 性の促進により、特許手続きを簡素化する。中小企業や大学関連機関等において一層のイノベーションを促す環境整備に向けた施策を検討する。 透明性:デジタル環境などにおける著作権の適用やその他の知的財産権の問題に影響を及ぼす政策やイニシアチブを日本政府が策定・更新する際には、完全な透明性と利害関係者が意見を提供する有意義な機会を確保する。 日米協力:国内および世界中での知的財産権 の適切かつ有効な保護とエンフォースメントを確実にするため、日米間でのさらなる協力を促進する。

郵政
保険と銀行サービスにおける対等な競争条件: 市場における活発な競争を通して消費者の選択肢の拡大を推進するため、日本郵政グループ の競争上の優位性を完全に撤廃し、規制面ですべてのサプライヤーに同一の待遇と執行を確保することにより、保険と銀行サービスにおいて日本のWTO上の義務と整合する対等な競争条件を確立する。
郵政改革:日本政府や関連する審議会などが、競争条件に影響を及ぼす日本郵政グループ関連の施策の変更を検討・実施する際には、完全な透明性を確保し、利害関係者が意見を提供する有意義な機会を提供する。日本が将来的な改革を検討する際には、対等な競争条件に関する長年の懸案事項に対処し、日本郵政グループに追加的な競争上の優位性を与えないようにする。
日本郵政グループの金融会社の業務範囲:かんぽ生命保険とゆうちょ銀行の業務範囲の拡大を認める前に、日本郵政グループと民間金融機関の間に対等な競争条件が整備されていることを確保する。
国際エクスプレス輸送における対等な競争条件: 競合するサービスにおいて他の国際エクスプレス輸送サービス業者が課されるものと同様の通関手続きとコストを日本郵便に課すことや、独占的な郵便事業の収益が日本郵便のEMS(国際スピード郵便)の補助金となるのを防ぐ措置を取ること等により、国際エクスプレス輸送分野において効率的な競争と対等な競争条件を促進する。

保険
共済:健全で透明な規制環境を促進するため、共済と民間競合会社の間で、規制面での同一の待遇および執行を含む対等な競争条件を確保する。
保険の窓口販売:健全な消費者保護を確保しつつ消費者の選択肢の拡大と利便性の向上を促すため、銀行の窓販チャネルについて、事実に基づいた透明性のある見直しを適時に行い、必要な変更は、利害関係者から意見を得る有意義な機会を設けた上で、グローバル・べストプラクティスを考慮に入れつつ行う。
生命保険契約者保護機構(LIPPC):現行制度が2012年に失効する前に、より効率的で持続可能なセーフティネット制度を作ることを確保する。日本政府が制度の改訂を検討する際は、完全な透明性の維持を確保する。
外国保険会社の事業の日本法人化:日本において支店方式で営業を行っている外国保険会社が日本法人に事業を移行したいと希望した場合、保険契約者および債権者を保護する一方で、事業の継続性を維持するような途切れのない形で移行できるよう確保する。 独立代理店:保険商品の第三者販売チャネルの競争力を強化するための新たな措置を検討する。

透明性
パブリックコメント手続き(PCP):より長いコメント期間を設けることや、最終的な決定が下される前に利害関係者の意見が十分に検討されることを確保するための追加的な方策を取るなど、日本のPCPを強化する方策を通じ、状況の変化や外国の利害関係者を含む利害関係者の懸念に対して開かれており、これに対応していると評価される強固で有意義なパブリックコメント制度を構築する。
審議会など:審議会等の設置や運営および利 害関係者と国民に対する審議会等の開放性に係わる要件を厳格化することにより、利害関係者と国民に影響を与える可能性がある新規の政策や規制を検討する際 に政府が設置する審議会等の透明性と包括性(インクルーシブネス)を向上させる。 規則の解釈:規則に関して一般的に適用される解釈の公表を政府当局に義務付けることにより、透明性、予見可能性を向上させ、規則の順守を促す。

運輸・流通・エネルギー
自動車の技術基準ガイドライン:革新的かつ先進的な安全機能を搭載した自動車に関する自主的ガイドラインを定める際の透明性を高め、また自主的ガイドラインが輸入を不当に阻害しないよう確保することで、米国の自動車メーカーがこうした自動車を日本の消費者により迅速かつ負担のない形で提供できるようにする。 再生可能エネルギーに関する規制制度:風力発電事業の許認可も含め、関連する規制制度を簡素化・統一することで、より多くの再生可能エネルギー技術の採用を推進する。 申告のための通関事務所の選択:輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)を利用する通関業者が利便性のよい通関事務所でエクスプレス貨物の申告ができるよう認め、円滑かつ効率のよい通関手続きを促す。 税関職員の共同配置:民間企業所有の保税地域への税関職員の派出を認め、書類審査のための通関事務所への移動時間を無くし、税関職員が現物検査を行うまでの待ち時間を減らすことにより、通関手続きの効率を向上させる。 免税輸入限度額:現行1万円の免税輸入限度額を最低でも二倍に引き上げることで、円滑な物流を可能にし、税関職員の仕事量を削減する。

農業関連課題
残留農薬および農薬の使用:日本の最大残留基準値設定に関わる農薬の審査、農薬の収穫後利用に関わる枠組み、基準値違反に対する執行政策など、未解決の農薬関連の問題に対処することにより、新規に開発されたより安全な農薬のさらなる利用を促進し、日米両国の政府関係者の協力を促す。議論では、国際的な基準と慣行が考慮されるべきである。 有機農作物:科学に基づいた基準を有機農作物に使用される生産資材の環境への安全性の評価に適用し、有機農産物の貿易の強化を目的に現行の残留農薬政策を修正し、さらに両国市場において有機農産物の表示に取り組むために協力する。 食品添加物:日米両政府の協力体制を強化するとともに、FAO/WHO合同食品添加物専門会議によって安全と認められており、かつ世界各国で使用されている46種類の食品添加物の審査を完了することにより貿易を促進する。現在、6種類の食品添加物の審査が終了していない。 ゼラチン:ゼラチンの市場へのアクセスを提供することによって科学に基づいた国際的なガイドラインと整合性を持たせる。

競争政策
執行の有効性:調停手続きの導入、過度な独占禁止法(独禁法)適用除外の廃止、企業結合の審査における効率性および透明性の改善、大学院レベルの経済学の教育を受けた職員の増強、適切な執行問題に関する外部専門家の採用、独禁法に関する裁判官向け教育プログラムの構築などを通じ、効果的な独禁法の執行プログラムがもたらす利益を増大させる。 手続きの公正性:公正取引委員会(公取委) の行政審判や司法審査制度の改革、公取委の執行上の必要性に沿った形での公取委調査における保護手続きの強化、公取委が命令を出す前に企業が疑惑に対して申し立てを行なう十分な機会の確保などを含む、公取委の行政および調査過程の手続きの公平性と透明性の改善を通じて、公取委の執行決定に対する信頼性を高める。 談合:特に調達担当職員の利益相反を排除するための規定の強化や、官製談合を排除する取り組みの促進、公取委の課徴金減免制度の適用が認められた企業に対する行政措置減免制度の拡大などの措置を通じて、政府調達における競争を促進し談合を排除する。

ビジネス法制環境
国境を越えたM&A:対日 M&A活動を阻害している可能性のある法律、規制ならびに税制上の要件の見直しや、買収防衛策の導入に際しての一般的な株主利益の保護強化などの 取り組みを通じて、日本がより活発な対日M&A活動から恩恵を受けられるようにする。 コーポレートガバナンス:真に独立した取締 役の役割強化、株主投票のメカニズムの有効性の向上、企業開示の充実および少数株主保護の強化などの国際的なベストプラクティスの促進を通じて、効率的な商慣行および株主に対する経営の説明責任を改善する。 法務サービス:外国法事務弁護士(外弁)による専門職法人の設立を認めること、外弁の法律事務所が国内に複数の支所を設置することを認めること、インターナショナル・リーガル・パートナーシップにおいて弁護士が対等なメンバーになることを認めること、また外弁の資格要件の見直しを行なったり認可手続きおよび報告義務の簡素化を図ること等によって、日本における国際的法務サービスへのアクセスを拡大する。

