早速、民主党中心の新政権を持ち上げたり貶したりする雑誌が、本屋の店頭に並びだしました。前者の代表が「週刊朝日」で、最新号には何と「革命」の二文字が踊っています。後者はそれに対抗して、「月刊WiLL」などで盛んにバッシングに励んでいます。
それを見て、「そうか、世間ではこの度の政権交代を”革命”と捉えているんだ」と、改めて気付かされました。しかし、本来「革命」とは、社会構造の激変や支配階級の交代を伴ったドラスティックな変化を指すのであって、単なる与野党の政権交代だけでは、普通「革命」とは言わないのですが。だから、かつて70年代に盛んに言われた共産党中心の「民主連合政府」構想ですら、あれだけを取って「革命」とは決して言わなかった様に。まあ、それ程までに、今度の政権交代に掛ける国民の期待感や自民党・ウヨクの危機感が如何に凄まじかったか、という事なのでしょうが。
その「革命」で「一体何が変わり、何が変わらなかったのか」という点については、ここである程度押さえておこうと思います。
まずは「何が変わった」のか。その第一は、何と言っても改憲・新自由主義派の凋落ではないでしょうか。下記でも明らかな様に、今まで散々、右傾化や「格差社会」化を推し進めてきた勢力が、自民党の領袖クラスや公明党幹部を初めとして、軒並み枕を並べて討ち死にしているではないですか。勿論、これ位の敗北で諦める敵ではありませんから、ゆめゆめ油断は出来ませんが、しかし奴らの改憲スケジュール(これは憲法9条だけに止まらず14条や25条などを含めた人権条項全体の改悪を意味する)を大幅に狂わせた事は間違いないでしょう。
■落選した主な候補者(「四トロ二次会掲示板」投稿より)
【自民】
海部 俊樹 〈元〉首相
中川 昭一 〈元〉財務・金融相
山崎 拓 〈元〉党副総裁
久間 章生 〈元〉防衛相
笹川 尭 党総務会長
堀内 光雄 〈元〉党総務会長
赤城 徳彦 〈元〉農水相
柳沢 伯夫 〈元〉厚生労働相
丹羽 雄哉 〈元〉厚相
尾身 幸次 〈元〉財務相
深谷 隆司 〈元〉通産相
島村 宜伸 〈元〉農水相
鈴木 俊一 〈元〉環境相
片山さつき 〈元〉財務省課長
佐藤ゆかり 〈元〉外資証券社員
中馬 弘毅 〈元〉行革担当相
船田 元 〈元〉経企庁長官
中山 太郎 〈元〉外相
太田 誠一 〈元〉農水相
【公明】
太田 昭宏 党代表
北側 一雄 党幹事長
冬柴 鉄三 〈元〉国土交通相
【国民新】
綿貫 民輔 党代表
亀井 久興 党幹事長
【無所属】
中山 成彬 〈元〉国土交通相
橋本大二郎 〈元〉高知県知事
■改憲議連の凋落ぶり(「しんぶん赤旗」記事より)
次に「何が変わらなかった」のか。これは、有体に言ってしまうと、「小泉劇場から小沢劇場に変わっただけ」ではないでしょうか。下記資料からも明らかな様に、今度の総選挙で衆院総定数480の2/3近く(308議席)を獲得した民主党も、得票率では42%余と、過半数すら下回っているのです。しかも、これはあくまでも相対得票率(得票比)での比較ですから、絶対得票率(有権者比)で見ると3割も行っていない筈です。実は郵政解散で小泉自民党が「圧勝」した前回総選挙も、得票率で見ると、今回の民主党とほぼ同様の結果に終わっていたのです。(この辺の詳細については草加耕助さんの分析を参照の事)
これが「小選挙区制のマジック」で、前・今回の選挙結果のどちらも、民意のごく一部しか代弁していない事が分かります。今回の「民主圧勝」劇も、実はその「ごく一部」の中のちょっとした「風向きの変化」にしか過ぎないのです。今回はその「風向きの変化」が民意を一定反映した形で現れましたが、こんな選挙ばかりやっていると、「風頼み・人気取り」のみに堕した「劇場政治」に、ますますのめり込んで行ってしまいます。そうして、民衆の中に政治に対する幻滅がますます広がれば広がる程、その民衆の閉塞感・絶望感につけ込んだファシストが、戦前の様に台頭して来ないとも限りません。それを一番危惧します。
■選挙結果についての参考資料 (四トロ同窓会二次会掲示板より)
