世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●象徴的な「アジアインフラ投資銀行」 時代を読みきる勇気

2015年03月20日 | 日記
十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争
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●象徴的な「アジアインフラ投資銀行」 時代を読みきる勇気

予想した通り、英国に続いて、独仏伊と相次いで、中国が主導する「アジアインフラ開発銀行(AIIB)への参加を表明した。韓国、豪州は、入りたいが、アメリとの距離の取り方に腐心しているようだ。主だった国としては、時代の流れとして、シルクロードやユーラシア大陸の開発市場は、最後の有力市場と見定め、現時点の力関係とは一線を画す「国益」重視の外交を行っていると言えるだろう。21世紀の後半における開発領域が、上述の領域が有力なのは誰の目にも明らかなのだから。

それに引き替え、現状、日米だけが蚊帳の外の状況に至っている。無論、付和雷同的にAIIBへの参加が正しい方向かどうか、即断は出来ない。しかし、問題は、このAIIBに対応する、日本政府の判断が、自国の利益や将来的国益で、分析判断した形跡がないのが問題だ。日本政府が独自に物事を判断できない思考停止現象は、70年間も続くGHQ占領体制の名残だと言われているが、抵抗らしい抵抗も示すことが出来ていない。安保など一部は、強化する方向に動いているのだから、何をかいわんやだ。まさかと思うが、これでTPP協定参加が決まってしまえば、今後、日本は堂々巡りのような経済圏で生きることを余儀なくされるだろう。

ネトウヨらが、宿命のライバルように敵視する韓国の方が、余程現実的路線の選択を模索する姿勢を見せている。韓国の場合、米中の二股外交で股裂きに遭うリスクもあるだろうが、時代なりの対応で外交の努力は惜しんでいない。結果が、吉と出るか凶と出るかは判らない。しかし、大きな歴史観で見た場合に、必ず世界の市場の中心になる「シルクロードやユーラシア大陸」領域の開発に足がかりをつける事は魅力的である。まあ、現時点の韓国の参加条件が、アメリカの代弁者のような事を言っているので、本気度は疑わしいが、交渉はしているだけでも価値はある。経済重視だけで決められない案件だけに、高度な外交問題だが、アメリカが怖いだけの日本政府よりはマシである。

しかし、もっと大きな目で見た場合、アメリカの対中外交は、一筋縄で理解するのは困難だろう。アメリカは遠い将来、日本など抜きで、中国とアメリカが共同歩調で、アジア及び中東領域を共同支配する方が合理的だと考えている節がある。このことは、ひた隠しされて、我々の目にハッキリと見えていないのだが、米中の黙契が背後にある可能性はかなりの確率であるのだろう。無論、その黙契が頓挫することもあるのだが、理性的に考えてみれば、米中で茶番を演じている事まで、疑うことは可能だ。北朝鮮、韓国、日本は刺身のつまと云う役回りかもしれない。この辺は、アフガンの米軍完全撤退には、中国の協力が不可欠である事に起因しているのだろう。日本はアフガンに50億ドルの支援をしたが、中国は3億ドル程度で大いに感謝されている点を見ても、疑わしいのだ。

この程度の、アメリカの陰謀は、部外者でも見えてくる疑惑だが、当然ロシアにも見えているだろう。ただ、中国は、ウクライナを通しての姿勢を見る限り、幾分ロシア寄りだが、中立な位置にある。しかし、イザとなれば、中露の軍事的協力関係は、揺るがないだろう。それに引き替え、我が国外交姿勢は、安保法制とかに現を抜かし、米軍と共に戦える自衛隊を出現させることに躍起になっているのだから、救うべき道もないし、軌道修正する余地も、あまり残っていはいないようだ。特に、日本の世論が、尖閣諸島の防衛云々に強く拘ったことで、大きな世界のうねりが、まったく視野に入らなくなっている点が、情けない。最後に、少々心もとないコラムだが、加藤嘉一氏のコラムを紹介しておく。


