世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●「嫌韓・反中」お次は「日本礼賛」 どうなっている?この国

2015年03月01日 | 日記
なぜ若者は保守化したのか 希望を奪い続ける日本社会の真実 (朝日文庫)
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●「嫌韓・反中」お次は「日本礼賛」 どうなっている?この国

最近、面白い現象が見られる。安倍晋三をご本尊にしたような右傾ブログがランキング上位に名を連ねる。無論、以前からそうなのだが、ここ1か月ほど、特に力の入れ方が強化された。おそらく、すべてのブログかどうか判らないが、以心伝心?で、書いている内容が余程充実しているのか、1~2割増しのポイントを得て、ランキングを軒並み伸ばしている。結果的に、植草氏、天木氏、拙ブログなどは元気を失っているように見えてしまう。

ここ1か月くらいから、阿吽の呼吸でブログのコンテンツが充実し、ファンが増えたに違いない(笑)。ただ、気になるのは、国会の本会と時期が一致しており、安倍内閣の「政治とカネ」疑惑追及が議場で行われ、毒まんじゅう喰らったマスメディアも、議会で行われている速記録の保証付事実関係なので、ここを先途と書きまくる。特に電子版では朝日、毎日、東京は必ずトピック扱いになる。

これでは、「空気」で押され気味になる。数では圧倒的に右系ブログが有利だが、ランキング上位も安倍応援ブログで占拠してしまわないと、拙いだろうと云う「空気」でも出来たようだ。拙ブログの人気がないから僻んでいるな?と解釈されても仕方はないのだが、リベラル色のあるブログが相対的に元気がない。この傾向は、書店においては顕著である。一時は棚全体を、「嫌韓」「反中」で埋め尽くすような勢いだった。ただ、安倍自民の旗色が幾分怪しくなってきた。安保法制国会にしようと云うのに、これでは拙い空気感はあるようだ。

嫌韓反中は、最近は「日本礼賛」と云う傾向にシフトしている。以下の毎日新聞の記事は一読に値する。ただし、この記事内に書いてある販売部数と実読部数にはかなりの乖離があると幾つかの書店のオヤジ達が言っていた。所謂、新聞社お得意の押し紙(新聞各社は押し紙の存在を否定するが、ネットなどではよくその存在が既成事実として語られる)と似ているが、大量買いが何故かあるので、出版社の営業が強引に置いて行っても損はなそうである。誰かが、大量買いを約束し、履行するシンジケートでもあるのだろう。その証拠ではないが、この記事に書かれている各種本が、AMAZONランキングで、上位に来ることが少ないのは、その所為だろう。

この毎日の記事が解説するような事実が、新聞テレビ同様に「言論自粛」と云うことで拡大しているのだろうが、AMAZONや紀伊国屋、丸善の売り上げランキングを見ていると、必ずしもリベラル色のある本が売れていないとは言えない。マンガ原作の邦画が、間違いなく一定の観客を固定客として読めるのに似ている。まして、大量買い顧客が白馬に乗って店に電話注文されるらしいので、スペースを奪われても痛痒はないと云うことらしい。そう言えば、腰を抜かしたのが、百田尚樹原作を映画化した「永遠のゼロ」が、日本アカデミー賞8部門で最優秀賞を得たと云うニュースだが、これも「日本礼賛」本と相通じるのだろう。

ただ、面白い現象もあって、嫌韓、反中の本は、7:3くらいの比率で、韓国ヘイトが優勢だ。ネットの世界では、これがより比率がもっと極端になっ、9:1くらいになる。この傾向は、ニュートラルな感覚を持つ日本人を見ても、ある程度理解出来る。韓国をどこまで行っても「目下」に見ていたい情緒的な問題だ。「目下」が「目上」の上にくる分野が現れたことに、酷く動揺し、苛立っている結果だ。おそらく、中国には一目置くべきだろうと云う感覚が、日本人全体に、実はあるのだろう。