医薬品・医療機器医薬品・その他
新薬創出・適応外薬解消等促進加算(新薬創出加算): 新薬創出加算を恒久化し、加算率の上限を廃止することにより、ドラッグ・ラグ解消を促進し、研究開発への誘因を強化する。 市場拡大再算定:市場拡大再算定ルールが企業の最も成功した製品の価値を損なわないように同ルールを廃止もしくは少なくとも改正し、日本における当該製品の開発を奨励する。 外国平均価格調整(FPA)ルール:日本における価格が外国平均価格より高いか低いかにかかわらず、製品が平等に扱われるようFPAルールを改定し、日本の薬価政策の公正な実施を保証する。 14日の処方日数制限:患者の利益ならびに 医薬品へのアクセスを考慮し、新薬の14日処方日数制限ルールを改正し、安全性の保障に必要な最低限の制限にする。 ドラッグ・ラグ:日本における革新的新薬の早期導入を促進し、ドラッグ・ラグを縮小するよう次の措置を取る。適切な場合には 東アジア諸国における臨床治験データの受け入れを検討する。医薬品の承認審査目標が達成され、事前相談の申し入れへの対処が迅速に行われるよう保障する。 最近の業界との積極的な交流を基に、医薬品医療機器総合機構(PMDA)ならびにスポンサーが、質疑応答プロセスの支援に必要な実務要員をより効率的に計画・管理するために役立つ明確なプロセスを構築する。 行政審査期間:年4度の薬価収載を月一度へ増やし、日本の患者の新薬へのアクセスを迅速化する。 手数料:2012年から2017年までの手 数料の規模および評価指標などを含む、次期手数料制度の詳細について業界との協議を開始し、日本の薬事承認プロセスにおける効率性の向上に対する業界の継続的な貢献を奨励する。 血液製剤:国内自給、表示、規制、保険償還 の問題についての米国業界との協議を通じ、日本における患者の血液製剤へのアクセスを拡大する。関連する委員会等において、業界が情報、意見および証言を提供する機会を設ける。

ワクチン
ワクチンに対するアクセス:日本全国におけるワクチンの供給を促進する長期的解決策を見つけて、2010年に採用されたHIB、肺炎球菌、HPVワクチンについての措置を拡充する。透明性:推奨ワクチン特定のための明確な基準およびスケジュールを設け、新ワクチンの日本の患者への導入を迅速化する。ワクチンに関する意見交換:二国間の協力および意見交換を通じ、国のワクチン計画の策定に対する日本政府の取り組みを促す。

医療機器
外国平均価格調整(FAP)ルール:FAP を廃止、もしくはそれが不可能な場合はFAP算定時のルールと手法の不変性を確保し、日本において時宜にかなった医療機器の導入および安定供給を促進する。体外診断薬(IVD)に関する保険償還:臨床的価値に基づきIVDの保険償還を評価し、日本の医療制度の効率性を向上させる高度で改良されたIVD製品の価値を評価する。大型医療機器に対するC2 保険適用プロセス: 革新的な大型医療機器に関し、1) どの製品がC2の指定に適格かの判断、また2) C2製品の適切な価格の決定に際しての明確な基準およびガイドラインの作成に向け、業界との対話を行い、このような医療機器の日本への導入を促進する。デバイス・ラグおよびギャップの解消:医療 機器の審査迅速化アクション・プログラムの時宜にかなった実施を保証し、革新的な医療技術の日本への導入を迅速化する。企業に対する薬事規制負担の軽減:企業に とって薬事規制上の負担を増加させる原因となっている品質管理システムおよび外国製造業者認定に関する要件の修正に向け利害関係者と協議し、日本市場へ革 新的技術を提供する企業が置かれた状況を改善する。

化粧品
医薬部外品:日本の消費者が医薬部外品製品により迅速に、不要なコストを課されることなくアクセスできるように、医薬部外品承認ガイドラインの導入およびその他の施策を実施する。広告・表示:日本の消費者がより詳細な情報を得た上で判断ができるよう、化粧品の効能表示の範囲を拡充する。化粧品・医薬部外品の輸入:化粧品・医薬部 外品の輸入が改善かつ効率化されるよう輸入プロセスを簡素化・合理化する。その他透明性・規制問題:化粧品・医薬部外品の広告に関する規則制度の透明性を高め、米国を含む業界関係者の全国医薬品等広告監視協議会(六者協)への参加を認める。

栄養補助食品
規制分類と表示:保健機能食品制度を向上させる方法、原料に特化した健康強調表示を許可するシステムの提案など、日本の健康食品制度について業界が情報や意見を提供できる機会を増やす。健康食品安全規制:栄養補助食品に使用される新しい原料が医薬原料、食品原料、もしくは食品添加物として分類されるプロセスならびに基準を明確にすることにより、円滑な貿易を促進し、さらに他の先進諸国のベストプラクティスと比較して輸入手続きを向上させる方法を検討する。食品添加物:他の先進諸国で一般的に認可されている、栄養補助食品に使用できる添加物、溶媒および化学形態の栄養素のリストを拡大する。≫(米国大使館:日本語版HPより)

この「日米経済調和対話」(年次改革要望書の名称変更)が、実はTPPの実態である事は明白。この文章を読む限り、経団連やマスメディアがこぞってTPP参加を支持する疑問が湧いてくるし、反対すべき団体分野も、農業関連に限らない筈だが、どうもその辺が理解出来ない。まぁ、個々の皆さまが、この「日米経済調和対話」の内容をどのように捉えるか、そこが重要なのだと思うので、敢えて解説抜きに、全文掲載した。


間違いだらけのTPP 日本は食い物にされる (朝日新書)
東谷 暁
朝日新聞出版



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小宮山洋子よ!タバコが害毒であるなら、タバコの販売を禁止せよ!

2011年10月09日 | 日記
グレート・スモーカー―歴史を変えた愛煙家たち (祥伝社新書 (051))
祥伝社新書編集部
祥伝社



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小宮山洋子よ!タバコが害毒であるなら、タバコの販売を禁止せよ!


 ニコニコ笑顔の垂れ目爺殺し・小宮山洋子が安住の権限に土足で踏み込み、「たばこ税を引き上げて1箱700円程度にすべきだ」と口走り物議を醸した。安住もムッとして「財務省の管轄だ」と怒りを表したのだが、此処に来て復興財源の補完的増税候補としてクローズアップされている。

  WHOによると、人類の喫煙による死亡者は年間490万人なのだそうだ。現在、世界で喫煙している人々の半数、6億5千万人はタバコが原因で死ぬそうだ。また、今度は非喫煙者の受動喫煙で毎年数10万人が死ぬのだそうだ。世界医師会も「喫煙をはじめとしたタバコ使用は、すべての臓器を侵し、ガン・心臓病・脳卒中・慢性閉塞性肺疾患・胎児への傷害などの主要な 原因となっている。」とし、また「4000種以上の化学物質、50種以上の発ガン物質などの有害物質を含むタバコ煙にさらされる非喫煙者は、肺ガンや心臓病などの病気で命を脅かされている。」と喫煙病を問題にしている。歯科学会では、歯周病の元凶であり、半数以上の喫煙者が30%自分の歯を失うとまで、決めつけている。最近ではヘビースモーカーはIQが低いとまで言われ始めている。(笑)

 つまり、タバコは現在の「タバコ犯人説」に照準を合わせた研究を助長する流れは歴然としており、研究の方向性の「空気」を作りあげている。「空気」に沿った研究検証論文が評価され、研究費が優先的に配分される流れが出来れば、タバコ有害説に反論する研究は研究費の段階でハンデを持つ。尚且つ「空気」に反するわけだから、異端の研究者にされる覚悟も求められる。反原発を掲げ30年40年と研究や主張をした人々が、どのような扱いを受けたかを想像すると、「空気」に逆らうのは愚かと云う事になる。  

 肺癌になる、心臓病になる、脳卒中になる、慢性閉塞性肺疾患になる、馬鹿になる等々、ありとあらゆる人間の病気の原因がタバコに起因する、まるで魔女狩りが如き風潮{空気}が確立されている。おそらく、人間が生きていく間に食べるモノ、飲むモノ、吸うモノ、触れるモノ等をタバコ同様に分析研究を重ねていけば、大なり小なり人間の罹る病気の病因に行き着く可能性はあるのだろう。筆者などは、日本人の肺癌が急増した一番の原因は大気汚染であり、タバコを犯人扱いしていない。

 勿論、タバコが各種疾病の病因であるかもしれない研究にケチをつける気はないが、大気汚染との合併症的立場での説明が最も合理的だと考えている。なぜと云う程ではないが、昭和40年の日本人成人の喫煙率は82%だったのだが、彼らの多くが、今魔女狩りの隠れた対象となる後期高齢者であり、長寿を全うしている。受動喫煙で肺癌リスクのリスクに晒される女性陣も、タバコ魔女指定学説をせせら笑うように、更に長寿を謳歌している。この現象には、ジャパニーズ・パラドックスなる名前まで、冠されている。

 筆者は此処で、タバコ有害無害論を語るつもりはないが、人間が病気になる原因を一面的に捉える医学界の風潮「空気」は愚かだとだけ言っておこう。人間の体は、彼らが簡単な治験や追試で証明できるほど、短絡的でないことを指摘しておく。

 そうそう今日のコラムで言いたいことは、国民の健康を害するものを、国家が公に販売することの問題だ。販売価格を700円に上げてしまえとか、1000円ならどうだと云う話ではなく、原則論に立つなら、売ってはイカンと云う事だろう。筆者はヘビースモーカーと自認しているが、1箱2000円でも吸うであろう。禁煙補助薬のニコチンガムや飲み薬で、製薬会社が儲けているメカニズムに言及すると紙面が足りないのでやめるが、ニコチン依存が人体にそれ程害悪であるなら、国家はそのようなのもを販売し、まして、税金を取るなど極悪非道である。