 ≪ 全人代で再確認された“大国外交”の変化
  現在、1年に一度のビッグイベント、全国人民代表大会(全人代)が北京で開催されている。党や政府の首脳陣が今年1年の政策目標を直接語る重要な会議だ。
 3月8日、王毅外相が記者会見に臨んだ。
 王外相はまず、2014年の中国外交を“豊作の年”“開拓の年”“創新の年”と総括。その理由として、アジア信頼醸成措置会議(CICA)とアジア太平洋経済協力会議(APEC)という“2つの主場外交を成功させた”ことを挙げた。その上で、以下のように主張した。
 「特筆すべきは、協力とウィンウィンを核心とする新型国際関係の構築に着手し、パートナーシップを重視する対外交流の新しい道を歩みつつあること だ。中国は昨年末までに70以上の国家・地域機構とパートナーシップを結んでおり、グローバルなネットワークを形成している。中国の“朋友圏”(友人ネットワーク)はどんどん大きくなり、良き友人も、良きパートナーもどんどん増えている」。
 ここにも、習近平政権を象徴する“新型”という枕詞が出てきた。
 王外相によれば、習近平国家主席が昨年提唱した“新型国際関係”は、勝者がすべてを持っていく独りよがりの古い考えに取って代わるものだという。また、「過去の大国と異なり、中国は平和的発展の新しい道を自ら切り開いた」とも語った。
 筆者がこのセンテンスから読み取ったのは、習国家主席が率いる中国外交の指導者たちが、(1)米国の存在を相当程度意識しており、(2)米国主導 の国際秩序を何らかの形で変更したいと考えており、(3)中国自身を歴史に名を残す大国にする方法を追求しようとしていることである。
 王外相は2015年における中国外交の重点を“一帯一路”だと明言した(参考記事「張高麗主導でいよいよ本格化する“一帯一路”戦略」)。「相互に連結するインフラ整備、および陸上経済&海上協力の建設を推し進めたい。早期の収穫が見込め、ユーラシア大陸全体の振興を支援できると信じている」。
   “一帯一路”は習国家主席が政治的に重視している国家戦略であり、「中央宣伝部、中央電視台(CCTV)、新華社、外交部、商務部、発展改革委員会、そして各地方の人民政府やインフラ関係の国有企業など、各機関がそれぞれの職責から“一帯一路”を推し進めるべく総動員で取り組んでいる」(中国政府関係者)。

 「中米両国は大国だ」
 王外相の記者会見では、中国・海外の記者から合計16の質問がぶつけられた。字数の関係上、ここですべてを取り上げ、解説を加えることはできないが、以下、筆者が選んだ3つについて議論してみたい。
 1つ目は日本・米国・中国の関係である。王外相は、米中・日中関係に関する質問にそれぞれ答えた。いずれも想定内の回答であったが、2015年の中国外交が対米・対日関係をどう位置づけているのかを確認する上で重要なコメントであった。
 まず、対米関係について。習国家主席がオバマ大統領の招待に応じて、今秋に米国を公式訪問する予定だとした上で、以下のように主張した。
 「中米両国は大国だ。摩擦がないことはあり得ない。新型大国関係を建設することによって摩擦が一夜にしてなくなることもあり得ない。我々は顕微鏡 を使って問題を大きくする必要はない。それよりも、望遠鏡を使って未来を眺めることだ。方向性を把握することだ…中米の利益はアジア太平洋地域において最も重なり合い、その連動は最も頻繁である。新型大国関係はアジア太平洋から取り組むべきだ」 この回答から読み取れるのは、(1)習国家主席率いる中国外交指導部が“昨今の国際政治は米中二強時代”という認識を持っているだけでなく、(2) 米国をライバル視し、“新型大国関係”に米国を巻き込もうと目論んでおり、(3)特に、アジア太平洋地域において中国の戦略や国益を米国に尊重させること、少なくともそれらの邪魔をしてもらっては困ると考えていることである。
 また、王外相は「中米は共にインターネット大国である。サイバーセキュリティーの問題に関しては双方が共通の利益を持っている。中国としては、サ イバー空間が両国にとって、相互摩擦の源泉ではなく、協力を推し進めていく上での新しい領域になることを願っている」とピンポイントで主張した。中国当局は、対米関係を上手にさばくことができるかどうかの一端はサイバーセキュリティー問題をどう処理するかにかかっていると認識しているわけだ。

 「日本は良心的な歴史認識を」
 対日関係について、王外相は歴史認識の問題で日本を牽制した。同外相は“抗日戦争勝利70周年”を折に触れて宣伝している。
 「70年前、日本は戦争に負けた。70年が経った今、日本は良心的な歴史認識を持つという闘いに負けるべきではない。歴史の重荷を背負い続けるのか、過去と決別するのかは、最終的には日本自身が選択しなければならない」
 王外相は今年開催予定の“反ファシズム戦争勝利・抗日戦争勝利70周年”の記念行事に、他国の首脳と同様に、日本の安倍晋三首相を招待する用意があると語った。
 招待状は当然、米国のオバマ大統領にも送られるだろう。中国の戦後70周年キャンペーンをどう解釈し、どう対応していくか。日本としては同盟国で ある米国とも対話を重ねながら判断していく必要がある。これについて筆者がワシントンDCで感じることは、米中が“日本の歴史問題”を巡って広範で多角的 な対話を展開していることだ。
 米国首脳陣も安倍首相の歴史認識・声明に注目している。その内容次第では、米国側が不満を露わにし、そこに中国がつけ込むであろう。安倍首相が靖 国神社を参拝した経緯が思い起こされる。日本の歴史認識が引き金となり、結果的に米中が“接近”する事態は、“公共財としての日米同盟が中国の行動に対し てチェックアンドバランスを計る”という基本構造を崩しかねない。
 一人の有権者として、筆者自身は、安倍首相は中途半端なレトリックで主張を曖昧にしたり、誤解を招きかねないような表現をしたりすることは断じて 避け、大胆かつ謙虚に歴史認識を披露し、中国と米国から何一つ突っ込ませず、日本を称賛せざるを得ないような発言をすべきだと考える。それが結果的に、日本の経済・安保政策における権益の最大化につながるものと信ずる。