遣隋使、遣唐使も史実だからな…、あの国から文明を学んだのは紛れもない事実で、目を瞑って済むものではない。史実では、朝鮮半島からも、随分学んでいるのだが(笑)。中国には、既にGDPでは追い抜かれているわけで、アメリカまで抜く勢いなのだから、国家規模では、悔しいが敵わんだろう。経済成長GDP信仰が、日本人の潜在的意識にある以上、日本は残念ながら、精神的にも、中国に大きく離されるのは必定なのである。しかし、韓国には絶対に勝てる。そういう意識下で興奮していると、現政権を崇めれば崇めるほど、タブー的に言えば、礼韓論になってしまう。この辺は、深くは語らな方が賢明だろう。右系の人たちは、知った上での言論活動かもしれないが。

それにしても、自分を褒めないと明日への活力が生まれなくなる、と云うのも情けなことだ。安倍政権の大失敗経済政策を、自画自賛しているのと同様に、国際的には、かなり恥ずかしい。海外が、日本を評価する場合、多くは、庶民の行動形態であり、江戸時代以前の文化や宗教や芸術である。間違っても、明治維新以降の日本文化は、政治的外交によって得た富岡文化遺産のようなものが世界の評価を受けることは現実的ではない。NHKが吉田松陰の連続ドラマなど放映しているが、幕末から明治維新時代以降は、筆者の目から見る限り、もう日本文化だとは言えない。古臭い言葉だが「猿真似」に過ぎない。この時代に戻るのが「日本を取り戻す」には呆れる。歴史を遡る器量が、明治で限界が来たのだろね。筆者は幾分同情的に安倍ちゃんを眺めている。


 ≪ <日本礼賛本>嫌韓・嫌中しのぐ勢い? ブームの理由を探る
書店で“嫌韓・嫌中本”をしのぐ勢いで売れているのが「日本はこんなにスゴイ!」と褒めたたえる“日本礼賛本”だ。謙遜が美徳、自己PRは下手だったはずのこの国で今なぜ、この手の本が売れるのか。理由が知りたくて、尋ねて回った。【小国綾子】

◇将来不安癒やす安定剤? 震災機に広がり  
 書店でタイトルを拾ってみる。「ドイツ大使も納得した、日本が世界で愛される理由」「やっぱりすごいよ、日本人」「イギリスから見れば日本は桃源郷に一 番近い国」「イギリス、日本、フランス、アメリカ、全部住んでみた私の結論。日本が一番暮らしやすい国でした。」「だから日本は世界から尊敬される」。ど れもこの1年間に出版された。

 そういえば、テレビでも「所さんのニッポンの出番」「世界が驚いたニッポン!スゴ~イデスネ!!視察団」など外国人に日本を褒めてもらう番組がいっぱいだ。

 ブームの「火付け役」の一つは、47万部売れた2010年12月出版の「日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか」(竹田恒泰著、PHP新書)。担当編 集者、藤岡岳哉さんは「当時、正面切って自国を褒める本はほとんどなかった。自国を褒めていいというメッセージが読者に待ち望まれていた」と分析する。

 出版の3カ月後、東日本大震災が発生。整然と助け合う日本人の姿が世界から称賛を浴びた。「『日本は素晴らしい』と口に出す人が増え、部数は大きく伸び た」。シリーズ3冊で累計約81万部。3冊目「日本人はいつ日本が好きになったのか」の表紙のキャッチフレーズはこうだ。

<「自分の国がいちばん」とやっと素直に僕らは言えた>
 実際、NHKの「日本人の意識」調査(13年)で「日本人はすぐれた素質をもっている」「日本は一流国だ」と答えた人はそれぞれ68%、54%。03年 の51%、36%を底にU字回復し、1983年の最高値レベルまで戻している。やはりこのブーム、日本を好きな人が増えたせいなのか。

 一方、斬新な書名が話題の「住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち」と「住んでみたヨーロッパ 9勝1敗で日本の勝ち」(川口マーン恵美著、講談社+α新書)。前者は16万部、後者が14万部。いかにも日本礼賛といった題名だが、中身は日本をベタ褒めしているわけではない。教育面を中心に日本にも 苦言を呈しており、読後の印象はせいぜい「6勝4敗」だ。