 06年には、喫煙者が2兆2800億円分も税収に寄与した。最近では1兆9000億円程度に落ち込んだようだが、まだまだ馬鹿に出来ない財源であることに変わりない。小宮山や松沢成文ら嫌煙ファシズム群が、そこまで健康被害を訴えるなら、販売禁止運動を原点にする運動が正論である。そして、約2兆円の財源を他から生み出す発想を披露すべきではないか。国家が販売を認めている商品を、健康に害悪だと印字しながら売り続け、2兆円を儲けている方が、余程害悪?否、罪悪である。「悪い奴ほど善人ぶる」の一種と筆者は感覚的に思う。


タバコ有害論に異議あり! (洋泉社新書y)
名取 春彦,上杉 正幸
洋泉社



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小沢一郎に “死んで欲しい” と言わんばかりの朝日新聞記事

2011年10月08日 | 日記
あっぱれ! 朝日新聞(笑) (WAC BUNKO)
勝谷誠彦
ワック


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小沢一郎に “死んで欲しい” と言わんばかりの朝日新聞記事


朝日新聞の報道姿勢が“小沢一郎の政治生命剥奪”で首尾一貫している事は事実である。他のマスメディアも似たりよったりだが、朝日の小沢の政治生命抹殺の姿勢は群を抜いている。

 ところが、どうも朝日新聞は“小沢一郎の政治生命剥奪”以上の望みまで、もっているようだ。筆者の読解力からいくと、“小沢一郎が死んでくれないか?”、と暗に望んでいるとさえ思える記事を書いている。最近は記事の美味しい部分は有料で、と極めて下品なネット有料記事へのシフトを計画しているにも関わらず、小沢の記事は最後まで表示している。  

 相当経営的に支障をきたしている事情が垣間見える。日経もネット有料配信で少しでも稼ごうとしたようだが、概ね大失敗。“取り敢えず会員”まで登録してあるが、なんと1日に5通ほどの正会員誘導のメールが届く有様。或る程度ペイしているのなら、“出会い系サイト”の勧誘並の行為をするとは思えない。チョイと横路に逸れたが、先ずは朝日新聞の“小沢一郎、病気で死なないかな~”を臭わす記事を読んでいただこう。

  ≪小沢氏、広がる健康不安 「大丈夫だ」沈静化に躍起
 6日夜に救急搬送され、そのまま東京都内の病院に入院した民主党の小沢一郎元代表(69)。病名は「左尿管結石」という。小沢氏の健康不安は、これまでもたびたび表面化してきたが、刑事裁判の初公判を終えた当夜の体調不良に、政界には驚きが広がった。
 「検査の結果、左尿管結石と判断しました。経過を観察中です」。小沢氏が入院した日本医科大付属病院(東京都文京区)の福永慶隆院長と本間博医師は7日、記者会見して小沢氏の病状を説明した。
 6日の初公判終了から約4時間後の午後8時ごろ、腰に強い痛みを感じて嘔吐(おうと)。その後も激しい腰痛と嘔吐があり、自宅から救急車で搬送された。 1週間程度の入院が必要という。
 小沢氏には、健康不安がつきまとう。1991年には狭心症で約40日間入院。最近では、民主党代表当時の2008年10月に体調を崩して入院している。
 刑事裁判は今月14日に2回目の公判が予定されている。本間医師は、延期やドクターストップの可能性について「本人に聞かないといけない。その場で考えたい」と述べるにとどめた。
 小沢氏は党代表選に3連敗したうえ、刑事裁判で身動きが取れず、求心力に陰りが見える。それだけに、広がる波紋を鎮めるのに躍起だ。
 小沢氏は7日朝から、民主党の輿石東幹事長や鳩山由紀夫元首相に電話で「心配かけて悪かった。大丈夫だ」とアピール。見舞いに訪れた側近の樋高剛、松木謙公両衆院議員や小沢グループの谷亮子参院議員らには、点滴を受けながら「痛みがある時は痛いけど、ない時は何ともない」と笑顔を見せた。
 小沢グループの議員によると、病院側の記者会見も「メディアが騒いでうるさいから、病状を教えてやれ」と小沢氏が指示して設定したという。別の側近議員は「結石なんて病気じゃない。石さえ出ればすぐに退院できる」と強調した。≫(朝日新聞)

 以上の記事にはオマケの付録までがついている。(笑)小沢一郎の病歴一覧表だ。このご丁寧に作り上げた一覧表は、「小沢氏の過去の健康問題」となっているが、登石裁判長同様に推認、憶測情報まで含まれている。≪94年7月:訪英「心臓病診察か」」との憶測出る≫。挙句に、「人間ドック」「検査」で入院した事まで「健康問題」なのだそうだ。サラリーマンの年一回の健康診断も、朝日から見たら、サラリーマンらの健康問題なのに違いない。(笑)

 今夜は結論を急ぐが、小沢一郎の政治的影響力に陰りが出て欲しいと願っている記事と云う事だが、一政治家の政治的影響力の陰りを望むあまり、その個人の生命に関わる問題を愉しもうとする朝日新聞の報道姿勢は、倫理道徳的立場からも許し難い。

 小沢は病弱で、今にも病気で倒れるやもしれない。そんな政治家を支持することは無駄な努力だ。“国民よ目覚めよ!民主党の議員達も目覚めよ!”と叫んでいる記事にしか思えない。産経新聞と同等の記事を書きだした朝日新聞の姿勢は断固糾弾されるべきだ。明らかに、政治権力闘争とは一線を画した政治家の生命体調に関して揶揄するが如き報道は、報道倫理を大きく逸脱している。

 読売新聞の方が、小沢入院記事に関しニュートラルに思えてしまう。如何に朝日新聞の記事が、報道倫理に抵触と云うか、人の道を踏み外した記事かどうか、読み比べて頂きたい。

≪小沢氏入院、野党は困惑「首に綱つけられぬ」
 民主党の小沢一郎元代表の病状が7日、尿管結石と分かり、大事に至らなかったことで小沢グループの議員からは安堵の声が上がった。
元代表は心臓の治療歴があり、当時の入院先も今回と同じ日本医科大学付属病院だったため、一時病状への懸念も広がった。 7日には小沢グループの山岡国家公安委員長や中堅・若手議員が続々と見舞いに駆けつけたが、面会者によると、元代表は「昨夜は腰が痛かったが、今は全く痛みはない」と笑顔を見せたという。グループ幹部は「裁判の準備などで疲れていたのだろう。小沢氏は大切な首相候補だから、まだまだ頑張ってもらいたい」と語った。
 ただ、1週間程度入院する見通しとなったことで、14日に予定される政治資金規正法違反事件の第2回公判に影響する可能性が出てきた。グループの中堅議員は「『逃げた』とか言われるので、延期しない方がいい」と語った。
 一方、元代表の証人喚問を求めてきた野党は困惑気味だ。自民党の谷垣総裁は7日の読売新聞のインタビューで、「(元代表は)説明責任を果たしていかないといけない。ただ、現実に入院して苦しんでいる時に、首に綱をつけて出てこい、というわけにはいかない」と述べ、当面は病状の推移を見守る考えを示 した。別の同党幹部も7日、「病状の詳細が分からないと、何とも言えない」と語った。≫(読売新聞)

以上となっている。いかに朝日が小沢に対して、悪意以上の怨念のようなものにとりつかれている事が如実に現れている。

朝日新聞の中国侵略
山本 武利
文藝春秋



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東京地裁の大善裁判長に、登石同様に最高裁事務総局の指揮ありやなしや(2)

2011年10月07日 | 日記
国家とメディア―事件の真相に迫る (ちくま文庫)
魚住 昭
筑摩書房



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東京地裁の大善裁判長に、登石同様に最高裁事務総局の指揮ありやなしや(2)


 10月6日の法廷における小沢一郎の罪状認否・意見陳述は、筆者の想像を越え、小沢一郎の検察ファッショへの怒りが爆発していた。あそこまで明確に言い放って良いのかな?と思うほどのものだった。しかし、小沢一郎が今回の「人物破壊」に対し徹底抗戦を宣言した姿勢は、まさに権力闘争であり、検察への挑戦と超え、最高裁事務総局への挑戦でもある。延いては、野田内閣総理大臣に対する小沢一郎の意志表示である点が、極めて重要だ。

  さて本題に戻るが、最高裁事務総局が小沢一郎にまつわる裁判に関して、全面的に関与するであろう、と云うのが筆者の考えだ。この前提でいくと、最高裁事務総局が小沢一郎に有罪・無罪を決定するに際し、法務省を通じて内閣総理大臣に、なんらかの形で接触することは当然である。昨年の暮れに「これは権力闘争だ」と小沢一郎が言い放った意味は、此処にある。  

