ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層 (新潮新書) | |
竹中 正治 | |
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●マックが潰れかけ、ユニクロは元気 他国文化を受入れる意識
今日は頭がお疲れ気味なので、一昨日感じたことをひと言という感じのコラム。 知らかったが、マクドナルドが8月から全店禁煙になったのだそうだ。日本の文化を、ジャンクフードを携えて、一気にアメリカンにしたファストフードの象徴がマックだ。食い買い文化を銀座通りまで持ち込んだのが、マックだった。あの風景で、日本のいわゆる喫茶店文化は上場に衰退していった。しかし、街場では個人の一徹で、それなりに根強く生き残っているのが、なんとも日本文化的で生きた心地がする。あまり美味しくはないコーヒーであっても、淹れたオヤジの顔が見えた。武骨な手で作ってくれるナポリタンは昭和そのものだ。
それはさておき、街場のサラリーマンにとって、100円マックと100円コーヒー、そして一服は、一日の闘いに向かい英気を養う場でもあった。つまり、どこかで、マグドナルドも、現地である日本文化とのマッチングに配慮していたと云うことだろう。経営指標として、喫煙者の割合の低下は、排除の論理でもマーケットは成立する読んだ上のことだろうが、果たして、その統計数値に表れない要素を加味する余裕は、日本人ではない現在の社長には考え及ばなかったと思われる。
まったく異なる中国産鶏肉事件でマクドナルドは、危機に陥り、その回復のめどが立たない中での、今回の全面禁煙方針には、勇気ある理念の貫徹と云う評価と、日本人の文化を捻じ曲げてでも、マーケツトに君臨できると考える現代アメリカンな経営姿勢の一環を垣間見た思いだ。ジャンクフードを売っておきながら、喫煙は身体に悪いと云う相反な理念は、スローフード運動を逆手に、ロハス等と云うまがい物でマーケットを形成しようとした、アメリカ人の底の浅さを感じてしまう。
しかし、逆らいたくても逆らいきる腹積もりのない安倍政権、否、財界人どもが、TPPで、このチョツとした街場の現象まで変えていこうとしていることからも、観察は可能だ。しかし、マックが日本人の支持を受け続けられるかは、かなり疑問だ。筆者の感覚では、日本撤退と云う方針さえ考えるのではないのか、と云う思いで見ている。面白いことだが、名古屋で発生した「コメダ珈琲」という喫茶店に勢いがある。此処は分煙だが、アバウトに分煙している店も多く、コーヒーの味も今一つだ。しかし、この店には「個のスペース」を提供する姿勢が明確だ。ルノワールのさっぱり系だと思えばいい。コメダのような店づくりは、日本文化との融合から生まれたと見ていいだろう。TPPが日本にどんな災いを持ってくるか、日本人の文化否定だけは間違いがない。
霞が関官僚の日本人的群れを打破してもらう分には、文句はないが、街場の文化さえ、一夜にして変貌させるものであるのなら、日本文化で、徹底的に闘争を仕掛けるのも面白いかもしれない。アメリカ文化が正しく、日本文化が誤り等と云う図式はないわけで、彼らにそれを味わってもらうのも一興だ。こちら側にも余程の気構えはないと、物量作戦で負けてしまうのだから。以上のような事を考えていたら、ユニクロのアジア進出のコラムがあったので、ざっくり読んだが、マグドナルド等々アメリカンとはかなり違うアプローチを見ることが出来る。
≪ アジアで試行錯誤するユニクロ 国内の常識通じず
ファーストリテイリングがアジアで事業を拡大している。2002年に中国でカジュアル衣料店「ユニクロ」の1号店を出して以来、試行錯誤を重ねてき た。小ぎれいな店で手ごろな価格の普段着を売る日本と同様のモデルを展開するが、消費動向など日本の常識が通用しないことも多い。現地取材で各地の幹部らの奮闘ぶりを追った。
■セ氏30度超でも冬物中心
シンガポールの中心地にあるショッピングセンター「ブギス+」。この施設の角地に入居する「ユニクロブギス+店」は、シンガポール初のユニクロの路面店と して12年開業した。売り場面積は計1800平方メートルほど。9月25日に訪れると、売り場の目立つところに「ウルトラライトダウン」(69.90シン ガポールドル、約5900円)やフリース(29.90シンガポールドル、約2500円)が並んでいた。
セ氏30度を超える最高気温の日が 続くなか、冬物をメーンで売り出している様子に違和感を覚えた。大賀裕美子店長に理由を聞くと、「シンガポールは海外旅行を楽しむ人が多く、旅先で使おう と買っていく人が多い」と説明した。発熱保温肌着「ヒートテック」も売れ筋上位の常連という。
前日に訪ねたマレーシアの首都クアラルンプールの店舗でも、フリースなどが置かれ、気温が高くても売れる。購入客はやはり海外に旅行に行く地元客や、海外から旅行に来た観光客だ。この店ではイスラムの女性客も多い。
意外な売れ筋は、男性向けのデニムシャツのSサイズ。「イスラムの女性は身体のラインが出やすい女性向けより、男性向けのSサイズを選ぶことが多い」(同店)。東南アジアでは日本人にとっては思いもよらないニーズがある。
