今日、南港野鳥園(野鳥園臨港緑地)に行って来ました。バードウォッチングなぞやった事ない私が何故そんな所に行く気になったのか?それは、夢洲(ゆめしま)のカジノ誘致に反対するネット署名を知人に呼びかけた所、その知人から夢洲の現状について教えられたからです。
夢洲では2025年の万博開催に向けて埋立工事が進んでいますが、工事の過程で干潟や塩性湿地、ヨシ原がたまたま出現した事で、絶滅危惧種の野鳥も沢山飛来するようになりました。自然保護団体の間で干潟保存の機運が高まりますが、開発優先の大阪府や大阪市は全く聞く耳持とうとしません。やがて埋立の進行によって干潟は縮小し、工事関係者以外は干潟に立ち入る事も出来なくなりました。
そこで、夢洲の手前にある咲洲(さきしま)の南港野鳥園を代わりに訪ねる事にしました。住之江公園駅からニュートラムに乗り、トレードセンター前駅で下り、道沿いに15分程歩くと野鳥園に着きました。
野鳥園は巨大な人工干潟で、北池・西池・南池とその周辺の湿地・ヨシ原、さえずりの丘・はばたきの丘の2ヶ所の丘陵地から構成されています。丘のたもとに事務所が併設された展望台があります。昔は展望台以外に北池と南池のたもとにも小さな展望台(観察所)があったのですが、現在は北観察所だけが利用できます。見学者が立ち入れるのは展望台と、前述の2つの丘を経て北観察所に向かう散策路のみです。
展望台には野鳥園開設の歴史や野鳥の観察記録が掲示されていて、大変勉強になりました。今日も午前中からバードウォッチングを楽しむ人が15人ぐらい来ていました。しかし、展望台に備え付けられた望遠鏡には全て使用中止の張り紙が貼られ、双眼鏡も持たない私は、遠目から野鳥を観察する他ありませんでした。
西池を泳ぐ野鳥の群れ。堤防の下の導管で海水を取り入れ、北池や南池にも流している。
南池を泳ぐ野鳥の群れ。
野鳥の観察記録。
南港野鳥園も、南港の埋立進行に伴い、絶滅危惧種も含めた野鳥が飛来するようになり、自然保護団体の尽力で1983年に大阪市の施設として開園しました。そして、市民の野鳥観察会や学校の環境教育の場として活用され、2003年の国際会議で、渡り鳥のシギ・チドリ中継地として国際的に認められるまでになりました。
ところが、2014年に大阪市の行政改革で、野鳥園の予算は6分の1に削減され、野鳥園から単なる「臨港緑地」に改称(格下げ)されてしまいました。そして、3名いた常駐スタッフも全て削減されてしまいました。私のような初心者がバードウォッチングに親しめるようになるのも、常駐スタッフの案内があればこそなのに。幾ら大阪市の財政が赤字でも、たった3名そこらの常駐スタッフの給与すら捻出できない筈ありません。
人間が食料を得られて生活出来るのも、自然の営みがあればこそ。その自然を、目先の金儲けにならないからと切り捨てていたら、最後には自然から手酷いしっぺ返しを食らう事になります。地球温暖化に伴う異常気象や海面上昇、原発の安全神話の上に胡座をかいた末の福島原発事故などは、そのほんの一例に過ぎません。
展望台に設置された数台の望遠鏡も維持費用が捻出できずに使用中止に。展望台と丘以外は立ち入り禁止になり、散策路も荒れ放題。今やボランティアスタッフの無償労働で、ようやく施設が維持できているような状況です。
展望台には夢洲の現状を告発する資料も置かれていました。そこには、コアジサシやセイタカシギなど、絶滅危惧種に指定された野鳥が多数飛来する様子が載っています。その数およそ数千羽。3年間の調査期間だけでも113種類の鳥類が確認され、レッドリスト(いわゆる絶滅危惧種)だけでも51種見つかったとか。ラムサール条約湿地に匹敵するレベルで、本州でも1、2を争う飛来地になっていたのに。万博のテーマはSDGs(持続性ある開発)だそうですが、実際の自然を破壊して、地球環境保全も貧困撲滅もないと思います。