 正直、石川議員らの裁判においては、最高裁事務総局の登石裁判長らへの関与はあっただろうが、法務省、内閣の関与まであったかどうか、不明な部分もある。彼らには気の毒だが、彼らの政治的影響力の問題であり、権力闘争の範疇に含まれる問題とは言い難いものだからである。また、検察の存在に異議が挟まれている状況において、これ以上の検察の信頼の失墜は、法の秩序維持にとって、好ましくないと最高裁事務総局が考え、且つ法務省が追認したと思考すべきだろう。  

 既に検察庁は、人事において当該捜査権の乱用を実行した検事に対し、粛清と云うか反省の姿勢を明確に示しており、これ以上の混乱による信頼の失墜よりも、秩序維持に力が働いた、と考えて良いだろう。 勿論、小沢一郎が6日の法廷における「意見陳述」で示した通り、『とりわけ、2年前の総選挙は、各種世論調査でも戦後半世紀ぶりの本格的な政権交代が十分に予想された特別なものでありました。そのようなときに、総選挙の行方を左右しかねない権力の行使が許されるとするならば、日本はもはや民主主義国家とは言えません。議会制民主主義とは、主権者である国民に選ばれた代表者たる政治家が自由な意思により、その良心と良識に基づいて、国民の負託に応え、国民に奉仕する政治であります。国家権力介入を恐れて、常に官憲の鼻息をうかがわなければならない政治は、もはや民主主義ではありません。日本は戦前、行政官僚、軍部官僚検察・警察官僚が結託し、財界、マスコミを巻き込んで、国家権力を乱用し、政党政治を破壊しました。その結果は、無謀な戦争への突入と悲惨な敗戦という悲劇でした。昭和史の教訓を忘れて今のような権力の乱用を許すならば、日本は必ず同様の過ちを繰り返すに違いありません。』、と石川議員らの捜査も権利の乱用であり、あのような判決は不当だと指弾している。

  ただ、同一線上の捏造捜査起訴、捜査権の乱用は同根なのだが、検察が起訴した事実を覆すことは、法の秩序維持において、最高裁事務総局が好ましくないと思考するのは当然の成り行きだ。(*勿論、筆者も許せないと思うが、それが現在の日本の裁判の現実だ)それに対し、小沢一郎本人への、検察の判断は「不起訴」だった。つまり、検察に対して裁判所が配慮する必要はないと云う事だ。理屈の上では、検察の信頼の失墜を防御する意味でも、小沢判決は無罪の方が理に適っている。

  検察審査会のド素人審査員が感情に流され、裁判で白黒つけろと言っただけの司法秩序に深く関わらない起訴なのだから、その法廷において「無罪判決」が出ても、誰も痛みを感じないで済むし、法の秩序維持にも影響を及ぼさないのだから、官僚組織の合理性から見ても無罪の方が納まりが良い。検察審査会の運営等への国政調査権をこれ以上行使され、根掘り葉掘りほじくられる事も望むところではないだろう。

 今回の小沢事件等云うものの根っ子が、権力闘争であると同時に、日米関係における「小沢一郎排除の論理」もあるし、既得権益勢力全体への小沢の革命的思想もあるし、真っ向司法の不適切を批判している点から、一筋縄ではいかないだろう。ただ、あくまでも内政問題である以上、あからさまな米国の関与があると云う論に与する気持にはなれない。そのような思考経路を辿ってしまうと、常に米国が悪の枢軸であり、国内の既得権益勢力への監視批判の舌鋒がゆるゆるになる結果を招き、本末転倒と云う帰結になる。 

 検審起訴による小沢裁判はあくまでイレギュラーな国内司法問題と考えるのが妥当だ。勿論、彼らが宗主国アメリカとの同調性は共有するだろうが、すべてに共通するとは言い難い。最高裁事務総局は司法でありながら、行政機関の一部である現実から目を背ける事はない。やはり人事において行政の横槍は回避したいものである。そこで最も注目しなければならないのが、野田内閣総理大臣の腹の内である。

 つまり此処からが政治権力の域内に入る。法務大臣の指揮権発動と云った目に見えるものではなく、時の総理の意向と云うものが、日本政治の唯一の実力者・小沢一郎の裁判においては重要な位置を占めると考えておくべきだ。総理は菅直人や仙谷や岡田・前原だったら、もう最高裁事務総局は意向を聞くまでもなく、自らの考えだけで突っ走れただろう。その答えは有罪無罪半々だ。

 ところが、野田佳彦総理の選択した政権運営の選択は「党内融和」だ。本音では、小沢の力量に縋る傾向さえある。与党が野党との「ネジレ現象」で二進も三進も行かないと云うのに、党内野党まで抱え込んでは、日々頓挫の政権になるのは菅政権で証明済みである。野田政権としては、大震災にせよ、福島原発事故処理、エネルギー政策、世界恐慌の危険すら感じる経済と難局目白押しの状況で、与党内野党の究極の行動などされたものでは、一瞬にして政権が崩壊するのは目に見えている。常識的には、小沢裁判の行方は「無罪」に向かう方が野田政権にとってもベターである。当然、小沢問題で野党からの証人喚問等々の棘を抜くことも可能になる。最終的結論は来春であり、そこまでの野田政権の歩みによっても、政治権力状況は変わるので、今結論を語ることは早計だ。

  筆者の個人的考えからすると、膿を出し切らずに隠ぺいするような処理方法は、次なる暴走を再び許す危険も同時に封印するので、好ましいことだとは思わない。しかし、政治にせよ、単なる世間にせよ、「一定の落とし処」で一段落させる方が、新たな前進に繋がる場合もある。小沢一郎の政治生命を堅持し、次なるステップを踏むことが可能な場を得る為にも、野田政権への一定の配慮と苦言をベストミックスで使い分けておく選択小沢はするのだと思う。政治的自己主張は、当分抽象的概念論になるのも致し方ない。徹底抗戦論も多いので、筆者のようなナマクラな意見は好まれないだろうが、政治とか権力闘争などは不条理を抱えて、常に進むものである。



食品の放射能汚染 完全対策マニュアル (別冊宝島) (別冊宝島 1807 スタディー)
クリエーター情報なし
宝島社


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東京地裁の大善裁判長に、登石同様に最高裁事務総局の指揮ありやなしや(1)

2011年10月06日 | 日記
司法官僚―裁判所の権力者たち (岩波新書)
新藤 宗幸
岩波書店


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東京地裁の大善裁判長に、登石同様に最高裁事務総局の指揮ありやなしや(1)


 いよいよ10月6日から、“暗黒司法国家ジャパン”の小沢一郎に対する荒唐無稽にして言語道断な、最高裁事務総局支配下の検察審査会による「起訴相当二度議決」による前代未聞な現役大物政治家に対する公判が始まる。

 小沢一郎が罪状認否で起訴内容について意見を述べた後、検察官役の指定弁護士側と弁護側双方がそれぞれ冒頭陳述を行う段取りとなる。(*筆者は小沢一郎を被告と考えていないので、“被告”と云う表現は敢えて使わない)最初に指定弁護士が起訴状を読み上げ、小沢一郎がその内容への認否を述べる。小沢被告の認否の内容は当然無罪だろうが、虚偽記載の認識等に関し、5~10分、認識否定の意見陳述をするらしい。

 石川議員らへの陸山会事件における東京地裁・登石郁朗裁判長の驚愕的暴走判決を知った後だけに、小沢一郎の公判、及び判決に、端から疑念を持つのは、法の理念を知る者にとって、当然の帰結だ。登石郁朗氏が、あそこまで妄想的推認に陥った判決に至った思考経路を考えても意味はないだろう。故に、小沢一郎裁判における東京地裁・大善文男裁判長がどのような人物であるかも、重要な要素ではない可能性が高いことになる。

 要は日本の司法マフィア(法務省・検察・最高裁)が“小沢一郎だけは治外法権でも裁く必要がある”と認識している事が、最も重要な視点なのではないだろうか。今回の石川議員らの裁判は、判決よりも、その事実認定が憶測・推測・妄想と三段跳び状態で、とても司法試験に合格した裁判官のなせる技とは到底思えない部分に注目すべきだろう。

 どう考えても、登石氏にとって“裁判官人生最大の汚点”を引き摺るであろう判決を自ら判断したと思考するには、相当の無理がある。まぁ、それ程検察追認主義に徹していたとしても、大久保氏が“天の声”であり、川村元社長の証言は真実だと断言するあたり、裁判官と云うより、例の検察審査会に参加した審査員以上の“法律のド素人”と断言しても構わない程の人物に成り下がったのだ。

 こう云う場合、登石氏にそれこそ“天の声”が下ったと考えるのが自然だ。それが“最高裁事務総局”である可能性は非常に高い。つまり、今回の小沢一郎裁判の行方を占う上で、“最高裁事務総局”の意志が重要になると云う事ではないのか。“小沢一郎だけは治外法権でも裁く必要がある”と認知したのは、司法マフィアだけではない。発生時に与党であった自民党であり、漆間官房副長官を起点とする官僚組織であり、マスメディアであり、菅直人・仙谷由人らであろう。

