新型コロナ感染緊急事態宣言が出た翌日の公休日に、所用の帰りに近くの天王寺界隈に桜を観に行きました。多分これが見納めの桜となるでしょうから、写真を一杯撮って来ました。その写真の一部をここに公開します。まずは、天王寺公園横の茶臼山古戦場の桜から。河底池にかかる赤い橋に映える桜や、池の橋や噴水、桜の後ろに写る通天閣の姿に魅了されます。通天閣と言えば、世間では新世界の繁華街にあるランドマークとして知られ、コテコテでがめつい大阪人の象徴のようにドラマなどで描かれて来ました。しかし、このような自然に囲まれた通天閣の姿も、また違った趣があります。
河底池に浮かぶ桜の花びらが哀愁を誘います。この河底池の成り立ちについては、実は今もよく分かっていません。昔は茶臼山古墳を囲む堀だと言われていましたが、最新の研究では「茶臼山自体も古墳ではなかった」「河底池も、平安時代に和気清麻呂が掘削した水路の跡だ」と言われるようになりました。灌漑用水路を作ろうとして、上町台地に阻まれ工事を途中で放棄した後に出来た池だったというのが、最も有力な説です。池にかかる赤い橋の名前も和気橋と呼ばれています。
茶臼山の山頂には真田幸村の名言を記した掲示板が建てられています。「関東勢百万も候へ、男は一人もいなく候」も、その名言の一つです。今なら「安倍内閣四割の支持率も自粛ばかりで補償ゼロ。新型コロナで遂にアベノミクスの化けの皮が剥がれる」と言った所でしょうかw。
茶臼山は、天王寺公園の横にある標高26メートルの低山です。天保山、帝塚山など大阪市内にある他の低山とともに「5低山」の一つとされ、登頂証明書も1枚100円で発行してもらえます。大坂冬の陣(1614年)では徳川家康が、翌年の夏の陣では真田幸村がここに本陣を置き、付近一帯は戦場となりました。その茶臼山から通天閣とあべのハルカスを撮りました。あべのハルカスは綺麗に撮れましたが、通天閣は周囲の木々に隠れてなかなかうまく撮れませんでした。
茶臼山のすぐ横には「骨仏の寺」として有名な一心寺があります。ここでは、故人の遺骨を宗派を問わず受け入れ、10年ごとに「お骨仏」(遺骨で造られた阿弥陀如来像)としてまとめられます。ここも桜の名所として有名です。一心寺の前を走る国道25号線の坂は逢坂(おうさか)と呼ばれ、大阪の地名の語源となりました。一心寺から逢坂を渡った先にある安居神社の境内には、真田幸村がここで戦死した事を示す慰霊碑が建てられています。
茶臼山の登頂証明書は一心寺付属施設の存牟堂(ぞんむどう)でもらえます。一心寺から少し離れた分かりにくい場所にありますが、お寺の警備員さんに聞けば道順を教えてくれます。存牟堂には大阪冬の陣・夏の陣の資料も展示されています。右上の写真は夏の陣の屏風絵で、真ん中の四天王寺の石鳥居の下に集まっているのが「赤揃え」の甲冑で有名な真田幸村の隊列です。
安居神社から北に向かって生国魂(いくたま)神社の方まで、天王寺七坂と呼ばれる坂があります。その七つの坂のうち、逢坂から口縄坂まで五つの坂を巡りました。まず最初に天神坂。坂の名前は安居神社の別称(安居天神)に由来します。坂はいずれも谷町筋と下寺筋(松屋町筋)の間にあります。付近一帯はちょうど上町台地の崖に当たり、昔はそこかしこに清水が湧き出ていたそうです。右上の写真はその清水の名残の一つ、増井の泉跡です。
次の清水坂は、横にある清水寺(きよみずでら)に由来します。京都の清水寺と区別する為に新清水寺とも呼ばれています。境内には大阪市内唯一の滝である「玉出の滝」があります。滝と言っても、実際は3本の掛樋から水がちょろちょろと流れているだけですが。
その隣の愛染坂の名前は、近くにある愛染堂勝鬘(しょうまい)院に由来します。このお寺は、古くから「愛染さん」の名で親しまれて来ました。境内には縁結びのご神体として知られる「愛染かつら」の神木や、腰痛封じの石などがあります。また、大阪で一番早い夏祭りで、宝恵駕籠(ほうえいかご)のパレードで知られる「愛染まつり」が行われるお寺としても知られています。ここも桜の名所です。
最後に廻った口縄坂は、道の起伏が「くちなわ」(蛇)に似ている事から名づけられました。坂の前や途中にあるお寺では桜が咲き誇っていました。この坂の先にも源聖寺坂や真言坂があり、生国魂神社に続いています。この真言坂から逢坂までを総称して「天王寺七坂」と言い、有栖川有栖の短編小説集「幻坂」の舞台になりました。その天王寺七坂の中でも、特にこの口縄坂と愛染坂一帯は寺町の名残が一番良く残っていて、何度来ても飽きる事がありません。ここの桜も見事でした。
茶臼山古戦場から観た通天閣以外に、一心寺の墓地と玉出の滝の上から観た通天閣の写真も載せておきます。右の玉出の滝の上からも、ビルの上から通天閣が顔を覗かせているのが分かります。こんな所から通天閣を撮るのは、多分私だけではないでしょうか?w