 5月にも、中ロ朝の三カ国首脳会議実現か
 2つ目は中国・ロシア・北朝鮮の関係である。結論から言えば、筆者は「今の時代になっても、中国とロシア、中国と北朝鮮は特別な関係なのだな」と痛感している。
 ロシアについて、「西側諸国がロシアに制裁を加え、ルーブルが暴落している状況下で、中国はロシアとどのような関係を築くか?」という質問に対 し、王外相は以下のように答えた。「中ロ関係は激動している国際情勢の影響を受けない。中ロはすでに強固な戦略的相互信頼関係を築いている。これからますます成熟し、安定していくのだ」。
 2015年の対ロ外交目標として、王外相は1000億ドルという貿易目標の実現、シルクロード経済協定の締結、天然ガスパイプライン工事の開始、高速鉄道、金融、原子力発電などの協力強化なども掲げた。
 北朝鮮については、「北朝鮮の最高指導者が5月にロシアで開催される反ファシズム戦争勝利記念式典に出席することが決まっているが、訪中日程は決 まっていない。今年、中朝指導者による会談は実現するのか? 六カ国協議は復活するのか?」という質問に対して、以下のように答えた。
 「朝鮮半島情勢は再び敏感な状態に入った。中国としては、関係各国に冷静さ、自制、ポジティブな発言・行動を促し、六カ国協議を再開させるべく前向きな雰囲気を作り、条件を整えたい」。
 中国外交指導部が朝鮮半島情勢が緊迫していることを認識していること、そのなかで、北朝鮮の振る舞いに不満を持っていることを暗示している。
 しかし、である。
 王外相は次のように続けた。「中朝は友好的な隣人である。中国人は信義と情義を重んじる。我々は中朝の伝統的友好関係を大切にしているし、両国関係の正常な発展を望んでいる。中朝関係には強固な基礎がある。一時的な事態に影響は受けないだろうし、受けるべきではない」。
 ロシアに対する発言と明らかに似通っている。ロシアや北朝鮮が中国を当惑させるような行動をとっても、「そういうことに振り回されない」のが中ロ関係であり、中朝関係だと言っているのだ。
 中ロ北の三カ国関係について言えば、注目されるのは、前述のとおり、5月にモスクワで、ウラジミール・プーチン、習近平、金正恩という3首脳が初 めて一堂に会する場面であろう。中国政府関係者によれば、モスクワでは中ロ・ロ朝・中朝首脳会談をそれぞれ実施すべく、現在調整を急いでいるとのことだ。 王外相は記者会見にて、「中朝指導者の会談に関しては、双方が適切だと判断した暁に実現するだろう。状況次第だ」としている。

 変わった、“大国外交”の意味
 3つ目は、“中国独自の大国外交”である。最後の質問で、CCTVの記者がその定義と内容について質問をした。中国共産党指導部として、国内外に訴えたかったテーマなのだろう。
 王外相は「中国独自の大国外交の中身は豊富であり、党の領導と社会主義制度、独立自主の平和外交政策、平和的発展の道を進むこと、大国も小国も一 律に平等であることを堅持すること」などと説明。その上で、「一つの重要な特徴は“協力とウィンウィン”にあると思っている」とコメント。それから習国家主席が提唱した、前述の“新型国際関係”について論じ始めた。
 これは何を意味しているのか。
 習国家主席、そしてその意思を執行する王外相は“中国独自の大国外交”と“新型国際関係”は表裏一体の関係にあると言っているのである。
 中国共産党中央は昨年11月、中央外事工作会議を開き(関連記事:「“習近平外交”の幕開け」)、習国家主席が“中国独自の大国外交”を提唱した。この時以来、筆者はこの文言をどう解釈すべきかについて中国の外交関係者たちとワシントンDCで議論を重ねた。
 その過程で明らかになってきたのは、習近平政権が使用する“中国独自の大国外交”の“大国外交”は、“大国との外交”ではなく、“大国としての外交”を指すことだ。胡錦濤・前国家主席の時代までは、中国当局が"大国外交"という時、これは"大国との外交"(特に米国)を指すのが常だった。現在の “大国外交”の使い方は、当時と180度解釈が異なる。
 筆者のこの理解を、複数の中国外交関係者たちに当ててみると、皆一律に、そしていつになく率直に、「その理解で正しい」と返してきた。彼ら・彼女らは、胡錦濤政権から習近平政権に移行して以来、随所で感じてきた、外交スタイルの変化を強調した。
 そのうちの一人が筆者に語った。「先日、私はそれ("大国外交"の解釈が変わったこと)を説明するプレゼンをワシントンの某シンクタンクでしてきたばかりだ」。 ≫(日経ビジネスONLAINE:アジア国際―米中新時代と日本の針路・加藤嘉一)

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