  現時点に至っては小沢一郎裁判の行方は、“最高裁事務総局”の意志に依るところがポイントだ。東京地裁・大善文男裁判長がどう考えるかよりも“最高裁事務総局”が法務大臣、最終的には野田内閣総理大臣の影響を受ける部分に着眼しておく必要があるだろう。つまり、“最高裁事務総局”は行政の一部として機能しているので、行政の長である内閣総理大臣の意向を無視して、荒唐無稽にして言語道断な判決を出す事は、現実不可能な仕組みになっている。内閣総理大臣を無視することは『最高裁判所裁判官のうち、最高裁判所長官は内閣の指名に基づき天皇が任命する。最高裁判所判事の任命は内閣が行い、天皇が認証する。』を無謀にも無視することに繋がるからだ。

 つまり、“最高裁事務総局”は、行政からの人事への介入を避ける為には、内閣総理大臣の意向を一定の範囲で聞かざるを得ない状況があると云う事だ。おそらく、今回の石川議員らの判決に関しても、その概要は内閣に通じていたに違いない。ただ、石川議員らは、一定の範囲で法秩序維持の為、検察の威信回復に寄与する必要あり、又一審に過ぎないから程度の共通認識があった可能性はある。おそらく、続く小沢一郎裁判に関しても概要が既に決定している可能性すらあると考えてることも可能だ。

 このような政治的権力に関わる裁判は、極めて恣意的で法の秩序維持において、酷く保守的な様相を呈している。その権力闘争的色彩の強い小沢一郎裁判において、“最高裁事務総局”がどのように内閣の顔色を見るか、或いは法務省を通じて意志確認をするか、そこまでは定かではないが、野田佳彦の意志に反する判決は出し難い、と思考すべきである。つまり、今回の石川議員らの裁判も、小沢一郎の裁判も、裁判ではないと云う事だ。権力闘争そのものだ。

 それでは、野田佳彦内閣総理大臣は小沢一郎が裁判で、有罪になって欲しいのか、無罪になって欲しいのか、そこが今回の裁判の行方を決定的にすると筆者は考えている。(2)に続く


日本をダメにしたこの民主党議員たち
松木 謙公
日本文芸社


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小泉の構造改革の百倍の威力を持つTPP 日本はアメリカ国内市場と化す

2011年10月05日 | 日記
間違いだらけのTPP 日本は食い物にされる (朝日新書)
東谷 暁
朝日新聞出版



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小泉の構造改革の百倍の威力を持つTPP 日本はアメリカ国内市場と化す



 先回の拙コラムで「米国の焦りがTPP推進 ドル基軸圏の死守と覇権国家維持は同義だ」で語ったように、オバマの緊急改革要望として「普天間移設」、「TPPへの交渉参加」、「北朝鮮核・拉致問題」、「牛肉輸入問題」、「ハーグ条約」が羅列されたようである。しかし、普天間や拉致が早急にどうなるものでもない。野田政権の姿勢一つで、米国の要望に沿えるものは「TPP交渉参加」と「ハーグ条約」だけになる。勿論、米国の唯一の目標は日本の「TPP交渉参加」だ。

 TPPが環太平洋戦略的経済連携協定等と邦訳がつくから、妙な幻想を抱くわけで、実体は「包括ドル基軸連邦協定」のようなものである。関税の撤廃だけならFTAやEPTで個別に充分外交が可能なのに、何故TPP(包括ドル基軸連邦協定)なのかである。工業製品や農産物の自由化なんてのは“とば口”であり、金融、電気通信等サービスの自由化であり、公共事業等政府調達の自由化であり、知的財産の自由化である。その上、投資や検疫、労働力等の自由化まで網羅されているのだ。つまり、国家の存立の根っ子を米国化したいと言っている。

 つまり、ドルの世界的通貨基軸が揺らいでいる事への焦りから、堅固な「ドル貿易圏」を再構築しておこうという強い希望なのだ。勿論、輸出を増大させて米国内雇用を確保すると表明した、オバマの公約実現のパフォーマンスと云う側面もある。米国が輸出できるものは限られており、TPPの関税障壁撤廃で輸出が増えるなど夢物語だ。やはり、狙いは保険金融が主体なのだろう。

  「TPPを慎重に考える会勉強会」が開かれたようだが、外務、経産省、農林の官僚が説明したが内容は乏しく、勉強に値しなかった。彼ら自身、なにも判っていないのである。カナダ、メキシコ、ブラジル、フィリピン、インドネシア、中国、台湾、韓国が不参加の「環太平洋戦略的経済連携協定」なんて、糞みたいなもので、単に「日本市場」に米国資本がありとあらゆる分野に資本参加したいと主張しているだけである。こんな提案を真面目な顔をして議論すること自体、キチガイじみている、異様だ。

 日本の市場開放を契機に、ドル余りの米国金融業界が、米国内の市場には投資する対象物が枯渇してきたので、属国日本の市場にドル資金を注ぎ込みたいから、その仕組みを整えよ、と命じられただけの事である。明らかに、日本の金融資産に狙いは定められている。金融市場原理主義のグローバル経済から抜け出す事が出来ない米国は、「太らせた家畜」を今こそ食べる時だと、戦略的に決意した「協定」に強制的に加入することを強いているのだ。

 TPPの「交渉参加」はイコール「参加表明」と受けとめられるきらいがあり、交渉参加だからイイだろうと云う理屈は通用しないのが、今の日米の力関係だ。日本の国債格付けが意図的に引き下げられ、如何にも「財政の悪化」が喧伝されている。だったら日本の市場も糞のようなものの筈だが、さにあらず、日本国家の市場価値、否、資産価値は莫大であり、オバマはそれが欲しいと言っているのだ。

 仮にTPPへの「交渉参加」を野田首相がオバマにイエスと言った場合、日本市場は無価値に接近しているドル資金が怒涛の如く押し寄せ、日本市場を席巻し、タヌキの葉っぱで誤魔化された「ドル札」を掴まされ、既に疲弊した経済状態を、復元不可能な処まで陥れるに違いない。現在の野田政権がこの米国の圧力を跳ね返す力量があるとは思えないので、酷く不安である。米国の植民地国家が決定的になる瞬間かもしれない。

 どうも、マスメディアにせよ、経団連にせよ、野田首相にせよ、TPPの重大さを認識しているのか、甚だ疑問だ。引き返せない、奈落への道を歩むことになるやもしれない。交渉参加表明からの離脱には、交渉の席につく百倍の困難があり、米国なにするものぞ、と云う命を賭す強い政治力が求められることになる。多分、今回のTPPの我が国への影響力は、小泉の構造改革の比ではないことを、国民はもう少し考えるべきである。勿論、民主党もである。


ドル終焉 -グローバル恐慌は、ドルの最後の舞台となる!
浜 矩子
ビジネス社


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米国の焦りがTPP推進 ドル基軸圏の死守と覇権国家維持は同義だ

2011年10月04日 | 日記
「アメリカ覇権」という信仰 ドル暴落と日本の選択
エマニュエル トッド,加藤 出,須藤 功,倉都 康行,榊原 英資,ロベール ボワイエ,浜 矩子,井上 泰夫,松原 隆一郎,アラン バディウ,的場 昭弘,辻井 喬,水野 和夫,佐伯 啓思
藤原書店


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米国の焦りがTPP推進 ドル基軸圏の死守と覇権国家維持は同義だ


 米国オバマ大統領が横車を押し、割り込むように前のめりになっているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への交渉参加を経団連の米倉爺が「TPPに参加しないと日本は世界の孤児になる」と無暗にあちこちで吹聴している。日経、読売も熱心だ。内閣府、外務省、経産省は賛成で、農水省は反対と云う状況だ。

 実際問題、その中身を吟味するにも内容が今ひとつどころか、殆どがブラックボックス化されている。基本的にはFTAとEPTの多国籍バージョンと云う事だろうが、個別の例外事項は米国には認めるが、他国には認めないと云う噂もあるので、迂闊に交渉参加を表明することは、相当危険だ。菅直人は内容も把握せず、米国のご機嫌取りを狙って「平成の開国」等とほざいていたが、311以降、記憶から飛んでしまったようだ。

  今回、野田首相とオバマ大統領の35分会談において、どれ程の早口で二人が話したか知らないが、キャンベル国務次官補の創作も入っているようだが、無茶苦茶沢山の要求を突きつけられたと、マスメディアは嬉しそうに伝えている。日本のマスメディアは何処の国家の報道機関なのか混乱を起こすくらいだ。まぁ、オバマの希望としては「普天間移設」、「TPPへの交渉参加」、「北朝鮮核・拉致問題」、「牛肉輸入問題」、「ハーグ条約」が羅列されたようである。日本からは「トモダチ作戦」へのお礼のみで、米国への希望は皆無と云う報道だ。