 担当編集者、間渕隆さんは「日本を誇る本は売れるので著者と相談の上、少々盛って『7勝3敗』とする予定だったが、ゴロが悪いので『8勝2敗』にした」 と種明かしする。「00年代半ばまでは欧米人と結婚した日本人女性が日本の情けないところを指摘する本が売れていた。07年、デュラン・れい子さんの『一度も植民地になったことがない日本』が20万部を超えたあたりで潮目が変わった。震災がその傾向に拍車をかけた」

 昨年は「呆韓論」など韓国や中国をたたく書籍が多くベストセラーに入り、「嫌韓・嫌中本ブーム」として注目された。「読者も飽きてきた」(間渕さん)と ろで盛り上がったのが、今回の「日本礼賛本ブーム」だ。ネット上では「ヘイト本ブームと表裏一体」「まるで“愛国ポルノ”」などの批判の声もある。

 もっとも間渕さんは「日本礼賛本=嫌韓・嫌中本の裏返し」という図式には懐疑的だ。「愛国心を動機に読む人だけなら数万部止まり。16万部も売れません。確かに1冊目は最初、産経新聞の読者層や嫌韓・嫌中本を読む50、60代男性に売れた。しかし読者層は広がり、2冊目は女性にもよく読まれている」

 多くの読者を引きつけるには、もっと別の理由があるということか。

 過去にも、日本や日本人をたたえる本が売れた時代はあった。「『日本人論』再考」の著者で東大名誉教授(文化人類学)の船曳建夫(ふなびきたけお)さん は、その手の書籍がブームになる背景には常に「不安」があったと指摘する。「明治維新以来、国が苦境にある時も右肩上がりの時にも、日本人論は日本人がア イデンティティーに不安を抱えた時代に流行し、不安を癒やす『安定剤』の役目を果たしてきました」

 船曳さんによると、日本人論ブームの第1期は日清・日露戦争の富国強兵の時期の「武士道」(新渡戸稲造著)や「代表的日本人」(内村鑑三著)など。西洋 の先進国と比較し、日本をポジティブに評価しようとした外向きの時代だ。第2期は29年世界恐慌から開戦ごろまで。九鬼周造の「『いき』の構造」など「日 本は非西洋である」を前提に日本の伝統に価値を求めた内向的な時代。

◇出版側「自主規制」も
 第3期は敗戦から経済復興までの半世紀。「『菊と刀』から『ジャパン・アズ・ナンバーワン』まで、右肩上がりでも『これでいいのか』という不安を背景 に、長く日本人論が読まれてきた」と船曳さんは言う。「今回は第2期に似ている。第2期の不安の相手は西洋だったが、今は中国や韓国を意識している点が特 徴。人口減など将来に不安を抱えた日本人が未来に明るいものが見えないゆえに、古来の伝統や西洋人からの評価に価値や癒やしを求め、日本人、ひいては自分 自身のアイデンティティーを守ろうとしているのでは」と分析する。

 一方、このブームは出版現場に影を落としているようだ。

 中堅出版社の編集者は「売れる売れないだけでなくイデオロギー面でも自粛ムードが漂う。安倍晋三政権批判や、中国や韓国に好意的な本の企画が『反日』出版社というレッテル貼りを恐れて通らない。ジワジワと自主規制が広がっている」。

 サブカルチャーをけん引する太田出版の前社長で、今は生活クラブ運動系シンクタンク「市民セクター政策機構」で隔月雑誌「社会運動」を編集する高瀬幸途 さんは、「批判的な知性こそが90年ごろまでの出版文化の背骨を支えてきた。しかし今は自国に批判的な言説は読者に嫌われる。編集者は広告代理店のように データ分析し、手を替え品を替え売れ筋を狙う。結果、肯定的言説の本があふれ、編集者も読者もそこに溺れている」と語る。

 日本礼賛本を「自己啓発本の変種。不安な時代に自己否定的にならず、自己肯定するための実用ツール」と見る高瀬さん、「本は本来、内面の反省を迫る存在だったはずなのに」と懸念する。

 船曳さんからはこんな一言も。「適度なお国自慢は望ましいが、『いいことだらけ』とか『世界で一番』とか、他国を見下すところまで行くと、排他的になり、社会は劣化する。自国の首を絞めます」  日本を礼賛し過ぎて、自国の足を引っ張ったのでは笑えない。 ≫(毎日新聞)

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