但し、当該資料中の「議席数」は、比例区のみの獲得議席数です。選挙区の分も合わせた議席数(総定数480)の内訳(解散前との比較)は、民主党308(+196)、自民党119(▲184)、公明党21(▲10)、共産党9(増減なし)、社民党7(同)、みんなの党5(+5)、国民新党3(▲2)、改革クラブ0(▲1)、新党大地1(増減なし)、新党日本1(+1)、幸福実現党0、無所属6(▲3)。
※Aは全国を単一の比例区としてパーセンテージから比例区180の議席配分を割り出してみました。
※Bは議席総数480の全てを比例代表制で配分したらどうなるかを計算したものです。
投票者のうちの42%が投票した民主党は、衆議院の64%の議席を占める事になり、逆に7%の得票があった共産党は議席の2%しか獲得していません。第一党の民主党だけが1・5倍もの水増しとなり、他の全政党へ投票した有権者の声は削減され、あるいは無視されていることが分かります。(ただし、自民党も比例代表制180議席の中では得票率以上に議席を獲得しています。)幸福実現党でさえ、3議席分の有権者の声を獲得していたことになります。現在でさえ11地区にもズタズタに分断され、「比例代表」の利点を半減させられているにもかかわらず比例代表区を廃止し小選挙区だけにする動きもあり、選挙制度の反動化が進められている事に注目しなければなりません。(以上、当該投稿から引用)
以上、簡単ですが、今度の「革命」で「何が変わり何が変わらなかったか」を見てきました。変わった(変える事が出来た)点については確信を持ちつつも、変わらなかった(今回は変える事が出来なかった)点についても、きちん自覚しておかなければならないと、今更ながら改めて痛感した次第です。
http://sankei.jp.msn.com/politics/election/090907/elc0909070813001-n1.htm
・【社説検証】終戦記念日 国のかたち憂えた産経 朝日は今年も嫌日路線(同上)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090824/plc0908240740002-n1.htm
アホらし。産経は相変わらず「チャンネル桜」や「新風・在特会」辺りの主張と、瓜二つの社説を掲げていますが。「嫌日」などという「2ちゃんねる」紛いの用語まで動員して、もうバカみたい。こんなのが本当に四大全国紙なの?
この前も、民主党の鳩山代表が某雑誌に寄稿した論文の内容を槍玉に挙げていましたが。確か「イラク戦争やサブプライム問題の失敗からも明らかな様に、既に米国だけで世界が回る時代ではなくなっている」という趣旨の内容だったと思うが、これに産経が反米的内容だとイチャモンを付けていたっけ。
しかし、これの何処が「反米」なのか?「米国とは今後も友好的にお付き合いをさせてもらうが、今までの様に、何でも言いなりにはならないよ。今後は友人として、諌めるべき時は諌める」というのが、当該論文の趣旨で、至極当然の事を言っているのに過ぎない。
http://ameblo.jp/aratakyo/entry-10333155436.html
逆に産経の立場の方が、「友好国の道を誤らせる」という意味では、よっぽど「反米的」だと思うが。
私としては寧ろ、アフガン戦争・ソマリア派兵に日本も加担している問題や、日米地位協定見直し・沖縄核持込み密約の解明に、鳩山がどこまで本気なのか、彼が論文に書いている事とこれまでの行動との矛盾の方が、遥かに気がかりなのだが。
そして、対する朝日にしても、未だに小泉構造改革をヨイショしているという意味では、産経とも五十歩百歩のだが。「新自由主義だけヨイショ」の朝日の方が、「新自由主義も右傾化もヨイショ」の産経よりも、多少なりともマシなだけで。
しかし、この程度の意見表明すら「反米的」といって抑えつけるとは、産経の言う「言論の自由」とは、一体どんな「自由」なのか。