  子供時代の記憶だが、アメリカ通商代表部が日本に乗り込み、GATT違反だと言って、農産物の市場開放を要求する映像を何度も見た。そうして、落花生、デンプン、オレンジ、牛肉、コメと次々市場を解放させられた。子供心にもアメリカが意地悪しに来た、と思ったものだ。しかし、当時はまだ米国に余裕があり、駄目な子供を戒める寛容さがあったのだ、と最近は思うのである。最終的には301条で制裁を科すと言い出した辺りから、米国の経済は怪しくなっていたのかな?とも思う。(*301条は当時のGATT(現在はWTO世界貿易機関)の精神に反していると不評で、現実に行使される事はなかったと記憶している。)

  まぁオバマ大統領も来年の選挙を控え、11月のハワイAPECではイイところを見せたいわけだが、オバマの為に、普天間移設で沖縄県民の意志を完全無視は不可能だし、TPPの交渉参加を表明するにも、党内議論も国会での議論もない状況で、エイヤッ!で意志表示する蛮勇は野田首相にはないだろう。精々、「牛肉輸入問題」「ハーグ条約」の解決が関の山と思われる。実際それが正しい選択だとも言える。

  民主党の輿石幹事長は3日の記者会見で、「11月のアジア太平洋経済協力会議首脳会議までに真剣に議論し、それを受けて野田佳彦首相が国際舞台で発信してくれるだろう」と一見前向きな発言をしたようだが、震災復興増税法案で汲々としている政権が、一国の方向性を見誤るTPPに、充分な議論なく意志表示することは、重大な選択ミスに繋がるだろう。

  TPPが環太平洋戦略的経済連携協定等と邦訳がつくから、妙な幻想を抱くわけで、実体は「包括ドル基軸連邦協定」のようなものである。関税の撤廃だけならFTAやEPTで個別に充分外交が可能なのに、何故TPP(包括ドル基軸連邦協定)なのかである。工業製品や農産物の自由化なんてのは“とば口”であり、金融、電気通信等サービスの自由化であり、公共事業等政府調達の自由化であり、知的財産の自由化である。その上、投資や検疫、労働力等の自由化まで網羅されているのだ。つまり、国家の存立の根っ子を米国化したいと言っている。

 おそらく、米国の最大の狙いは保険金融がメインなのだろう。米国の工業製品や農産物が自由化され、それらのもが廉価になったから、日本の市場が大きく揺らぐ可能性は少ない。逆に保護政策を国内的に行う結果を招き、国内の生産者が大きく傷つくリスクは少ない。米国の製造業から日本市場への輸出が増えるなんて、本気で考えている筈がない。米国の遺伝子組み換え食品をこぞって購入する消費者も少ない。被害は軽微なもの、つまりTPPはそんなものが狙いではないと云う事だ。

  狙いは、保険金融の参入障壁の撤廃が大きな狙いだろう。彼等は特に公的資金を投入し、その回収をしなければならないAIGの事業拡大が必要不可欠になっている。簡保の市場は彼らの垂涎の的である。また、大震災で大きな打撃を受けた国内損保の市場も狙いに含まれる。なにせ、米国内では、その日暮らしの中間層が増加の一途、貯蓄もゼロ状態で保険加入など、絵に描いた餅状態なのである。

 さらに大きな狙いが米国オバマ大統領にはある。それが米国の覇権の死守だ。EUのユーロ危機が一番心配なように言われているが、米国の経済危機の方が遥かの危機的だ。米国は「ドル基軸通貨」と「安保理常任理事国、戦術核、最大の軍事力」で世界の覇権国家を標榜してきた。しかし、ここでスッポリと抜け落ちているのが、資本主義で最も重要な製造業の実体が失せてしまったことである。

 この実体経済を穴埋めする為に、経済合理性の究極の姿、金融経済をドル基軸の動力源にしようとしたことである。つまり、実体なき金融が米国と云う覇国家の屋台骨を支えたわけだ。「覇権」と「基軸通貨」は極めて同義的であり、ドルの信認が危うくなった覇権国米国にとって、基軸通貨の維持はイコール覇権国の維持である。つまり、ドル基軸圏の囲い込みと同じ効果を持つ、TPPを強力に推進しようと云う事だろう。

 APECで野田首相が「交渉参加」を表明するとは思えないが、仮に表明してしまった場合、そこから離脱することは極めて困難だと云うのが専らの話だ。つまり、米国の恫喝が怖くて、とても抜けられそうもない、と云う事のようだ。まぁ「何も決められない日本」だから、最終的合意をグズグズとしないでおく、と云う方法もないではないが、論議が生煮えのまま交渉参加は政局問題にまで発展する要因になるだろう。筆者としては好ましいことだが、今与党民主党がするべき政治課題は多義に亘るだけに、オーバーフローするのは必定だ。

 最終的に米国は覇権を守り切る為に、あらためてドル基軸圏の再構築に乗り出したとわけで、アジア太平洋広域FTA を視野に入れているようだが、中国・ロシアが易々と米国ドル基軸覇権に好意的だとは、到底思えない。そもそもASEANプラス3の枠組みを支持する中国に対し、日本はASEANプラス6を主張し、経済統合の効果は大きい。

 ただ、この経済圏はASEANが中心となり鳩山の「東アジア共同体構想」に繋がり、中ロが参加することでドル基軸圏が危うくなると米国が焦りまくり、無理やりのTPP構想をぶち上げのだ。最終的にはドル基軸圏貿易枠組みとしてのFTAAP構想に繋ごうと云う意図のようだが、その前に米国の言いなりになる属国、日豪ニュージーランドを抱き込もうと云う事のようだ。さてさて、野田君はオバマの思惑につきあい、日本売りに精を出すのか?どちらにせよ公務員住宅でパフォーマンスしているようでは、先行き暗雲が立ちこめている。


通貨で読み解く世界経済―ドル、ユーロ、人民元、そして円 (中公新書)
小林 正宏,中林 伸一
中央公論新社


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最高裁事務総局の実像に迫る  明治大学教授西川伸一氏の論文

2011年10月02日 | 日記
司法官僚―裁判所の権力者たち (岩波新書)
新藤 宗幸
岩波書店

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最高裁事務総局の実像に迫る  明治大学教授西川伸一氏の論文


  日本のあらゆる裁判官の命運を握り、日本の司法を一定の方向に向けていると思われる最高裁事務総局についての、渾身の論文を見つけたので、解説なしに貼りつけておく。 2008年に書かれたものだが、今回の陸山会裁判において、法廷指揮経緯とは異なる奇怪な判決を導いた登石東京地裁裁判長に、何らかの影響を与えたのではないかと言われる最高裁事務総局の実態が事実をもとに分析されているので、一読の価値がある。


≪日本司法の支配構造〜最高裁長官と東京高裁長官の経歴に着目する〜 西川伸一『もうひとつの世界へ』第17号(2008年10月)8-13頁。

はじめに 司法部の頂点には最高裁長官がいることは言うまでもない。彼は三権の長の一人として、他の3人の長(立法部には衆院議長と参院議長がいるので)とともに国家的行事に列席する。たとえば、終戦記念日に行われる政府主催の全国戦没者追悼式には、最高裁長官も「追悼の辞」を述べる。 ただ、残念なことにテレビ中継には最高裁長官の出番までは映らない。国民が最高裁長官の肉声に接する機会はめったにない。国民が最高裁長官の存在を意識するのは、最高裁大法廷判決の際の頭撮りで長官の映像なり写真を目にするときであろう。

ちなみに、最高裁には長官を含む15人の裁判官が5人ずつ分属する三つの小法廷と15人全員で構成される大法廷がある。大法廷では長官が裁判長となる。 しかし、最高裁長官の仕事はこの2種類にとどまらない。長官は司法行政事務の最高責任者でもある。 全国に散らばる3200人もの裁判官ならびに2万人を超えるそれ以外の裁判所職員の人事や給与、約3304億円(2007年度)に及ぶ裁判所予算額の切り盛り、地裁だけでも本庁と支部をあわせて253ヵ所もある裁判所の施設管理など、裁判を裏で支える仕事を司法行政という。

日本国憲法により独立が保障された司法部は、裁判に伴うこのような庶務的な仕事も自前で行っている。 最高裁の司法行政事務について、裁判所法12条は次のように定める。
1 最高裁判所が司法行政事務を行うのは、裁判官会議の議によるものとし、最高裁判所長官が、これを総括する。
2 裁判官会議は、全員の裁判官でこれを組織し、最高裁判所長官が、その議長となる。 高裁、地家裁も同様に、それぞれ高裁長官、地家裁所長が各裁判官会議の議長を務め、めいめいの裁判所の司法行政事務に責任を負う。そして、司法行政事務を担当する部局として、最高裁には事務総局が、高裁と地家裁には事務局が置かれている。

実は、高裁長官も地家裁所長も裁判官でありながら、裁判実務には携わらない。司法行政事務に専念する。ところが、最高裁長官だけは、その双方で文字どおり「最高」の重責を担っている。 最高裁長官にはいかなる人物が就いてきたのであろうか。