ユニクロの東南アジア進出は2009年。シンガポールを皮切りに、現在はマレーシア、フィリピンなど5カ国で約80店舗を展開する。直近1年で東南アジア の店舗数は2倍に増え、将来1000店舗まで増やす構想を持つ。これまでは都市部への出店が中心だったが、今後は地方への出店を増やしていく。 「客観的に見て順調に伸びてきたと思う。ただ、もっと速いスピードで成長しなければならない」と語るのは、東南アジア事業を統括する、大笘直樹・グループ上席執行役員だ。
ユニクロが世界各地で戦うライバルは「ザラ」を展開するインディテックス(スペイン)や、ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M、スウェーデン)といった国 際的な衣料品店チェーン。東南アジアにおいては、ザラやH&Mと比べユニクロは「店舗数も規模も勝っている。我々はもっとリスクを取り、地方都市を攻めて いく」という。
鍵を握るのが商品施策だ。東南アジアだけで売っている低価格商品の「Feel the SEA(サウス・イースト・アジア)」を拡充していく。2013年夏から販売を始め、現在はTシャツやポロシャツをそろえる。
■Tシャツは半額以下
マレーシアで売っていたT シャツの価格は19.9リンギット(約650円)と通常の半額以下。10月には専属の商品企画担当者をシンガポールに置き、今後はワンピースなど種類を増 やしていく。アジアでは主要都市以外に行くと所得水準が十分に上がっておらず、これまでユニクロが展開していた価格では手が届かない人も多いからだ。
価格の安さだけでなく品質やデザインの魅力も打ち出して「Feel the SEA」を、東南アジア発のグローバル商品に育てる考え。念頭に置くのは日本 で1998年にヒットし、ユニクロの成長を支えたフリースだ。当時のフリースのような起爆剤となりうる商品を出し「日本のユニクロではなく、アジアのユニ クロと思ってもらえる日を実現したい」(大笘氏)という。
先行して事業展開してきた中国では、ユニクロの店舗数は現在300を超えた。中 国に台湾と香港を加えた「グレーターチャイナ」地域のファストリの売上高は、2014年8月期に前の期比67%増の2081億円、営業利益は同83%増の 248億円と急成長を遂げている。中国市場は日本に次ぐ稼ぎ頭に育った。ただ、最初から順調だったわけではない。
■赤字続きだった中国事業
「最初の仕事はオープンしたばかりのユニクロの店を閉めることでした」。中国事業を統括する潘寧・グループ上席執行役員は振り返る。05年に上海に赴任し た際、ユニクロは赤字続きだった。日本より安く売ったところ、安売り競争に巻き込まれブランドのイメージを落としていたのだ。
潘氏は立て直しに奔走した。当時の年間予算の大半を使い、上海市の新しいショッピングセンターで大型店を開設。安売りを見直し、「中産階級向けの高品質ブランド」として訴えた。店員の教育や販促にも力を注いだ。
ブランド力向上のための旗艦店が昨年秋に開業した「ユニクロ上海店」だ。同店はグループの他ブランドも含め、地下1階、地上5階で構成する。総売り場面積は約8000平方メートル。世界でも最大級のユニクロだ。多数のマネキンが設置されており、約30人の「ビジュアルマーチャンダイジング(VMD)」チームが着こなしの提案など、魅力ある売り場作りに工夫を凝らす。
「商品の良さを伝えるため、特にVMDに力を入れている」。そう語るのは、約1年、店長を務め、現在は中国南部のマーケティングを担当する西村昌巳氏。日 本のユニクロでは、新聞の折り込みチラシを見て、特定の商品を買おうと来店する顧客が多い。ただ、中国では日本ほど新聞の宅配制度が整備されずチラシを活 用できない。「中国ではふらっとお店に来て『この商品はいいな』で終わってしまう来店客が多い。いかに買ってもらうかが課題」(西村氏)という。
そのため1階の売り場は毎月全面的に刷新し、新鮮なイメージを絶えず打ち出す。あえて5階に話題性のある商品の特設売り場を設け、上層階への来店も誘う。
■競合他社との差大きく
世界展開では「ザラ」や「H&M」といった競合との差はまだ大きい。両社の連結売上高は2兆円規模で、ファストリの14年8月期の連結売上高1兆3829億円を大きく上回る。
10月7日には米ナイキの企業広告などを手掛けた実績を持つジョン・C・ジェイ氏を、グループの商品や店舗デザイン、販促など総合プロデュースする新ポストに起用すると発表。グローバル展開ではブランド力とマーケティング力の向上が不可欠との判断がある。
柳井正会長兼社長は「2020年度に売上高5兆円」という高い目標を示し、「インディテックスとH&Mを追い抜く」と社内を鼓舞する。柳井会長が思い描く理想を形にできるまで、各地のスタッフたちがどこまで食らいついていけるか。今後数年が正念場になりそうだ。 ≫(日経新聞:企業報道部 川上尚志)
ユニクロ帝国の光と影 (文春文庫) | |
横田 増生 | |
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