1 歴代最高裁長官の経歴
歴代最高裁長官は表1のとおりである。最初の3人は最高裁裁判官になった当初から最高裁長官であった。横田正俊以降の13人は、弁護士出身の藤林と検察官出身の岡原を含めて、みな最高裁判事を経て長官に就任した。
*表1省略

最高裁裁判官15人の出身別構成は、裁判官6、弁護士4、検察官2、行政官1,外交官1、大学教授1が慣例化している(ただし、現在は行政官2、外交官0)。すなわち、最高裁裁判官のうち9人は裁判官の経験がなく、さらに3人は司法試験を経ていない。最高裁は法律の運用や解釈に最終判断を行うことから、狭い法律専門家的観点に縛られない識見をそこに反映させるため、というのがその理由である。 各枠に欠員が出れば同じ枠から後任が選ばれる。
たとえば、9月2日に定年退官した才口千晴最高裁判事は弁護士出身であった。その後任には、やはり弁護士の宮川光治が就いた。

この人的構成は最高裁発足時にまでさかのぼる。これを仕上げたのは当時の片山内閣であった。加えて、片山哲首相自身が三淵を初代長官に推した。三淵は大正時代にアントン・メンガーの『民法と無産階級』の邦訳に携わり、アジア太平洋戦争中は同じ弁護士だった片山と平和論で旧知の間柄であった。また、三淵は社会主義の立場から司法を研究した最初の日本人といわれる。

最高裁長官の定年は最高裁判事と同様に70歳である。そこから逆算して、次の長官の人選が進められる。憲法によれば、内閣の指名に基づいて天皇が任命する手はずになっている。だが実際には、現職の長官が14人の最高裁判事の中から最適任の候補者を首相に推薦し、内閣がこの推薦に従って指名する。戦没者追悼式のみならず、三権の長として首相と長官が同席する機会は多い。それらをとらえて、下交渉が行われるものと推測される。 最高裁裁判官の出身枠を考えれば、最高裁長官にはその比率に応じた就任者がいてもおかしくない。ところが、表1のとおり、裁判官枠からの着任が11人と圧倒的に多いのが現実である。9代の服部からは、すべて裁判官枠の最高裁判事が長官に就いている。 彼ら11人が最高裁判事になる前は全員が高裁長官であった。すでに指摘したように、高裁長官は管内の司法行政に専念し、法廷には出ない。さらに高裁長官就任に至る経歴をみると、これまたほぼ全員が最高裁事務総局の幹部ポストを経験している(表2参照)。
*表2省略

最高裁事務総局には、トップである事務総長の下に七つの局(民事局長と行政局長は兼務するので、局長は6人)と29の課が置かれている。事務総長、局長のすべて、および課長のうち21ポストは慣例的に裁判官が就くポストと決まっている。各高裁の事務局長ポストも裁判官が必ず座る。彼らは司法行政のみを担当し、法廷での裁判実務には一切携わらない。 表2をみると、村上だけが唯一事務総局幹部ポストを経験していない。しかし村上は、法務省民事局長、最高検公判部長などを歴任した、れっきとした司法行政のプロである。 司法部に君臨する最高裁長官は、最もすぐれた裁判官というより司法行政に精通した能吏である。その意味で、裁判官ではなく司法官僚が日本の司法を支配している。それでは、司法官僚はいかにして養成されるのか。

2 司法官僚の養成メカニズム
一口に裁判官と言っても、その中身は司法官僚グループと実務裁判官グループに分かれている。約1割の前者は司法行政専従ポストと裁判実務ポストを交互に歴任しながら、司法官僚としての出世の階段を昇っていく。

もちろん、裁判官に司法官僚という特別の採用枠があるわけではない。裁判官になるには等しく司法試験に合格し司法修習を終える。ただ、任官の時点で、東大・京大出身で年齢が若く、司法修習の成績が優秀で性格が素直な者は、事務総局人事局からすでに一目置かれている。 彼ら司法官僚候補の初任地は、東京地裁など大都市の地裁である場合が多い。

まず新任判事補として部に配属され、裁判長=部総括判事から勤務評定を受ける。それが良好であれば、2年後の初任あけで事務総局各局の局付になる。これは司法行政の見習いポストで、裁判現場とは無縁である。ここでも認められれば、晴れて司法官僚グループへの仲間入りが許される。 その後は、途中に裁判実務ポストをはさみながら、事務総局の課長、最高裁調査官、司法研修所の教官などエリートコースを突き進む。

判検交流といって、身分を裁判官から検察官に変えて、法務省民事局長や内閣法制局参事官など行政部の幹部ポストに就く場合もある。これも出世とみなされる。それだけに、実務裁判官には、裁判しない裁判官のほうが有能な裁判官だという逆立ちした感情が植え付けられる。

さて、司法官僚は司法行政で有能さを認められれば認められるほど、ますます司法行政ポストから離れられなくなる。その結果、裁判官でありながら、そのキャリアの半分以上を裁判せずに勤務することも例外的ではない。とりわけ、最高裁判事に上りつめる者にその傾向は顕著である。例えば、前長官の町田顕は任官から最高裁判事になるまで、裁判をしていたのは5250日なのに対して、裁判せず司法行政のみに従事していたのは8980日であった。

裁判実務から遠ざかり、事務総局の局長にまでたどり着いた栄達者のほとんどは、その後東京高裁管内の地家裁所長から高裁長官に至る。司法研修所長を経由する場合もある。そして、高裁長官の中から最高裁判事が生まれ、さらにそのうち一人が最高裁長官となる。 より詳細には、事務総局各局にも格付けがある。総務局、人事局、および経理局は官房事務部局とよばれ、各省庁の大臣官房に相当する。一方、民事局、刑事局、行政局、および家庭局は事件関係事務部局といわれ、各省庁の原局に対応する。 官房が原局に優越するのと同様に、官房事務部局は事件関係事務部局の上に位置づけられる。同じ局付、課長、局長でも、この両者のどちらかで重みが異なる。官房事務部局の局付と課長を経験した者は、出世のトップランナーと言える。また、表2のうち、日本国憲法の下で司法修習を受けた矢口洪一以降の長官をみると、6人中4人が官房事務部局の局長を経ている。

余談になるが、前長官の町田顕の後任は堀籠幸男最高裁判事とする新聞辞令が、2006年9月24日付朝刊に一斉に出た。堀籠は人事局長および事務総長を歴任していた。順当にいけば堀籠だったはずである。ところが、国民が刑事裁判に参加する裁判員制度の導入を目前に控えて、刑事局の課長や局長を歴任し、刑事司法行政に詳しい島田の起用となった。 島田は1938年11月22日生まれであるから、今年の11月21日に定年退官となる。後任の長官はだれになるのか。有資格者はもちろん裁判官枠の最高裁判 事であり、具体的には表3の5人である。
*表3省略

経歴的には泉と堀籠は申し分ないが、泉は2009年1月に定年となってしまうので、泉の芽はない。堀籠がなった場合も、2010年6月の定年まで在任期間は1年5ヵ月程度にすぎない。歴代長官で最短の任期は藤林の1年3ヵ月であるので、堀籠の可能性は残されている。 ただ、裁判官出身枠から就任した長官に限れば、三好の約2年が最短である。むしろ、3年以上在職できる涌井に分があるのではないか。今井は泉に次ぐ高齢であり、なおかつ官房事務部局長を経験していない。一番若い近藤は、今回は見送られるだろう。

3 東京高裁長官のおおきな地位
すでに述べたとおり、高裁長官→最高裁判事→最高裁長官が司法部の頂点部分の人事パターンである。司法行政は、全国に八つある高裁の管轄区域を単位として展開されている。たとえば、裁判官の異動も任官して10年の再任を経て判事になった後は、次第に高裁管内に限定されていく。最高裁判事は裁判実務のみを仕事とするので、高裁長官は最高裁長官に次ぐ司法行政上の地位となる。ゆえに、わが国司法の支配構造を考える上で決して無視できない。 裁判所法の上は、八つある高裁ポストに優劣はない。

しかし、裁判官の報酬等に関する法律が定める報酬月額には、「東京高裁長官」と「その他の高裁長官」 という区分がある。前者の報酬月額は144万8000円なのに対して、後者のそれは134万1000円である。報酬月額では、東京高裁長官はその他の長官より格上の扱いを受けている。こうした東京高裁長官の別格性は、各高裁が管轄する地家裁数・裁判官数に関係している(表4参照)。
*表4省略、注記省略

東京高裁管内の地家裁数は抜きんでている。しかも、それら地家裁に配属されている裁判官だけが、東京高裁の差配する裁判官ではない。最高裁調査官として働く裁判官、最高裁事務総局、司法研修所、および裁判所職員総合研修所に勤務する裁判官も、東京高裁、東京地裁、東京家裁のいずれかに籍を置いている。彼ら裁判しない裁判官を加えると、全国の裁判官の半分程度は東京高裁管内勤務になる。 司法行政の面では、東京高裁長官が彼らすべての上に立つ。なので、東京が他の高裁長官より一段上の処遇を受けるのはうなずける。 日本国憲法下で司法修習を受けた裁判官の中で、東京高裁長官の歴代就任者は表5のとおりである。
*表5省略

 すなわち、歴代東京高裁長官は、全員が東大または京大出身者であり、一人を除いて全員が事務総局のポストを経験した司法官僚である。17人中12人が局付、課長、局長すべてに就いている。さらに5人はすべて官房事務部局のポストであった。 他の高裁長官と比べて、就任者全員が東大または京大出身者であるのは東京だけである。また、ほぼ全員が事務総局ポストを経ているのも、東京の顕著な特徴となっている。任官時から司法官僚として純粋培養された、裁判しない裁判官たちの殿堂といった趣がある。

表1に戻れば、裁判官枠の最高裁長官11人のうち8人が、最高裁入りする直前の職は東京高裁長官であった。また、表5のとおり、10人が東京高裁長官ののち最高裁判事になっている。 先述のとおり、全裁判官の5割は東京高裁管内に所属する。残る5割はうち2割が大阪高裁管内、さらに残る3割が他の6高裁管内に属している。従って、大阪高裁長官は東京高裁長官に次ぐ序列となる。就任者の出身大学や司法行政ポスト経験も東京に準じている。すでにそこから2名の最高裁長官が生まれている。 ちなみに、次の長官候補者の堀籠も涌井も大阪高裁長官から最高裁判事になっている。島田に続いて、大阪高裁長官経験者から最高裁長官が出る可能性が高い。

むすびにかえて
日本司法の支配構造は、全裁判官の約1割に当たる司法官僚が司法行政をてこにして、残りの実務裁判官を巧みに操るしくみになっている。最高裁長官とは司法官僚きっての出世頭であって、その予備軍が東京(大阪)高裁長官である。その地位に至るまで、彼らはほぼ同じ経歴を歩んでいる。

最高裁事務総局で局付から課長を経て局長へと、司法行政のプロとしての実績を積み上げるのである。 この人事パターンは制度化されている。それにより、司法官僚に代々にわたって特定の価値観が継承されていくと推測される。それは「行政優位」の伝統と要約できよう。

すなわち、庶務にすぎないはずの司法行政を現場の裁判実務より重要と考える、戦前の司法省にさかのぼる発想である。 旧憲法下では司法部の独立は認められておらず、司法行政に関しては行政官庁の司法省が担当していた。日本国憲法の施行により、もちろん制度的には司法行政は最高裁に移管された。

だが、人的には戦前の旧司法省官僚(裁判官)が最高裁事務総局(当初は事務局)に温存されることになった。のちの第5代最高裁長官・石田和外もその一人である。石田は最高裁発足にあたって、司法大臣官房人事課長から最高裁事務局人事課長に横滑りした。 彼ら旧司法省官僚が戦前の人事パターンを最高裁に受け継がせ、「行政優位」の価値観を扶植していったのである。

日本国憲法下で司法修習を受けたはずの矢口は、人事局長から事務総長の任にあった頃、実務裁判官たちを「度し難い愚か者ども」とさえ形容していた。矢口のこの本音は、戦前の価値観の継承をグロテスクなまでに示していよう。 言うまでもなく、戦前は天皇の裁判所であり官本位であった。戦後は国民本位の裁判所に姿を変えたはずだ。ところが現実には、国民にじかに接する実務裁判官は軽視され、いわば奥の院に陣取る権威的な司法官僚が幅をきかせてきた。

司法省の伝統を受け継ぐ司法官僚の意識は、司法部の独立を自覚するより、官としての同族意識という点で行政部と親和的である。その彼らが最高裁裁判官になるのであるから、最高裁判決が官僚的・行政寄りになるのは避けられまい。 官から国民へ主客を逆転させるポイントは、裁判所から「オカミ」意識をはぎとることであろう。国民の裁判参加はその突破口になると私は考えている。 (文中一部敬称略)≫(明治大学教授:西川伸一氏の論文より)
*改行等一部筆者にて変更しています。

*西川 伸一(にしかわ しんいち、1961年 - )は、日本の政治学者。明治大学政治経済学部教授。専門は、国家論、現代官僚制分析。

裁判官幹部人事の研究 「経歴的資源」を手がかりとして
西川 伸一
五月書房



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日本は世界5位の農業国、食糧安全保障は充分だ! 自給自足充分可能

2011年10月01日 | 日記
アメリカに潰される!日本の食―自給率を上げるのはたやすい!
山田 正彦
宝島社


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日本は世界5位の農業国、食糧安全保障は充分だ! 自給自足充分可能


 日本の鎖国的自主独立と云うイメージを何度か拙ブログで書いてみたが、その都度「馬鹿言うな」と云う類のコメントが多くなるのを興味深く読んでいる。自給率40%を切るかもしれない日本に、輸入食料品が入らなくなったらどうするのだ?と云う疑問と云うか意見が多い。 次に、エネルギー、特に電力は再生可能エネルギーで賄えたとして、化石燃料を元に作られる、化学製品はどうなるのだ、という意見が多い。今回は食料の自給について述べることとし、追々化石燃料と科学薬品の検証も行う事にする。

 常識的に考えて欲しい。「世界の車窓の旅」ではないが、あらゆる国々の景色を見ていると判ることだが、森の緑より、赤茶けた大地が拡がる風景が目を引く。努力し、工夫し、そこにブドウやオリーブ畑、トウモロコシ畑等々を作っている現実に直面するだろう。

 それに比して、「日本の車窓の旅」をしてみれば、一目瞭然だ。 大都市を除けば、地方都市を15分も列車で走れば、もうそこは田畑の連鎖地帯である。その田畑の間には川が流れ、その後方には丘陵が拡がり、大小様々な連山が見える。つまり、日本の景色は緑の連続なのである。こんな国家は滅多にはない。また、反対側の車窓を覗けば、大海原。太平洋だ、日本海だ。挙句に、これらの景色は四季折々に色を変え、人々の目を愉しませる。否、愉しむだけでなく、それが肥沃な大地の恵みを、我々日本人に与えているのである。

  国連食料農業機関(FAO)が公表しているデータによれば、日本の森林率は68.5%。つまり国土の7割近くは森林ということになっている。森林率で言うなら、日本はフィンランドに次ぐ世界第二位の緑豊かな国家なのだ。この森林率の算出方法を充分検討していないが、列車の車窓から見える、平地の田畑は含まれないだろうから、目に見える緑の量は8~90%になるのではないだろうか。

 つまり、人間の感覚と云うものは結構正しいもので、このような緑の占有国家が食糧で自給自足出来ないと云う話を鵜呑みに出来る人は、目が節穴状態になっているとしか思えない。緑に飽きたら、流れる川の水を眺め、淡水魚を食することもあるし、でっかい海の海産物を手に入れているのだから、食糧自給率が40%を切るかもしれない等と云う話に、耳を傾ける必要は皆無だ。

 単に経済効率から、食料を輸入する方が得だと云う次元の問題であり、鎖国的自給自足に、何の支障も来さないのは自明だ。 化学肥料や農薬問題も、経済効率の追求故に生まれた問題であり、国家の自立自尊の中においては、瑣末な要因でしかない。不揃いな生産物が出来たからどうだと云うのだ?生き物とは、すべからく不揃いなもので、まったく同じ奴等いない。植物、魚類も同じだと受け入れれば良いだけの話だ。

  ちなみに、既に日本は農業生産額では、世界5位。中国、アメリカ、インド、ブラジルの次である。上位4カ国は国土面積がベラボーに違うのに、そう云う事だ。つまり、肥沃な大地を端から抱えているのが日本だ。日本は食料の輸入でも世界4位だが、輸入食料の方が安くて簡便だから自作せず、輸入しているものや、贅沢嗜好の為に輸入が行われているのが実態で、食糧自給安全保障を論ずる上で、俎上に乗せる統計数字ではない。

  だいぶ前に、日本の食料自給率に関する、統計の嘘を書いたが、40%と云う数字は作為的計算方法なだけで、カロリーベース等と云うマヤカシの数字に意味はない。また、外食産業やコンビニの廃棄食料(年間2000万トン)が含まれたカロリー計算をしているので、需要の見せかけが横行している。供給力の産出も、自給自足農家や副業的農家、家庭菜園で生産する大量の米や野菜を含めていない。勿論、生産調整で畑で廃棄してしまうキャベツなども、含まれない。おそらく、供給に含まれない我が国の農産物の公表数は30%ほどネグられている。

 結論とまでは言わないが、日本の食糧自給率は、食の安全保障において、充分であるし、開発可能な緑の大地は残されている。放射能汚染問題が引っ掛かるが、汚染地域で減少するなら、その分未開拓な部分に手を加える事で、最終的には解決するだろう。まさか、今後次々原発が事故を起こし、日本中が汚染されるとは思いたくもない。その節には、日本の食糧自給率問題は、筆者の論を根っ子から覆す。


日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書)
浅川 芳裕
講談社


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